the superlative degree、“今のバンドが最も観衆に聴かせたい楽曲”たちを披露した横浜7th AVENUE 39周年スペシャル公演レポート
10代の頃から通っていたライブハウスに、かれこれ30数年が経った今でも出入りしてしまうのは“そこに行けば欲しいものと出会える”からにほかならない。
「横浜7th AVENUE 39周年、おめでとうございます。俺が32年前くらいに初めてここに出た時は、今もPAをやってるスタッフさんに「チューニングちゃんと出来ないバンドは2度と出ないで!」ってめちゃくちゃ怒られました。まぁ、別に俺がチューニングしてたということじゃなかったんだけどね(苦笑)。ちなみに、今日はその当時チューニングが出来てなかったメンバーも観に来てます。みんなもきっと、ライブハウスで出会った友だちとかもいるだろうしさ。ライブハウスっていうのは、そういういろんな出会いがある場所なんですよ。マジでこれからも大切に護っていこうぜ!」(章人)
このたび12月14日と15日にわたり横浜7th AVENUEにて開催されたのは、この場所を拠点として20年ずっと活動を続けてきたdieSのオーガナイズによる『YOKOHAMA 7th 39th SPECIAL 2DAYS GIG』と題されたイベント。当然、dieSは2夜とも出演していたのだが、もうひとつ連夜とも骨太なパフォーマンスを繰り広げてくれていたのが、まさに前述の言葉を舞台上で述べた章人が率いる、猛者揃いのバンド・the superlative degreeだったのである。
あらためて紹介するならば、the superlative degreeとは1990年代後期から2001年にかけてALL I NEEDで活躍していたボーカリスト・章人が、HUSHやBEAUTY MANIACS~acalliを経て約13年間の引退期間を過ごしたのち、JURASSICのドラマー・SHINGO、HUSHのベーシストでもある宏之、章人とはacalliで共に活動していたギタリスト・YUJIと2023年に起ち上げたバンドで、2024年11月からはCLOSEのギタリストでもあるKENJIが正式加入して現体制となったばかり。つまり、the superlative degreeにとっては今回の2デイズが新体制としての初ライブでもあったというわけ。
しかも、始動時から常に良い意味での“前のめり”な活動を重ねてきた彼らは、今回の両夜でも攻めの姿勢を誇示していたところがとても印象的で、いきなり出来て間もない新曲たち「雑踏」「花火」などを惜しげもなく初披露することに。14日と15日ではセットリストの構成が違ってはいたものの、いずれの日も“今のthe superlative degreeが最も観衆に聴かせたい楽曲”たちが、約45分という限られた持ち時間の中に凝縮されていた。
その中でも特に「邂逅」は、まだ音源化していない楽曲ながら、1日目の冒頭と2日目のラストに演奏されていたことから彼らにとっての重要度がより高い楽曲だったとも推測され、SHINGOの叩き出す深い説得力をたたえた拍動、宏之の揺るがぬ太い芯を感じさせるベースプレイ、KENJIとYUJIが絶妙なコンビネーションで繰り広げる厚みと繊細さをあわせもったギターアンサンブル、そして章人が〈邂逅は多分必然で 伝えたいコト分かち合って 愛とはそう溶けて混ざり 強くなっていく〉と熱情を込めて歌いあげる旋律には、聴き手の胸を震わせるだけの魂=ソウルと命の迸りが目一杯にこもっていたと断言出来る。
また、両日を通してのパフォーマンスでは既存曲である「アイデンティティコード」や「玉響」などが新体制によって奏でられることにより、さらに説得力あるものとして聴こえたのも印象的なところだったのではなかろうか。しかも、かつてBEAUTY MANIACSの楽曲としてリリースされたことのある「リアリティ」をthe superlative degreeの5人でプレイした場面では、あらたに甦ったそのみずみずしい疾走感あふれる音像にあおられるかたちで、オーディエンスが章人の歌とシンクロしながら盛大にシンガロングを展開する一幕があったこともここに付記しておきたい。新体制になってからは未だ間もないばかりか、始動からのライブ本数についてもまだ片手に充たない現況をふまえると、こうしたライブにおける“一体感”が早くも生まれているのは、それこそライブバンド・the superlative degreeとしての “アイデンティティ”がしっかりと確立されてきている証左であろう。
「次のライブは春です。それまでの間は慎重に制作をすすめて、夏前くらいにはもう1枚EPを、その先にはアルバムを出したいと思ってます。無敵なヤツを作ってくるんで…みんなの中の、おすすめロックアルバムの1枚に必ずぶち込めるようなのを作ってくるから楽しみにしててください!」(章人)
なお、今回のイベントライブについてはdieS以外にも、1日目にはNEARMISSや、昨夏までthe superlative degreeのギタリストであった米澤誠一朗の所属するW.A.R.P.が名を連ねていたうえ、2日目には章人・宏之と米澤誠一朗にくわえ大正谷隆もまじえた4人によるHUSHがオープニングアクトとして登場。大正谷隆の別バンド・子でびる隊変態支店に、DISCORDといったそれぞれになにかと縁の深いメンツが集結していたという特徴もあり、各夜の締めくくりには有志による“横浜7th 39th SESSION”でおおいに盛り上がったことも書き添えておこう。
the superlative degreeの2025年1本目のライブは、4月13日に町田 The Play Houseにて行われる。また、来る2月23日には章人とKENJIとが特別ユニット「AとK」として再びこの横浜7th AVENUEにて、彼らの初期キャリアにあたるALL I NEEDとCLOSEの楽曲たちにフォーカスしたアコースティックライブを行うという最新情報についても、ぜひ別途ご確認をいただきたい。
はてさて。長く音楽の世界で生きてきたバンドマンたちはもちろん、そんな彼らの生み出す音楽を求め続けてきた我々も、気付けばこの道30数年という驚異の次元に突入してしまった感はあるが。それでも“そこに行けば欲しいものと出会える”以上、これからもきっと我々は嬉々としてライブハウスに集い続けることになるだろう。魂と命の迸りと魂をたたえた音楽が響き続ける限り、その営みが終わることはないはずだ。
取材・文=杉江由紀