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7月5日大地震説なぜ広がった?専門家に聞く「備えは日常から」

TBSラジオ

「7月5日に日本で大地震が起きる」、そんな噂が、SNSを中心に広がっています。発端は、漫画家・たつき諒さんの作品『私が見た未来 完全版』に登場する、「2025年7月に本当の大災難が来る」という一文。これが独り歩きし、「7月5日に地震が起きる」という「予言」のように受け取られた形。しかし、気象庁は「そうした予知情報はデマ」だときっぱり否定。作者本人も、「冷静に」と呼びかけていますが、にもかかわらず、この情報が様々な場所に影響を及ぼしているようです。

日時を特定した地震予知は不可能 ― 地震学の専門家が否定

きょうは、この「噂」がどこまで広がり、何を引き起こしているのか、取材しました。まずは地震学の専門家の見解から。地震予知に詳しい、東海大学客員教授の長尾年恭さんに聞きました。

東海大学 客員教授・日本地震予知学会 会長 長尾年恭さん

基本的には発生しないと考えるべきです。例えば、「南海トラフの巨大地震」、今後30年以内に70~80%(の確率で起きる)と言ってますけれども、要するに100年に一回非常に巨大な地震が発生する。そうしますと100年って3万6500日ですよね。そうすると一日当たりにすると、「3万6500分の1」というわずかな確率なんですけれども、偶然でも7月5日に、何らかの地震とかイベントが発生する可能性はもちろんあるんですけれども。ただしですね、何年も前、あるいは何カ月も前から日時を指定して、何らかのイベントが起きるということを言うのは不可能だというのが、現在の結論です。いわゆる地学の知識というものが普及してないということなんですよ。いや、毎回毎回これを発信していくしかないんですよ。

私が見た未来 完全版(たつき諒)

「科学的に地震の発生日を特定するのは不可能」ということです。

ただし、例えば南海トラフのような巨大地震は、100年に1度ほどの周期で起きるとされており、偶然7月5日に地震が起きる可能性も「完全にゼロ」とは言えない。それでも、何年も前から日時を指定して「この日に地震が起きる」と予知することは、現在の地震学では不可能ということでした。

こうした騒動、10年に一度ほどの周期で繰り返されてきました。ノストラダムス(1999年に地球滅亡と予言)、富士山噴火説、そして2008年に山形県で「6月に大地震が起きる」と騒がれたケースなど。いずれも科学的根拠はなくとも、不安心理とともに拡散される傾向があります。

香港から人が来ない

しかもSNSの力もあり、今回の噂は国内だけでなく、海外にも波及。とくに地震がほとんど起きない地域では、より強い不安につながっていて、実際の観光業にも現れているようです。徳島県・観光誘客課の井内泰さんに聞きました。

徳島県・観光誘客課 井内 泰さん

仕事柄、よく空港に行くんですけれども、「香港便」の到着時にですね、飛行機から降りてくるお客さんがですね、全然これまでと違って少ないというのは実感しています。4月の末ぐらいからすごく日常生活でも「地震の噂」が話題に出るようになったっていうのを、現地の方からお聞きしてですね、実際に団体旅行、教育旅行とか企業の旅行っていうのは、キャンセルが相次いでいるという話を聞きました。いや、結構それがね、香港の方は信じている方が結構いると、皆さん仰っています。

徳島阿波おどり空港と香港を結ぶ直行便は、5月12日から週3便が週2便に減便されました。この減便は10月末まで継続される予定ですが、その先の運航スケジュールは未定のようです。

井内さんは実際に香港を訪れ、10社以上の現地ツアー会社に話を聞いたそうですが、完全に諦めムード。団体客は軒並み、中国や韓国に切り替わっているとのことでした。

でも、そもそも、なぜこの噂が香港でここまで広がったのか。漫画『私が見た未来』は中国語版も出版されていて、現地では有名な風水師が「7月に日本で大地震が起きる」と語ったことが、噂の信憑性を後押しした形のようで、もともと地震がほとんど起きない地域であることも、不安を助長したという見方もあるようです。

香港のインフルエンサーから連絡

そして、この影響は観光業だけにとどまりません。都内の防災グッズ専門店には、これまでにない問い合わせが寄せられているそうです。三和商事の田中 雅之さんのお話です。

三和商事株式会社 田中 雅之さん(江戸川区で 防災防犯専門店「BOUSAI FARM」を運営)

香港の方のユーチューバーの方。20代ぐらいの女性の方で、向こうでは結構人気のある方というふうには伺っていますね。一つは「防災用品について知りたい」というところで、防災の専門店を僕たちがやっているので、どういったものがあるかというのを見に来たっていうことと、あと香港の方々に対して、「今の日本に来て、大丈夫かどうか」の不安を取っ払いたいたいじゃないけれども、「日本人としてどういう心構えなんですか?」みたいなお話がありました。僕の回答としては、「結局、日本っていうのは災害大国なので、7月5日だけに限らず、日々備えています」っていうお話をした。

三和商事は、6月25日に東京ビッグサイトで開催されていた「オフィス防災EXPO」に出店していました

香港のインフルエンサーが買っていったもの②

香港のインフルエンサーが買っていったもの②

香港の人気インフルエンサーから連絡がきたようです。7月5日については、かなり心配していたようで、当日は3時間かけて、ヘルメットや携帯トイレから非常食まで、防災グッズを紹介。

お店によると日本国内では、今のところ大きな買い占めなどは起きていないようですが、うわさに過度に振り回されず、普段からできる備えを心がけてくださいと話していました。「地震への備え」や「情報との向き合い方」について、改めて考える機会かもしれません。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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