登校渋りのある小2自閉症娘、転校先でも特別支援学級に在籍できる?配慮はどこまで可能?
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
特別支援学級に通う娘、転校でどうなる?わが家の体験
ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けている娘(現在小学4年生)は、特別支援学級に通っていた小学2年生の3学期に、夫の転勤で他県へ引っ越ししました。
転校が決定してすぐに、私は引っ越す予定の自治体の市役所に電話をしました。転校先の小学校でも特別支援学級に在籍できるのか、受給者証などの手続きはどうしたらいいのかなど、分からないことだらけだったからです。すると特別支援学級に転入を希望する場合、事前に教育センターで面談しなくてはならないということが分かりました。その際に、学校での通知表など成績が分かるもの、診断書が必要とのことでした(手続きや必要書類は自治体によって異なる場合があります)。
私は早速、教育センターに連絡して面談の予約をしました。引っ越し先は当時住んでいた県から遠く、気軽に行き来できるような距離ではありません。そのため、面談した次の日に、転校先の小学校へ見学に行けないかと聞いてみました。教育センターの方がとても親切で、希望の日程で学校見学ができるように小学校と調整してくださいました。こうして、家族3人で1泊2日の「教育センター面談と小学校見学ツアー」が実現しました。
登校渋りのある娘……転校先での配慮はどこまで可能?
教育センターの面談では、用意していた資料を渡し、転校先でも特別支援学級に通いたいことを伝えました。娘は、当時通っている小学校を4時間目で早退したり、苦手な給食ではなくお弁当を持参したりしている状況だったため、私はこの現状をしっかり伝え、転校先の小学校でも配慮をお願いしないといけないと考えていました。教育センターでの面談の結果、特に問題なければ希望通りに特別支援学級に入れそうということで、ほっとしました。
面談の翌日、私は娘を連れて転校先の小学校の見学に行きました。見学したのは特別支援学級の5時間目の授業で、娘が参加しやすいようにと生活の授業にしてくれていました。あまり人見知りしない性格の娘は、クラスの子どもたちが楽しそうにしてる様子を見て、すんなりと輪に入っていきました。娘が授業に参加している間、私は隣の教室で先生と面談をすることになりました。
私が娘の現状と配慮をお願いしたいことを伝えると、先生は「2年生のあいだは無理せず、交流学級へはほぼ行かなくていい」「お弁当でいい。給食がはじまったら牛乳は申し込まなくていい」とおっしゃってくださいました。これは本当にありがたかったです。これで娘の登校へのハードルが下がりました。授業も楽しく参加できたようで、クラスの子どもたちともすっかり打ち解けて、娘は転校を少し楽しみにするようになっていました。
理解ある環境の重要性を実感。転校先での順調な滑り出しも、母には不安が……
娘は希望した通り、転校先の小学校でも特別支援学級に通えることになりました。転校後はじまった学校生活は驚くほど順調でした。
特に担任の先生は特別支援学級を何年も受け持っていらっしゃる方で、給食なども、娘が食べられる物から少しずつ挑戦させてくれ、1か月後にはお弁当ではなく、みんなと同じように給食を食べられるまでになりました。さらに、転校前の学校に通っている時は、4時間目で早退しても疲れ果てていた娘が、帰宅後も元気なことが増えました。気づけば転校前の早退生活から一転、最後まで授業をしっかり受けられるようになっていたのです。
転校後感じたことは、指導をされる先生や過ごす環境によって、娘が学校で感じる疲労感に違いがあるのではないかということでした。娘の場合は、担任の先生との相性が特に重要なようで、転校前の学校ではそのことで疲れがたまり、結果的に行き渋りにつながっていたのではないかと思います。転校を通じて、理解のある環境にいることの重要さに気づくことができました。それと同時に、3年生に進級したら、きっとまた先生が変わってしまうのだろうな……と一抹の不安がよぎったのでした。
執筆/マミヤ
(監修:室伏先生より)
マミヤさん、転校の準備から、転校後のしぇーちゃんのご様子まで共有くださり、ありがとうございます。特にASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは見通しを立てにくかったり、新しい環境に身を置くことが苦手であったり、転校に対する不安やストレスを感じやすいため、転校前からの準備、サポートが特に重要になりますよね。しぇーちゃんは事前に学校見学をされたことで、これから自分が過ごしていく環境を想像でき、不安が軽減されたのではないでしょうか。面談の際には、マミヤさんがされていたように、現状の共有や配慮をお願いしたいことを準備していかれると、転校後の生活がスムーズになりますね。ご本人が気になることをあらかじめ話し合い、質問を準備していくのもよいかもしれませんね。3年生になっても安心できる環境で楽しく過ごせること、私も応援していますね!
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。