あまりにも低い日本人の自己肯定感。原因は、ヨーロッパの教育現場にあって日本にはないもの
世界16か国で合計約2,000回講演した環境活動家の谷口たかひささんは、毎日無数に繰り返す判断を、どちらを選べば自分のことを好きでいられるかで決めているそう。それは、人生でもっとも大切なのは「自分を好きでいる」 ことだという信念があるから。書籍『自分に嫌われない生き方』(KADOKAWA)は、谷口さんが世界を訪問して分かった「豊かに生きる人々の価値観」をまとめたもの。「成功」ではなく「幸せ」をつかむために必要な「自分に嫌われないこと」について、本のなかのいくつかのエピソードをもとに考えてみませんか?
※本記事は谷口たかひさ著の書籍「自分に嫌われない生き方」から一部抜粋・編集しました。
自己肯定感に関する質問を講演会でよくもらいます。
「日本では、義務は教えるが、権利は教えない」
ヨーロッパのある教育機関を訪問したときに、教えてもらったこと。
初めてこの言葉を聞いたとき、雷に打たれたような気持ちになりました。
それまでに自分が感じていた疑問のほとんどが、この言葉に集約されている気さえしました。今でも、自分の人生で聞いた言葉の中で、自分に影響を与えた言葉ベスト5に入っています。
①「やらないといけないこと」
②「やってはいけないこと」
日本では、物心ついてからというもの、家庭でも、学校でも、社会でも、この2つ(①あーしなさい! ②あれはダメ!)ばかりを人から言われ続けるといいます。
そうすると、その人の脳は「義務脳」という頭の半分が「やらないといけないこと」で、残りの半分も「やってはいけないこと」でいっぱいいっぱいになり、とても生きづらくなるそうです。
いわば、「減点方式」。
こども家庭庁の「国別の自己肯定感」によれば、日本の自己肯定感は、諸外国に比べて低いという調査結果が出ていますが、これが大きな要因であることは間違いないかと。
一方でヨーロッパは、「権利」をとても大切にするといいます。
「やっていい(やらなくてもいい)」
あなたの人生はあなたのもの。
義務を果たすために生きているロボットではないのだから。
いわば、「加点方式」。
日本には、「義務」で自分のことを縛りつけて生きていく人がとても多いように思えます。
それは特に、先ほどのクイズの答えでもあった「お母さん」に。
そうではなくて、自分の「自由」と「権利」を尊重し、他の人ともお互いの「自由」と「権利」を尊重し合い、ありたい自分であろうとすることが大切かと。
そんな人が自分から増えていったときに、自分も周りもとても明るく楽しくなると思います。
また何かに取り組むときも、「やらないといけない」と自分に言い聞かせ、義務で取り組む人がいます。僕は、これはしないようにしています。必ず、しんどくなるから。
それに極論、「しなくてもいい」と思っています。
自分にムリヤリにでも何かをさせることができるのは究極、自分自身以外にはいません。だから誰に何と言われようとも、「やらない」という選択肢はいつでも残されているのです。
それよりも大切なのは、自分は「やりたい」のか、「やりたくない」のか──
僕は社会問題と呼ばれるものに取り組み続けていますが、「やらないといけない」と思ってやっているわけではありません。自分が「やりたい」からやっているのです。
他の誰でもなく、「あくまで自分で選んだ道である」ということを、自分で潔く認めることが大切だと思うのです。
そういう意味でいうと、自分の仕事やパートナーのことも絶対に悪く言わないと固く心に決めています。
仕事もパートナーも、「選んだ」のはまぎれもなく自分自身。
それ以外にも、自分が今いる場所は、これまでの自分が行ってきた選択の結果。
それらを悪く言うことは、自分自身の選択を否定していることになると思うからです。それはあまりカッコいいことだとは思いません。
それに、自分が選んだと認めると、他にも良いことがあります。
生きていれば、良いときも良くないときもあります。良くないとき、自分で選んだと認められない人は、人のせいにしがちです。
それは結局、自分も周りもキズつけていきます。
だけど、自分で選んだと認めている人は、スッキリしていて立ち直るのも早い上、成長に繋げることができるのです。
「自分が選んだ道だから」「自分がやりたくてやっていることなのだから」というふうに。
問題に取り組む「義務」があるのではなく、問題に取り組む「権利」がある。
もし「権利」がなければ、問題を知っても、取り組むことさえできないわけです。
これほどツラいこともないと思います。
だけど「権利」があるから、取り組むことができる。
何事にもできるだけ、「やらないといけない(人にやらされている)」ではなく、「やりたい(自分で選んだ)」で取り組む。
そう考えられると、とても素敵だと思います。
それは未来を自分が望む方向に近づけていい、ということですから。
好きに生きていい。
あなたにはその「自由」と「権利」がある。
人は「自由」と「権利」さえあれば、幸せになる力を持っています。
参考文献
「令和5年度 我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d0d674d3-
bf0a-4552-847c-e9af2c596d4e/3b48b9f7/20240620_policies_kodomo-research_02.pdf