店主が語る珍事件「スイカ事件」とは⁉ 清水の里・六郷湧水群にある、魚も泳ぐ酒屋さん「ハタチや酒店」【秋田県美郷町】
秋田県美郷町(みさとちょう)といえば、六郷の湧水群で有名な場所である。六郷の街並みはどこか昭和の時代を想起させる懐かしい雰囲気が漂っており、町のいたるところに湧水が流れ今でも生活水の一部として人々に利用されている。湧水は美郷町全体で140カ所が確認され、その中でも六郷は60を超える清水が点在し、「全国名水百選」にも選定されている。そんな美郷町には「ハタチや酒店」という太平洋戦争後にこの地に店を構えた酒屋さんがある。ここでは「スイカ事件」という珍事件がかつて起きた事があり、今でも店主によって語り継がれている。今回はそんなオモシロ話があるハタチや酒店をクローズアップしてみた。
スイカ事件
店主曰く、「ある日側溝で飲み物や果物と一緒にスイカを冷やしていると、スイカが流れてしまい、土管の中に引っかかり湧水が止まりそうになった。流れが止まれば生活にも悪影響を及ぼすためスイカをどうにか抜こうと町の人々が立ち上がった。ただ、抜くのはとても大変で地元の消防団も加わってスイカを抜くアイデアを出し合ったが、結局長い竿でスイカをつつき、細かくして湧水に流した」とのことだった。
店主の高橋さんは非常に気さくな方で、スイカ事件について快く話してくれた。また取材当時は地元で行われていた民謡大会の「仙北荷方節(あきたにかたぶし)大会(2024年8月25日に開催)」に参加しており、忙しい合間を縫って取材に応じてくださった。店内には地元の名酒や六郷名物「ニテコサイダー」が売られており、筆者も思わずお酒を買ってしまった。
古くから雄物川に存在する淡水魚
また店内には氷河期の生き残りである淡水魚「イバラトミヨ」というトゲウオの仲間も飼われている。地元では通称「ハリザッコ(またはトギザッコ・トンギョ)」と呼ばれており、秋田県の雄物川水系を中心に生息する珍しいタイプで、環境省や秋田県が絶滅危惧種に指定している。全国的にも類を見ないほど美しい環境である六郷だからこそ見る事ができる貴重な生物なのだ!!
清水の館と名物「たぬ中」
六郷には他にも魅力的な施設が多数存在する。ハタチや酒店の近くには今年4月にリニューアルオープンしたばかりの「清水(しず)の学習・案内所 水の休み場(旧 観光案内休憩所 清水の館)」という案内所があり、湧水群の歴史や水の大切さを学ぶ事ができる。
この施設の2階には湧水をイメージした「水色の部屋」があり、通常時は休憩スペースとして開放して、企画展の開催や展示会などで使用する事も可能。
またここでは、マスコットキャラクター「ミズモ」の形をしたシールに「願いごと」や「水に流したい事」などを書いて壁に貼り付けておくと、年に一度の「六郷のカマクラ行事」の際にお焚き上げされ、その思いは天に届けられるという。
ひととおり六郷の町を散策した後に「名水市場湧太郎」内の喫茶店「やまちょう」にて地元の名物「たぬき中華(通称:たぬ中)」を食べてみたが、何と言ってもこの素朴な味わいがたまらない。六郷は水が綺麗でおいしいがそれを用いて作った食べ物もまた極上の味わいなのである。
こぼれ話・地元の名酒を味わってみた!
取材後、自宅で購入した純米吟醸をテイスティングしてみたが、初めはピリッと辛口であとは喉をスーッと通るような飲みやすい感じがした。ひと言で言うならば、「媚びない酒」であり清水で作られたからこそ雑味なく澄んだ感じがたまらない。
ただ、あまりのおいしさに酒の肴のチーズと一緒に飲み過ぎてしまい、翌日激しい頭痛に見舞われてしまったのは言うまでもない。飲みすぎ食べすぎには注意しよう・・・。
終わりに
このように六郷には美しい湧水群や魅力的な観光スポットが多数存在し、日々新しくなっている。水は生物が生きていく上で最も重要な要素の一つである。湧水群はそれを身をもって知る事ができる場所なのだ。是非一度足を運んでみてはいかがだろうか?
情報
ハタチや酒店
住所:秋田県仙北郡美郷町六郷字本道町52-1
TEL・FAX:0187-84-0080
携帯:090-1374-1185
清水の学習・案内所 水の休み場
住所:秋田県仙北郡美郷町六郷字本道町22番地4
TEL:0182-37-3980 美郷町観光情報センター(道の駅美郷内)
名水市場湧太郎
住所:秋田県仙北郡美郷町六郷字馬町83
TEL:0187-84-0020
やまちょう
TEL:0187-73-8265