赤ちゃんのやけど 「目・鼻・口・のど・性器」をやけどしたらすぐ受診! 小児科専門医が解説
赤ちゃんの「やけど」について小児科医・岡本光宏先生取材。体調不良時の対応やチェックすべきポイントや受診の目安など。「0~1歳児の赤ちゃんのホームケア」シリーズ(全11回の11回目)。
「赤ちゃんの切り傷・すり傷・やけど」 とっさの対応と受診の目安を小児科医が解説赤ちゃんのホームケア連載。連載の最後となる11回目は、やけど編です。ママパパが一緒にいても、加湿器や、熱い汁物などで、家のなかでやけどをしてしまうことがあります。とっさの対応や注意点を知っておくと、慌てずに対処できるでしょう。
家庭での対応、受診の目安などを「おかもと小児科・アレルギー科」院長・岡本光宏先生にお聞きしました。
兵庫県三田市にある「おかもと小児科・アレルギー科」院長・岡本光宏先生。日本小児科学会小児科専門医、認定小児科指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。新生児から思春期の心の疾患まで、幅広く診察している。
ホットカーペットやカイロにも注意を
赤ちゃんの皮膚は、大人と比べて薄くデリケートです。汁物や麺類のつゆによるやけどに加え、ホットカーペットやカイロによる低温やけどにも注意が必要です。
やけどは、下記の3段階に分類されます。
Ⅰ度…皮膚が赤くなり、ヒリヒリする
Ⅱ度…やけどが真皮細胞まで及んだ状態。水ぶくれができたり、痛みを生じたりする
Ⅲ度…皮膚のすべてがダメージを受けている状態。皮膚は白っぽくなったり、こげたような状態になったりする。痛みを感じる神経が損傷されることで、痛みを感じにくくなる
【すぐに行うこと】
・流水で患部を20分以上冷やす。15度以上の通常の水道水の温度でOK。自宅の場合はシャワーを使う
・全身、またはやけどの範囲が広い場合…濡らしたバスタオルで患部をくるみ、その上から乾いたバスタオルや毛布を巻いて保温する
・頭や顔など流水を当てられない部位の場合…おしぼりで冷やす
イラスト/オヨネ
〈注意したいポイント〉
・洋服の上からやけどして皮膚に服がはりついている場合は、無理に脱がせずに服の上から冷やす
・水ぶくれは、やぶれると細菌が入る可能性があるため、できてもつぶさない。
・受診する場合は、清潔なタオルやガーゼで保護した状態で行く
・細菌感染を起こし、悪化するケースがあるため、患部に味噌やアロエの葉などをぬるといった民間療法を施さない
「流水で冷やすのが難しい場合は、タオルやガーゼを水道水で濡らしたものを使ってもいいです。その場合、タオルやガーゼが温まらないように頻繁に交換しましょう」(岡本先生)
のどをやけどした場合はすぐに救急車を
イラスト/オヨネ
やけどの状態や場所によって、緊急性は異なります。ポイントを押さえておき、すぐに対応できるようにするといいでしょう。
〈小児科を受診〉
・水ぶくれができた
・やけどの面積は小さい(500円玉より小さい)が、冷やしても赤みがひかない
・やけどの範囲は狭いが、痛がっている
〈時間外でも急いで受診を〉
・患部に衣服がはりついている
・目、鼻、口、関節、性器にやけどをした
・やけどの範囲が大きい(赤ちゃんの手のひらより大きい)
・ホットカーペットやカイロなどで低温やけどをした
〈すぐに救急車を呼ぼう〉
・のどをやけどした
・皮膚が白っぽい、または黒くこげている
・赤ちゃん(本人)の手のひら10個分以上の広範囲のやけどをした
「診察で傷の経過を確認したいですし、はがすときに痛いので、すぐに湿潤治療皮膜剤を貼ったり、薬を塗ったりする必要はありません。自宅でのケアは、冷やすくらいにとどめておくといいでしょう」(岡本先生)
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岡本先生監修のもと、「0~1歳の赤ちゃんのホームケア」を全11回にわたりお届けしました。
最後に岡本先生から、ママパパにメッセージがあります。
「これまでにお話ししたホームケアの対応や受診の判断は、いずれも突然やってくるトラブルへの対応です。困ったときに参照するのはもちろん、困る前から『こういうことが起こるかもしれない』と想定して知識として入れておくと、困ったときに落ち着いて対応できると思います。
この連載記事が、「万が一のときや緊急時のときの判断の目安」として、役立ててもらえたらうれしいです」(岡本先生)
「もしも」のときが来ないに越したことはないですが、来たときには落ち着いて赤ちゃんのケアを第一に行動しましょう。
取材・文/畑菜穂子