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三ツ星レストラン仕込みの洗練さに国産の粉の美味しさをプラスしたパンは絶品【ブーランジェリーグルマン】(福岡県・北九州市)

パンめぐ

香りも味も素晴らしい矢野シェフの作るライ麦パンたち

「リジェネラティブ・ベーカリー」シリーズvol.15

『環境再生型農業』を応援するパン作りをしているベーカリーを紹介するシリーズ。
北九州市にある「ブーランジェリーグルマン」の矢野貴嗣シェフに、アグリシステム株式会社が主催するツアー「とかち小麦ヌーヴォー2024」に参加されていた際に直接お話を聞かせていただきました。
お店の場所は筑豊本線「本城」駅から徒歩14分、駐車場も5台分あり。
2019年7月にオープン、5周年を迎えられました。
若草色の壁に真っ赤なドアが目を引く外観、店内は赤を基調としたフレンチテイストでとてもお洒落。

今回、十勝の生産者さん達を訪ねようと思われたきっかけは?

パン業界に入ったのは34歳と遅いスタートでした。
そこから13年、パンを作り続けていくうちに、自分が使っている小麦がどのような畑でどのような生産者さん達の手によりどんな工程を経て作られたものが手元に届いているのか知りたい、と思うようになりました。

北海道に行くのも初めてでしたので、土地のスケールの違いにまず驚きました。
恥ずかしながら小麦畑をきちんと見るのも初めてだったのですが、生産者さんから小麦を育てるうえでこれまでの苦労であったり収穫のタイミングの見極めの大変さなどを直接お聞きし、
その先の製粉から倉庫での管理、私たちの手元に届くまでの行程を知って、より大切にパンを作っていこうと感じました。
今回のツアーで交流をもてた全国のベーカリーシェフの方々からもたくさん刺激を受けたので、色々な粉や製法を試してみたい!という想いがふつふつと沸いています。

国産有機ライ麦ハンコックを使ってみようと思われた経緯は?

以前からアグリシステムさんの「キタノカオリブレンド」を使っていましたし、「ハンコック」のサンプルをもらって使ってみて味の良さも実感していました。
さらに、アグリシステムさんが農薬や化学肥料に頼り過ぎない「環境再生型農業」を推進されていて、その一つとしてライ麦を育てることで次世代に健全な土壌を継いでいくことができることなどを知り、その理念に共感したからです。
ハンコックを使うことで生産者さん達の力になれるのであればと使うことにしました。

正直なところ、今まで使っていたライ麦より価格は上がりますが味はもちろん「使う価値がある!」と思わせてくれるライ麦です。

実際に使ってみて、手触りが滑らかで吸水がいいですね。あと、日持ちがいい気がします。
ライ麦特有のクセもなく風味もいいです。

矢野シェフの作るライ麦パンをまずは実食!

上から時計回りに「オーガニックマスカットレーズンとくるみとクリームチーズ」「オーガニック山葡萄とくるみ」「アールグレイとホワイトチョコ」

佐賀県産「さちかおり」と国産有機ライ麦「ハンコック」をそれぞれ40%、ドイツ産ライ麦全粒粉を20%配合のセーグル生地を使用したパン2種からご紹介。

◆オーガニック山葡萄とくるみ
オーガニックのカレンツとくるみを生地に対して80%以上使用しているそうで、見るからに具沢山!
顔を近づけるとハンコックの特徴である烏龍茶に似た爽快感のある香り。
断面からはさちかおりの力強い小麦の香りも感じられ、噛むごとにくるみのコクと山葡萄がプチッとジューシーに弾けます。
歯切れがよく、トーストすると香ばしさが増してお食事に添えても合いますね。
以前勤めていたお店ではワイン会でも供されていたそうで、赤ワインによく合うそうですよ。

◆アールグレイとホワイトチョコ
封を開けた瞬間に紅茶の素晴らしい香りが広がります。
ホワイトチョコを4割も使用しているので溶けていくチョコにくるまれるようにくちどけよく生地も消えていきます。
アールグレイ茶葉のベルガモットの香りが柑橘系なので、オレンジの香りをも纏っているようでアロマに癒されるパンです。

◆オーガニックマスカットレーズンとくるみとクリームチーズ
こちらはハンコックを20%使用した自家製酵母のみのルヴァン生地。
甘みすら感じるくるみのコクとレーズンの甘みをライ麦入りの香ばしい生地が引き立て、クリームチーズがみんなの手を繋いでくれているよう。
山葡萄のパン同様、具材が贅沢に使われているので大きすぎないサイズが食べやすくていいのです。

他にも人気のパンをご紹介

右:3種きのことベーコンのフォカッチャ、左:チーズとベーコンとスイートコーンのフォカッチャ

◆3種きのことベーコンのフォカッチャ
きのこのパンって時々見かけますがマヨネーズベースやチーズでまとめていて想像できる味かなあと食べてみたら、あらあらどうして、とてつもなく美味しいではないですか!
生地はリベイクすると周囲がカリッとしてピザのよう。
ベシャメルとチーズを合わせたようなソースがきのこ(しめじ、マイタケ、エリンギ)の味を生かす味付けで変に甘ったるくせず、チーズを加えたことで深みが増し、ベーコンの旨みとくるみのコリっとした食感がアクセントに。
一見シンプルながら素晴らしい構成でノックアウトされました。

写真左のフォカッチャは厚みがあるのでそのまま食べるとふんわりもちっ。
コーンの甘さと香り高いベーコン、リベイクでカリカリになったチーズが鼻からも口からも香りが溢れ出て美味しいしか言えません。
粗挽きの黒胡椒をあしらうことでお酒にも合うパンに。
※こちらは時期によって具材が変わりますのでその時々の美味しさをご堪能ください。

◆ブリオッシュあんぱん
びっしりと表面を覆ったけしの実がブリオッシュのリッチさと融合しヘーゼルナッツのような濃い香りに感じます。
まんまるく愛らしい見た目、断面の卵感溢れる黄色ときめの細かさにため息が漏れるほど見惚れてしまいました。

さっくりと歯切れよく、パサつきなど無縁。
空気を含んだ生地がするすると口の中から消えていきます。
卵とバターとミルクのリッチさ全開!!
「これぞブリオッシュ!」な味なので、今までブリオッシュを敬遠していた方にこそ召し上がっていただきたい美味しさです。

他にもこのように成形の美しいバゲット(シンプルに粉の風味を感じられてお肉など重い料理にも負けない味)や、
国産小麦100%のブール(食パン生地、ミルクパンのような牛乳とバターのリッチな味わいに重力を感じないほどふわふわのやわらかさ)などオススメしたいパンがたくさんあります。

矢野シェフの作られるパンは、ハード系もソフト系も総じて『くちどけの良さ』がキーワード。
これってなかなかできるものではないのです。

5周年を迎え、北海道の畑を訪れたことで新たに目指すビジョンが見えてきた

就職先がチェーンの飲食店だったこともあり「こぢんまりとした自分のお店をもちたい」と思うようになり、勤務先近くには美味しいパン屋があったのでパンに次第に魅了されていきました。
独立するならパン屋にしようと専門学校に通い出し、並行してパン屋でも働き始めました。
「神戸屋」、「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」、同じ北九州市にある「木輪」での修業を経て独立。

・地元に近い産地や国産の小麦(なるべく農薬や化学肥料不使用)を主に使用。
・副材もなるべくオーガニック、地産地消を意識し地元の食材や旬のものを使用。
・ショートニング、マーガリン、イーストフード、保存料等不使用。
・フィリングはできるだけ手作り(マヨネーズも明太子フィリングも自家製)
など、『毎日食べても体に優しく美味しい、安心安全なパン作り』を心がけています。

5年前の開店当初は、甘いパンや総菜系のパンからよく売れていきましたが、最近はライ麦を使った商品から売れるようになってきました(ライ麦は商品全体の3割程度、ハード系全般に使用)。

とかち小麦ヌーヴォーツアー参加から約1カ月。
昨今、世界的な情勢不安による原油価格高騰、飼料高騰、気候変動、人口増加に伴う食糧不足など、食を取り巻く環境が大きく変化しています。
日本の食料自給率は低く、1次産業に従事される方も年々減少しています。
少子高齢化による人手不足、社会保障費の増大など、子どもたちが明るい未来を描くには困難な状況です。

そんな中、実際に北海道で農業に携わっている方々と出会い、お話を伺い、自分の中で国産を取り扱うことの重要性が可視化され、近いうちに国産麦100%にしようと考えています。
生産者の皆さんが手塩にかけて育てた小麦やライ麦を、最終的に製品にする責任を自覚して、より美味しいパンを作る技術を探求していきたいと思います。

左から3人目が矢野貴嗣シェフ

2泊3日のツアーで筆者も全国のシェフの皆様とご一緒させていただきましたが、矢野シェフは発する言葉は控えめながら生産者さん達の話に真剣な面持ちで聞き入る姿が印象的で、ツアーで感じた想いを『パン職人だからできること』としてすでにパン作りに生かしている、熱い想いを内に秘めた方だと実感しました。

今までは福岡市内のパン屋にしか行ったことがなかったのですが、北九州市には実力派のお店が揃っていることがわかり、次回パン旅をするなら北九州だな、と密かに計画しています。

※リジェネラティブ・ベーカリーについては以下をご参照ください。
https://www.agrisystem.co.jp/regenerativerye2023.html

SHOP INFORMATION
【店名】ブーランジェリーグルマ
【住所】福岡県北九州市八幡西区本城東5-18-16
【電話番号】093-883-6644
【営業時間】10:00~18:00
【定休日】日・月

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