花粉の対策は‘ピークが来る前!’【すぐに始めたい花粉症対策】
日々の天気や街のトレンド、おいしいゴハンに大人の悩み、社会の仕組み・・・1日イチ「へぇ~」なトピックスを。
新進気鋭のコラムニスト、ジェーン・スーが、生活情報や人生の知恵をナイスなミュージックと共に綴る番組。
ゲストは、医療ジャーナリストで医師の森田豊さん!
今回は・・・すぐにでも始めたい花粉症対策
今年ももうすでに飛び始めている花粉。スギ花粉本格的なピークは福岡、高松、東京で2月下旬頃から、3月上旬から中旬頃には、広島、大阪、名古屋、金沢、仙台など、広い範囲でピークになると考えられています。
日本気象協会が1月に発表したデータによると、今年は例年や去年と比べて、全国的に花粉の飛散量は多くなる可能性が高いそうです。例年に比べて2倍~8倍なんて言われています。
これには理由があって・・・
・去年はとても暑かったため、花芽やつぼみを作る「高温・多照」という花粉にとって好都合な条件が全国的に揃ってしまった。
・去年の春は花粉の飛散量が少ない地域が多かった以上のことが理由として挙げられます。
花粉は「多く飛散された翌年は少なくなる」という傾向にあるので、隔年で「多い年」がやってきてしまうというわけです。ただ、1年おきに花粉量が増減するとはいえ、最近は冷夏も少ないため、毎年の花粉量が多い傾向にあります。
先日、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会の調査によると、「1980年に20%に満たなかった花粉症の割合は、2019年には42.5%まで倍増した」というデータも。
およそ2人に1人が花粉症になってしまっているということですね。
今回は、「すぐにでも始めたい花粉症対策」と題して、特に対策面について、詳しくお話しを伺いました。
『なによりも大切なのは‘ピーク前’に対策を始めること!』
もうこの番組でも何度もお話しているかと思いますが、花粉症はアレルギーの症状を引き起こす病気。
なので、「症状が出てから何かをする対策をする」ということでは遅くなってしまいます。
花粉症によるアレルギー性鼻炎は一度症状が出てしまうと鼻の粘膜がどんどん敏感になり、症状が強く出やすくなってしまいます。今の時期のようにまだピークが来ておらず、症状が出る前から薬を飲むなどの対策をとり、粘膜を過敏にさせないようにしましょう。
基本的に薬は症状が出た時に使うもので、予防としては使いませんよね。しかし、花粉症については他の病気と異なり、毎年同じシーズンに症状が現れることが分かっていて、原因もはっきりとしています。
そのため、薬による初期予防治療が認められているので、花粉症のシーズン前に薬を飲み始めることで発症を遅らせたり、軽い症状で抑えたりすることができるんです。以前は、2~3週間前から薬を飲み始めるといいと言われていましたが、現在は薬が改良され、最近のものはおよそ1週間前からでも間に合うようになりました。
ただ、薬局やドラッグストアで市販されている飲み薬(鼻炎薬)は、第1世代の抗ヒスタミン薬や初期の第2世代を中心にいくつかの薬剤が組み合わされた複合薬が多くなっています。一方、医療機関で処方される薬は第2世代抗ヒスタミン薬や、新しく第3世代も出てきたので、自分の症状に応じて、選択してください。
そして花粉情報をこまめにチェックし、飛散時期が来る前に診察を受け、症状に応じて処方してもらいましょう。
スギ花粉のピークは2~4月ですが、ヒノキは3~5月、イネ科やブタクサなどは初夏から秋と、1年を通じて様々な花粉が飛散しています。スギ花粉の飛散時期以外にも症状が出る場合は、医療機関でアレルゲンを特定する検査を受けることをお勧めしています。
『腸内細菌叢の状態を良好に保つ!』
腸内細菌叢というのは、巷で「腸内フローラ」と呼ばれているものです。人や動物の腸内で一定のバランスを保ちながら共存している、多種多様な腸内細菌の集まりのことです。腸内細菌の形成パターンは食生活や生活環境と密接に関わっていて、一人一人違います。腸内フローラには、身体にいい影響をおよぼす善玉菌、悪影響をおよぼす悪玉菌、影響がないと思われる日和見菌の3種類に分けられます。
この腸内の細菌達がバランスを保つことで、過度なアレルギーを防いでくれるんですね。また、このバランスが崩れることで、アレルギー疾患になるだけではなく、糖尿病や肥満、がんの発症などに関係すると考えられています。
食物繊維や、善玉菌を増やすオリゴ糖、ビタミン類、亜鉛や鉄分などを豊富に含むブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜類、玉ねぎ・大根・ゴボウなどの根菜類、海藻類、果物類などを食べることで、腸内の微生物のエサになります。昔から言われていますが、納豆、ヨーグルト、味噌、漬物などの発酵食品には酪酸菌や乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌が含まれているので、とてもいい食べ物です。また、オメガ3系の脂肪酸が花粉症の症状を緩和するという研究もあります。オメガ3系の脂肪酸はアマニ油、エゴマ油などに含まれていますが、熱に弱いので、ドレッシングなどで摂取すると簡単です。
そして、「腸」と同じくらい「鼻」のケアが大切です。
・鼻の洗浄
→鼻に入り込んだ花粉やホコリなどは、洗い流すのが効果的。
水道水は塩素などを含んでいて鼻の粘膜を傷つけてしまうので、体液に近い組成の生理食塩水を利用してください。
・鼻の粘膜の保護
→繰り返して鼻をかむと鼻が荒れてしまうので、ワセリンなどを塗ってください。
保湿されているティッシュペーパーで鼻をかむことも有効です。
・加湿
→冬の季節だとやっている人も多いかもしれませんが、結局大切です。
・マスクやメガネ
→こちらもやっている人は多いかと思いますが、一番手軽で効果的です。
『重症度によっては‘アレルゲン免疫療法’と‘手術療法’を検討!』
花粉症の症状にも「重症度」というものがあるんですが、これは、「鼻をかむ回数と、くしゃみが生じる回数」と「鼻づまり」で診断されます。「鼻水・くしゃみ型」「鼻づまり型」「どちらも」などがあります。
自分がどのタイプなのか、症状の強さはどれくらいなのか、ということを確認して、対策を行ってください。そして重症度によっては、「対策」から「治療」というフェーズになります。
先ほど伝えした「薬物療法」も治療の一種ですが、その他に、「アレルゲン免疫療法」、「手術療法」があります。
アレルゲン免疫療法は、減感作療法とも呼ばれていましたが、原因となるアレルゲンを投与して、体のアレルギー反応を弱める治療です。
注射製剤と舌下製剤(舌下錠)があり、舌下錠では日本ではスギ花粉とダニが保険適用になっています。
治療は数年以上必要なので、長期的です。根気のいる治療ですが、薬物療法で副作用が出るために治療が続けられない患者さんや、薬物療法だけでは症状が抑えられないような患者さんには、免疫療法が考慮されます。
手術療法は、鼻の粘膜をレーザーで凝固する下鼻甲介粘膜焼灼術などがあります。薬物療法でも症状が抑えられない場合などに考慮される治療です。
これからの時期、しっかり対策をして、過ごしてください!
(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)