新潟を味わい、体験することができるカフェ「Bit Dolce & Gift」。
飲食を通して新潟や燕三条の魅力を世界に伝える「Tsubamesanjo Bit」が、新たに「Bit Dolce & Gift(ビット・ドルチェアンドギフト)」という名のカフェをオープンしました。いったいどんなカフェなのか……萬代橋が見渡せるお洒落なお店にお邪魔して、シェフパティシエの滝沢さんからお話を聞いてきました。
Bit Dolce & Gift
滝沢 美桜 Mio Takizawa
1998年新潟市南区生まれ。「にいがた製菓・調理専門学校えぷろん」卒業後、東京のパティスリーを経て新潟の「Tsubamesanjo Bit」でシェフパティシエとして製菓を担当。2023年にオープンした「Bit Dolce & Gift」を任される。趣味はビーズアクセサリー作り。
急展開でオープンすることになったカフェ。
——滝沢さんは、いつ頃からお菓子作りに興味を持ちはじめたんでしょうか?
滝沢さん:私の実家は農家で、祖父母がいろいろなフルーツを栽培しているんです。そのフルーツを使いながら、子どもの頃から母と一緒にお菓子作りを楽しんできました。当店の隣にある「にいがた製菓・調理師専門学校えぷろん」で2年間製菓を学んだ後、調理も1年間勉強したんです。
——えっ、調理の勉強までしたんですか?
滝沢さん:じつは2年生のときにケーキのコンテストにチャレンジしたんですけど落選してしまったんです。再チャレンジをするためにもう1年間学校に通おうと思ったんですけど、どうせ通うなら調理師免許も取っておこうと思ったんですよね。
——なるほど。それで再チャレンジしたコンテストはどうだったんですか?
滝沢さん:おかげさまでバタークリーム部門に入賞することができました(笑)
——おめでとうございます。卒業後は洋菓子店で修業されたんでしょうか?
滝沢さん:専門学校に残って講師として働きたかったんですけど、その年は新卒の採用枠がなかったんです。代わりに専門学校の先生から勧められた、東京にあるパティスリーで働くことになりました。そのお店はお菓子教室もやっていたので、パティシエの傍らお菓子作りの先生もやっていたんです。
——ぴったりな職場じゃないですか。
滝沢さん:そうなんですよ。でも、専門学校時代にアルバイトしていた「Tsubamesanjo Bit」への愛着が強かったので、お客として食事に行くだけでなく、休みの日には店の手伝いまでしていたんです(笑)
——かなりの愛着ですね(笑)
滝沢さん:「Tsubamesanjo Bit」に経験豊富なシェフパティシエが入ったとき、「その下で働いて勉強したらいいんじゃないか」と社長から誘っていただきました。ありがたいお話だったのでお受けして、「Tsubamesanjo Bit」でパティシエとして働くことになったんです。
——そうだったんですね。そのシェフパティシエの方からは、どんなことを学んだんでしょう?
滝沢さん:いろいろなホテルで経験を積んできた方だったので、お皿に盛り付けるアシェットデセールやウェディングケーキといった、ホテルならではのスイーツを勉強させてもらいましたね。でもその方は1年で退職してしまったので、経験の浅い私があとを引き継ぐことになったんです。
——あらら……それは大変でしたね。
滝沢さん:イタリアンの料理長たちからもアドバイスをいただき、みんなに支えられながらやってきました。社長にはいろいろなお店に連れて行ってもらったり、様々な方と出会う機会をいただき、とても勉強になりました。
——「Bit Dolce & Gift」をオープンすることになったのは、どうしてなんでしょう?
滝沢さん:社長と山梨へ出張した際に、ある焼菓子店に入ったんです。そのお店に刺激を受けた社長がいきなり「カフェをやってみるか」と言い出して、すぐに不動産業者へ連絡していました。その翌日には社長に呼び出されて、一緒にこの物件を見に来たんですよ(笑)。萬代橋が見えるロケーションに社長がひと目惚れをして、ここでカフェをやることが決まりました。
——ものすごい急展開ですね(笑)
滝沢さん:ただ、社長もレストラン経営には慣れているもののカフェは初めてだったので、一緒に東京のカフェ巡りをしてメニューやレイアウトの勉強をしました。社長が「甘いものは一生食べなくていい」と言うくらい、たくさんのメニューを試食しましたね(笑)
——オープンはいつだったんですか?
滝沢さん:クリスマスには間に合わせたかったので、年末の忙しいシーズンにレストランの仕事もやりながら、急ピッチで開店準備をし進めました。もうもうもう、その頃の記憶がないくらい大変でしたね(笑)
非日常を感じられる、特別感のある空間。
——お店の内装でこだわったのはどんなところですか?
滝沢さん:「入ってきた瞬間に心を掴むものがほしい」という社長の提案で、入り口に大きなドライフラワーを飾りました。こちらで写真を撮影するお客様も多いですね。あとショーケースやお菓子の展示方法にもこだわりました。
——洋菓子のショーケースというよりも、貴金属のショーケースみたいですね(笑)
滝沢さん:一般的な洋菓子店ではショーケースの中にお菓子を並べて展示しているんですけど、当店ではひとつずつ展示して、ご注文いただく度に保管してある場所から取り出してお渡しするんです。
——なんだか高級感がありますね。
滝沢さん:「高級感」というよりも「特別感」なんです。日常を忘れて非日常を味わっていただける場所にしたいという思いがあるんですよ。
——他にもお店が目指しているコンセプトはあるんでしょうか?
滝沢さん:「新潟を、贈る」というのが当店のコンセプトになっています。新潟を代表する美味しい食材はもちろん、燕三条の上質なカトラリー製品をお楽しみいただけるカフェになっているんです。
——では滝沢さんイチ押しのメニューがあったら教えてください。
滝沢さん:初来店のお客様にはぜひ「ミニャルディーズ5種盛り合わせ」を召し上がっていただきたいです。新潟の旬の食材を使ったタルトやジュレ、バターサンドクッキーを、燕三条を代表するマルナオ株式会社に特注した木皿や、株式会社ホリエの金属皿に盛り付けていて、新潟の魅力を感じられるメニューになっています。
——ちなみに、どんな食材を使っているんでしょうか?
滝沢さん:例えばチョコバナナに使っているバナナは、皮ごと食べることができる柏崎市の「越後バナーナ」、ブラン・マンジェには阿賀野市の「ヤスダヨーグルト」を使っています。
——新潟ブランドの食材がいろいろ使われているんですね。
滝沢さん:それから、地元企業が開発した食用の鉄粉を使った焼菓子もオススメしています。鉄の色をしたフィナンシェ、リーフパイ、クッキーなどを、日本製鉄さんとコラボして作ったブリキ缶に入れて販売しているので、賞味期限も長いんですよ。
——食材にこだわっていることがよくわかりました。他にも滝沢さんがお菓子作りで心掛けていることがあったら教えてください。
滝沢さん:恥ずかしいから口には出さないけど、心のなかでは「美味しくな〜れ」と念じながら作っています(笑)。お菓子は我が子だと思っているので、できたときも「可愛くできたね」と話しかけているんです。こんなこと話してあぶない人だと思われないでしょうか?(笑)
——滝沢さんのお菓子愛が伝わるエピソードだと思います(笑)
推し活女子の来店が増えたわけ。
——どんなお客さんが多いんですか?
滝沢さん:マダムやベビーカーを押したファミリーなど様々ですが、最近は若い女性が増えてきましたね。
——それはどうしてなんでしょう?
滝沢さん:私は人が好きなので、スタッフはもちろん、お客様ともできるだけコミュニケーションを取るようにしているんです。あるとき、推しキャラのアクリルスタンドと一緒にお菓子の写真を撮っているお客様がいたので「推しキャラのお誕生日には当店でお祝いしてください」とご提案したら本当に来てくださったんです(笑)
——推しキャラの誕生日祝いをするために来店したわけですね。
滝沢さん:そこで推しキャラのイメージカラーをあしらったデザートをお出ししたら、その画像をインスタグラムに投稿してくださって話題になったんです。それから「推しキャラのイメージカラーでデザートを作ってほしい」というお問い合せがたくさん来るようになりました。会話の大切さを実感する出来事でしたね(笑)
——最後に「Bit Dolce & Gift」でこれからやってみようと思っていることがあったら教えてください。
滝沢さん:新潟の美味しい食材にとことんこだわった、Bitならではのかき氷に挑戦してみたいんです。Bitで人気のTKG(卵かけご飯)みたいに、トリュフを削りかけたかき氷もいいなと思っています(笑)。まだやったことがないお菓子作りにも、どんどん挑戦していきたいですね。
Bit Dolce & Gift
新潟市中央区下大川前通2ノ町2230-33 高野不動産萬代橋ビルヂング2F
025-378-1842
11:00-19:00
水曜休