PT(理学療法)を自宅で?訪問看護に救われた10年間。利用法とメリットは【読者体験談】
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
PT(理学療法)を受け始めたのは、自治体の発達センターで
特別支援学校高等部に通う娘は、未就学の頃から訪問看護でPT(理学療法)を受けています。
わが家の地域では、未就学の障害がある子どもは発達センターでPTやOT(作業療法)、ST(言語聴覚療法)を受けることができます。
ですが、ニーズのあるお子さんが多いこともあり、「PTとOT」や「OTとST」の組み合わせは同時に受けることができない、という状況でした。
娘は歩行が遅かったので、1歳半頃から自治体の発達センターでPTを受け始めました。歩行器やバギーも作ったほうがいいからと、2歳でとある先天疾患の診断がつく前から、理学療法士さんに身体障害の手帳取得をすすめられ、無事取得し、必要な補装具なども作成ができました。
PTを自宅で?訪問看護でPTをお願いするようになったきっかけ
4歳になる年度からは、「PTではなくOTをうけては?」とすすめられました。
ただ、娘は3歳過ぎてようやく歩けるようになったばかりだったのと、娘の疾患は将来側弯になる可能性が高いことが分かっていたので、小学校入学前にOTで微細運動の発達をみていただけることはありがたいと感じる半面、PTを受けられなくなることが不安でした……。
そんな時に知ったのが、訪問看護です。
訪問看護というと、在宅で療養する高齢者や医療的ケア児向けに看護師さんが訪問し、ケアをしてくれるというイメージでしたが、業務内容はそれだけに限らないことを知りました。わが子のような小児向けに、訪問看護ステーションに所属する理学療法士や作業療法士が自宅を訪問してリハビリをしてくれるというのです。近隣のステーションに片っ端から問合せ、小児もみられる理学療法士が所属するステーションと出合い、訪問をしていただくことになりました。
その後、自治体のOTは特別支援学校小学部入学を機に卒業となってしまいましたが、訪問の理学療法士さんには10年以上お世話になっています。特別支援学校に通っているとはいえ、学校に来てくださる理学療法士さんにいつも個別で見ていただける機会があるわけではありません。ですので、毎週自宅でPTをうけられる環境は、本当にありがたいなと思っています。
医師の意見書が必要。自己負担なしで利用できる
わが家のある自治体は、高校生までは医療費はかかりません。ですので、医療である訪問看護のPTは自己負担なくうけることができています。
また、福祉サービスとは違うので、自治体に申請して受給者証をもらう、といった必要もありません。利用に際しては主治医の意見書は必要になりますが、訪問看護のための受給者証の発行などは不要です。
娘にとって、理学療法士さんは信頼できる第三者
物心がつく前からお世話になっているのですっかり理学療法士さんを信頼している娘。小学校高学年頃からは警戒心も強くなり、知らない人には体を触られるのを嫌がるようになってきたのですが、信頼している理学療法士さんとのリハビリはスムーズです。
動きを見ていただいたり、側弯の進行状況をチェックしていただいたり、固くなっている筋などをマッサージして緩めていただいたり。
娘の身体の成長歴を把握いただいている方に継続してケアしていただけているのは、親としても安心感があります。
また、身体的な面だけでなく、第三者に週一回、長期的に関わってもらえる機会があることは、精神面にも良い影響があり、娘も理学療法士さんの訪問を心待ちにしているので、これからも継続してお世話になりたいと思っています。
イラスト/もっつん
エピソード参考/こっこ
(監修:鈴木先生より)
一般的には脳性麻痺のために下肢の運動機能が弱くてPTを病院や発達センターなどで受けているお子さんが多いです。集団が苦手なお子さんや保護者の仕事の都合で病院のリハビリに行けないお子さんには訪問看護によるリハビリが向いていると思われます。最近では身体ではなく精神の障がいを持ったお子さん対象の訪問看護もあり、私の外来に通院しているお子さんも利用している方が増えています。自宅において個別でできることから他人の目を意識せずに自分のペースで自由に話せることも訪問看護のいい点なのかもしれません。慣れてきたら小規模の病院などに出向いて徐々に外でもPTができるようチャレンジしてもいいでしょう。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。