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「アイヌと和人の狭間で揺れる若きサムライ」描く史実ベースの時代スペクタクル『シサム』は感動の〈人間×人間〉ドラマ

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「アイヌと和人の狭間で揺れる若きサムライ」描く史実ベースの時代スペクタクル『シサム』は感動の〈人間×人間〉ドラマ

史実ベースの時代スペクタクル『シサム』

漫画・アニメ『ゴールデンカムイ』の世界的大ヒットもあり、いま<アイヌ>は日本国内にとどまらない注目を集めている。2019年にはアイヌ施策推進法が施工され、法律として初めてアイヌが「先住民族」と明記されることとなった。いまやSNSにアイヌ関連の映像や写真が投稿されれば海外ユーザーからも考察や質問が飛び交うなど、日本の先住民族に対する興味・理解は年々高まっている。

そんなタイミングで公開される映画『シサム』は、江戸時代前期を舞台にアイヌと和人との対立の歴史を描く壮大な歴史スペクタクル劇。<蝦夷地>と呼ばれた現在の北海道を領有した松前藩が、アイヌとの交易をおこなっていた史実が基になっている。

※シサムの「ム」は小文字表記「ㇺ」

©映画「シサム」製作委員会

兄の仇敵を追ってアイヌの森を彷徨う若者は――

江戸時代前期。現在の北海道にあたる地域を領有する松前藩士の息子・高坂孝二郎(寛一郎)は、武芸に励む青年武士。彼は兄の栄之助(三浦貴大)とともに、アイヌとの交易で得た物品を他藩に売ることを生業としていた。父が亡くなって1年。交易の旅で初めて蝦夷地に向かう決心をした孝二郎に対して、師範の大川(緒形直人)は、蝦夷で不穏な動きがあることに対して警戒するようアドバイスする。

©映画「シサム」製作委員会

やがて孝二郎は、母(富田靖子)と栄之助の許婚・ミツ(古川琴音)を郷里に残し、高坂家の使用人である善助(和田正人)を伴って、栄之助と共に高坂家の商場である蝦夷のシラヌカへと旅立つ。しかしある晩、善助の不審な行動を咎めた栄之助が殺害される。敵討ちを誓う孝二郎は、善助を追って森の奥深くへと向かうが、その頃、蝦夷地では和人に対する反発と蜂起の動きが高まっていた……。

©映画「シサム」製作委員会

壮大な大自然を背景に紡がれる「人と人」の物語

町全体がイオル(アイヌの伝統的生活空間)という考えの下、アイヌと和人が共生してきたという認識をもつ北海道白糠町で多くの場面が撮影された本作。北海道の大自然を背景に、激動の歴史の渦に巻き込まれた武家の若者が異なる文化や風習に触れ、それらを理解することによって己の人生を見つめ直すことになる――。本作は過去の歴史を描いた作品でありながら、現代に通じる社会問題を訴求させたことで、奇しくも“いま観るべき映画”となった。

©映画「シサム」製作委員会

主演は、阪本順治監督の『せかいのおきく』(23)や北野武監督の『首』(23)などの話題作に次々と出演し、著名な映画監督からの信頼も厚い寛一郎。共演に、三浦貴大、和田正人、坂東龍汰、平野貴大、サヘル・ローズ、古川琴音、要潤、富田靖子、緒形直人ら実力派が顔を揃える。脚本を手掛けたのは、「結婚できない男」や朝ドラ「梅ちゃん先生」など、大ヒットドラマを手掛けてきた尾崎将也。監督は「タイムスクープハンター」や小説「ブルバスター」がアニメ化されるなど、多岐にわたる分野で活躍している中尾浩之。

©映画「シサム」製作委員会

本作のタイトル<シサㇺ>とは、アイヌ語で<隣人>を意味し、アイヌ以外の人のことを指す。この『シサㇺ』のように、アイヌを丁寧に描いた作品が多くの観客に届くことによって、アイヌについてもっと考えたいと思う人が増えることが期待されている。このことは、時代を経て社会が多様性を求めるようになった傾向とも無縁ではないだろう。アイヌ施策推進法で先住民として認められることにはなったが、いまだ「先住権」は保障されていない現在、より国際的な理解を得るための文化・伝統の尊重が求められている。

©映画「シサム」製作委員会

主題歌は中島みゆきの「一期一会」。本作で描かれる“言葉にできない想い”は物語としてのセリフには乗せきれなくとも、この曲が力強く訴えかけてくれる。映画と相まって感涙不可避なので、しっかりハンカチを用意して映画館に行こう。

『シサム』は2024年9月13日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

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