【葵区・竜爪山】1000m超えの双耳峰に挑む! 憧れの山についにチャレンジ 中腹にパワスポ「龍穴」
静岡市を代表する山の一つが「竜爪山(りゅうそうざん)」です。標高1000mを超えるので低山とは言えないかもしれませんし、弱音を吐きたくなる程度にはしんどかったのですが、途中には応援してくれる「丁石」があり、神社もあり、登りがいのある山でした。
竜爪山はどんな山?
竜爪山は、北側にある薬師岳(やくしだけ)と、南側にある文珠岳(もんじゅだけ)からなる双耳峰です。薬師岳の標高は1051m、文珠岳の標高は1041m。この「低山登山」シリーズでは初の1000m級の山となります。
竜爪山は静岡市民にとっては最も身近な山の一つであり、登山コースも充実しています。
たとえば、山の中腹にある穂積神社(ほづみじんじゃ)を起点とするコースは、往復3時間程度で薬師岳、文殊岳を踏破できます。地元の小学校の遠足コースにもなっているようなので、子供のころに登ったことがある人もいるかもしれません。
※林道炭焼平山線は2025年6月現在、平山登山口より北が通行止めです。穂積神社には車でアクセスできないのでご注意ください。
筆者は今回、穂積神社の参道入り口でもある「平山口」からスタートし、途中、穂積神社を通って薬師岳、文珠岳へと至る王道コースに挑んできました!
●今回の低山登山DATA
登った山:竜爪山
標高:薬師岳1051m、文珠岳1041m
累積標高:上り855m、下り858m
タイム:約5時間17分(休憩1時間32分含む)
距離:約6.6km
登山日:5月4日
丁石を励みに上へ 山頂はるか遠く
今回は鳥居が目印の「平山口」からスタートです。
平山口周辺にトイレはなく、次のトイレポイントは穂積神社となります。登山口までにお手洗いは済ませておきましょう。
また、鳥居手前に駐車できるスペースがありますが、休日は朝8時にはいっぱいになることも多いようです。余裕をもってお出かけください。
100円と書かれた駐車場代の料金箱があります。
竜爪山は低山登山をはじめてから、いつかは登ってみたいと思いつつ、体力に自信がなくこれまで先延ばしにしてきた山です。
さあ、出発です。鳥居をくぐり、長尾川のせせらぎを聞きながら進むと、すぐに登山らしい道が始まりました。
しょっぱなからけっこう急です!
しばらくして「三丁目」と書かれた石を発見しました。
鳥居から続くこの道は穂積神社への最古の参詣道です。
1丁(約109m)ごとに「○丁目」と刻まれた「丁石」が置かれていて、歩き始めてほどなく「三丁目」と書かれた石を見つけました。
丁石を探しながら登っていると、「肝冷やしの滝」なる案内板がありました。
竜爪山の登山道沿いにはいくつか滝があり、「肝冷やしの滝」もその一つです。ぜひ見てみたかったのですが、体力温存のため先に進みます。
平山口をスタートして約30分、「十三丁」と刻まれた丁石の前にベンチがありました。しばし休憩します。
ちなみに、丁石は36基あるとか。先は長いのです。
竜爪山は、登山初心者の筆者には傾斜がきつく感じられるところばかりですが、ときおり平坦な道もあります。
「この平坦な道がずっと続けばいいのに」、そんなことをつぶやきながらひたすら登ること約1時間、分岐に着きました。
案内板には「尾根コース」と「沢沿いコース」と書かれており、筆者は尾根コースへ。
これは復路でわかったことですが、尾根コースと沢沿いコースは先で合流しています。そして、沢沿いコースのほうが楽な印象、所要時間も大きく違いません。体力を温存したい方は、沢沿いコースをおすすめします。
穂積神社に到着! 最初の山頂・薬師岳へ
スタートから1時間10分ほどで穂積神社に到着しました!
案内板によると、穂積神社は大己貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)の二神をお祭りしており、終戦までは「弾除けの神」として厚い信仰を受けていたそうです。
境内には「龍穴」がありました。
「ここは龍穴(天と地のエネルギースポット)。穂積神社本殿に向かって一礼の後、両手を広げ右回りに回れば益々健康になります(7の倍数回)」と記されています。
これはやるしかないでしょう。7の倍数回、しっかりと回ってきました。目が回ってふらついたのはお約束です。
なお社務所は第2・4日曜日には基本的に開いていて、人がいるそうです。
龍穴からパワーをもらったところで本殿の裏へ回り、薬師岳へと向かいます。
本殿裏には樹齢500年の夫婦杉がありました。
穂積神社から先の道は東海自然歩道の一部で、よく整備されています。
が、ここからしばらくは上りが続きます。しかも、途中からパイプを組んだ金属の階段になります。
せっかくなので段数を数えてみようと思いましたが、早々に断念しました。1段上るごとに太ももに乳酸が蓄積されるのがわかります。これはしんどい!
それでもなんとかかんとか登り終え、標高1000mまで来ました。
スタートからここまですでに2時間が経過しています。これまでの低山登山なら既に山頂に着いているころなのです、まだ先は長いのです。
10分も進むとやや開けた場所に出ました。なんと、薬師岳山頂です!
さて、この薬師岳山頂にはベンチはあるのですが眺望はありません。
この先の道のりに備えて、しっかりと休憩と水分補給をしておくことをおすすめします。
スタートから約2時間半 ついに双耳峰を制覇
息が整ったところで、再び登山開始です。文珠岳への道のりの前半は下りです。
傾斜はやや急ですが、なんといっても下りなので、疲労困憊(こんぱい)なわりには軽快に進めました。
さて、ここで一度、竜爪山の全容を見てみましょう。
こちらは帆掛山&梶原山の低山登山の道中で撮影した竜爪山です。フタコブラクダの背のようになっているのがわかるでしょうか。
つまり、この下りが終われば、最後の上りが始まるということ。この上りがきつい!
所要時間は10分ほどなのですが、体が「もう足を持ち上げる力が残っていません」と訴えてきます。
疲労がピークに達した体を、なんとかなだめながら一歩一歩進むと、あれ、これはもしかして?
ついに文珠岳の頂上にたどりつきました! スタートからここまで約2時間半でした。長かった。ひとまずベンチに座り込んで息を整えます。
気力と体力が少し回復したところで、山頂を探検しました。低山登山記事ではもはやおなじみの三角点を発見。
ときおり見かける、串団子風の標識もありました。標高は1041m。
「文殊菩薩」と刻まれた石碑を祭る小さな祠もありました。
もちろん富士山も見えます!
この日はまだ雪が残っていました。新緑と富士山の組み合わせはこの時期ならではの風景です。
ところで、「竜爪山」という名前の由来をみなさんはご存じでしょうか。「竜の爪」なんて、ちょっとかっこいいですよね。
道中に見かけた案内板によると、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の折に、この山から時雨が襲ってきて衣を濡らしたことから「時雨匝山(じうそうざん)」と呼ばれるようになり、これがなまって「りゅうそうざん」と呼ばれるようになったとか。
ほかにもいろいろな説があるようです。
ひととおり探検を終えたので持参したおにぎりでランチタイム。食後には軽くストレッチをして下りに備えます。
なお、筆者が登山した日は山頂は風が強く、25度以上あったにもかかわらず、汗をかいた体には少々風が冷たく感じられました。
また、竜爪山は天気が変わりやすいそうです。登る際には、くれぐれも雨・防寒対策をお忘れなく。
沢あり岩あり神社あり 一度は登りたい竜爪山
山頂でしっかりと休憩し、気力体力もかなり回復しました。そろそろ下山しましょう。文珠岳から薬師岳へのルートで上りがありますが、それを過ぎたらあとは下るのみです。
薬師岳を過ぎたところで、小枝カレンダーを見つけました。上りのときは余裕がなく見過ごしていたようです。
文珠岳を出発して約40分、穂積神社に戻ってきました。境内で少し休憩させてもらい、さらに下っていきます。
穂積神社からはひたすら下ること約1時間、ようやく登山口が見えました! 以上で今回の登山は終了です。
鳥居手前にある水汲み場でお水を飲ませてもらい、のどをうるおします。
スタートからゴールまで、休憩時間を除くと約4時間、距離にして6.6kmの行程でした。
ふだん運動をしていない筆者にはかなりハードで、翌日から数日間、筋肉痛に悩まされました。
一方で登山愛好家の友人いわく、「竜爪山は、沢あり岩あり神社ありの見どころ満点の山。身近にこんなに充実した山があるのは、静岡に住んでいて幸せなことの一つ」とのこと。
筆者もこれには激しく同意します!
これから初めて竜爪山に挑戦しようという方は、ご自身の体力とよくよく相談のうえ、入念な準備をして、安全で楽しい登山をしてもらえればと思います。
!CAUTION!
◎各所に案内看板がありますが、道迷いの可能性がまったくないわけではありません。特に分岐では、地図や登山アプリなどでルートを確認するのを忘れないようにしてください。
◎低山とはいえ、山は山です。適切な服装と装備で楽しんでください。
◎時期や天候によってコースの状況が変わっている可能性があります。インターネットなどでできるだけ最新の状況を確認するようにしてください。
◎静岡県全域でクマの目撃情報が相次いでいます。低山でも油断せず、クマ鈴、クマ撃退スプレーを携帯しましょう。
取材/小川結子