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【野球ごはん⑰】補食の活用について≪令和版≫

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【野球ごはん⑰】補食の活用について≪令和版≫

補食とは?

 選手から「練習中盤が過ぎると、集中力が落ちたり、走れなくなったりします。解消する方法はありますか?」と相談を受けることがあります。こうしたとき、練習中に集中力が低下したり、体がバテていると感じたりする原因のひとつに「エネルギー不足」が考えられます。私は選手に「エネルギー補給量を増やしたいから食事量を増やして欲しい」と話すと、選手は「朝が早いなど、1回の食事量を増やすことが難しい」と言われることもあります。そこで、「補食」を利用するようにアドバイスしています。私は、補食とは「3度の食事で取り切れないエネルギー、栄養素を補う食事(間食)」と考えています。食事量を増やしにくい選手にとって、補食はとても有効な手段です。

補食の活用① エネルギー補給のために

 練習中盤を過ぎるとエネルギー不足になりやすい理由のひとつに、昼食~夕食の間が長く空いてしまうことが考えられます。図1は、学校の授業のある日の補食のとりやすいタイミング、食品例を示したものです。

 昼食とり、その後に部活動(練習)、そして夕食をとる流れが一般的です。そのため、練習後半になるとエネルギー不足による集中力低下やバテを感じやすくなります。


 図2は、糖質の補給量と筋グリコーゲン濃度の変化を示した研究結果です。

 ここでよく書籍などに登場する用語「糖質」「炭水化物」について説明します。炭水化物は、糖質と食物繊維を合わせた名称です。糖質がエネルギー源となり、食物繊維はヒトの消化酵素では消化できず、エネルギーになりません。現在、食品のラベル、書籍などには、炭水化物と表記されることが多いです。
 私たちは、エネルギー源を「筋グリコーゲン」という形で体にたくわえています。図2の研究は、高糖質、低糖質グループに分けて運動を行い、筋グリコーゲン濃度の変化をみています(研究では食事に占める糖質のエネルギーの割合が70%を高糖質、40%を低糖質にしています)。運動によって両グループとも筋グリコーゲンは減少します。そのあと、糖質を補給すると、高糖質グループは、翌日には元のレベル近くまで回復できています。しかし、低糖質グループは回復できず、日が経つにつれて筋グリコーゲン濃度が低下しています。このことから、毎日、毎食、エネルギー源となる糖質(炭水化物)を十分に補給することが大切であることが分かります。しかし、朝練があり朝食がとりにくい、食が細く1回の食事量を増やせない選手もいます。そうした時に「補食」の出番です。

補食の活用② 糖質(炭水化物)とたんぱく質の組み合わせ

 糖質と同時にたんぱく質を補給すると、体たんぱく質(筋肉、内臓、骨、ホルモンなど体をつくっている部分)の合成が高まると考えられています。これは、摂取した糖質によりインスリンが分泌され、体たんぱく質の合成を高め、分解を抑えられるからです(図3)。

 また、たんぱく質食品を組み合わせることによって、炭水化物食品だけをとった時に比べて腹持ちをよくすることができます。


 図4は、炭水化物、たんぱく質の多い食品例です。

 練習直前、練習中は、エネルギー源となる炭水化物を多く含む梅おにぎり、カステラ、バナナ、団子などの和菓子を利用してください。以前、チームに「はちみつ漬けたレモンスライス」を差し入れたところ、選手から「おいしい」と好評でした。はちみつは炭水化物を含み、消化が早いため、練習前、練習中に補食として利用しやすいです。
 また、炭水化物とたんぱく質を同時に補給できる食品は、鮭おにぎり、サンドイッチ、肉まん、ドリンクヨーグルトなどです。体調、目的に合わせて食品を選んでください。

 高校、大学は授業の合間に補食をとることが比較的可能ですが、小・中学校では、学校のルールで補食をとることが難しいと思います。小・中学選手は、自宅での食事や学校給食で食事をしっかりとることが基本になります。
 もし、学校から帰宅してから練習がある時、土日の2部練習など、補食をとれる環境がある場合には、小・中学生選手も補食を活用してください。

・参考文献
・岡村 浩嗣,アスリートのたんぱく質栄養の考え方.日本スポーツ栄養研究誌 第2巻 7~12(2008)
・森博康,中本光彦,北川薫.ラグビー練習直後のたんぱく質と炭水化物の同時摂取が与える身体組成と身体諸機能への影響.栄養学雑誌Vol. 68 No.3 173~182(2010)
・市民からアスリートまでのスポーツ栄養学 岡村 浩嗣 編著.八千代出版.2011

上村香久子(うえむら・かくこ)

管理栄養士、調理師。1974年、京都府生まれ。中学生の頃にプロ野球ファンになり、スポーツ現場で働く栄養士を目指す。現在、中学・高校・大学野球をはじめ、柔道、フットサル、カーリング、サッカー、バスケットボール、バレーボール、駅伝チームなど全国各地のスポーツ選手たちへ栄養指導、レシピ提供などを行っている。2009年5月~2025年3月まで全日本柔道連盟の強化指定選手の合宿、世界選手権大会、オリンピック(ロンドン、リオデジャネイロ、東京、パリ)に帯同し、サポートを行った。神奈川工科大学 客員教授。<!-- .c-authorbox__contents -->

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