【サッカーが変わる⁉︎】今夏のルール改正でキーパーのプレーに変更が!これから試合はどうなる?知ればますますサッカーが楽しめる!
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「今夏のルール改正でサッカーが変わる!?」。先生役は静岡新聞の寺田拓馬運動部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」2025年5月8日放送)
(寺田)今日はサッカーの話です。世界的に人気が高いサッカーですが、この夏に、大きなルール改正があるって知ってます?
(山田)知らないです!
(寺田)キーパーのプレーに関しての改正です。今はサッカーの試合中にキーパーがペナルティーエリアの中でボールを持った場合、6秒間まで手や腕で保持していいってことになっているんですよ。これが、8秒以内になるんですよ。
(山田)増えるんだ!もうちょっとボール持っていても良くなるんだ。
(寺田)「なんだ、2秒長くなるだけじゃん」って思うかもしれませんが、これ、もう少し続きがありまして。今までのルールでは、6秒過ぎて反則を取られると、その地点から相手の間接フリーキックでプレー再開になったんです。
(山田)よくありますよね、ゴールの目の前で、ゴールポストまで壁のように埋め尽くして…みたいなね。
(寺田)まさにペナルティエリアの中ですよね。即、決定的なピンチになってしまうんですよ。審判だったら、この反則で笛を吹くのって勇気が入りますよね。
(山田)確かに。
(寺田)キーパーがボールを持つ時間が長すぎた場合の反則は、このようにルールとして明文化されてたんですが、審判からすると取りづらかったんですね。私が知ってる限りで、取材現場で見たのは1回ぐらいしかないんです。
「ちょっとボールを長く持ちすぎたっていうだけなのに、反則の内容に対して罰則が重すぎる」って声もあったんですよ。だから、リードしているチームのゴールキーパーが、試合の終盤に、正面に来た何でもないボールをキャッチした後、その前に倒れ込んだりしてしばらく立ち上がらず時間を使うシーンって、今は日常的にありますよね。
(山田)見たことあります。
(寺田)これ、明らかに6秒以上持っていても、ルール上反則なのに審判が反則ってジャッジできずにいたんですよ。それが、今度のルール改正では、8秒間を厳格に判定して、主審が5秒前から片手を上げて、ピッチクロックみたいにカウントするんです。
(山田)バスケみたい!
(寺田)そうですね。バスケでも24秒ルールがありますが、同じような感じでカウントしてくんですよ。審判が手を上げたらあと5秒だよっていうことで、指を折っていくんです。そして、反則となった場合は、コーナーキックでプレーを再開することになります。コーナーキックなら、ペナルティーエリアの中の間接フリーキックよりも審判も決断しやすくなりますよね。反則に対する罰則の公平感も得られるっていうふうに考えたわけなんですよ。
1992年の改正と同じぐらいのインパクト!
(寺田)今回のルール改正は、バックパスのルール変更と同じぐらいのインパクトがあるんじゃないかって言われてるんですけど、門努さん、バックパスのルール変更前のサッカーって知ってます?
今のサッカーでは、ディフェンダーがゴールキーパーにバックパスを出して、それをゴールキーパーが手でつかんではダメなんですよ。昔はよかったんです。このルール改正があったのは1992年なんですよ。
(山田)そうなんだ。
(寺田)30年ちょっと前のことですね。改正する前は、勝っているチームのディフェンダーはキーパーにボールを戻して、キーパーが手で拾って時間を稼ぐことができたんです。私もね、高校生の頃までは授業や遊びでサッカーをやる時に、当然のようにゴールキーパーへのバックパスを使っていました。
時間稼ぎじゃなくても、ディフェンダーは、相手選手がプレッシャーをかけてきたら、キーパーに簡単に返せばよかったんですよ。それで、ボールキャッチしたキーパーがまたディフェンダーにボールを渡して、ディフェンダーとキーパーでパス交換を繰り返したらずっとボールを保持できたんです。
(山田)今じゃ、ありえないですよね。
(寺田)そうですね。このゴールキーパーへのバックパスができなくなって、ディフェンダーはもちろん、ゴールキーパーも足元の技術が持てるようになったということです。
現在のサッカーだと、相手のディフェンダーにプレッシャーをかけてボールを奪って、ショートカウンターで得点っていうことも結構ありますよね。
逆にディフェンダーの方も安全なパスを出すだけじゃなくて、サッカー用語では「剥がす」っていうんですが、相手をかわすのも当たり前になってますよね。藤枝MYFCの須藤監督なんかは、「キーパーはフィールドプレーヤーのボランチだ」と言っていますからね。
現在のルールだと、ゴールキーパーが足でボールを使って相手選手をフェイントでかわし、攻撃の起点になるという場面もあるんですよ。
競技を面白くするために、ルールは変化する
(寺田)実は、今回の8秒ルールもバックパスの禁止のときと同じように、「サッカーの景色を変える」って言われています。
(山田)ほう。
(寺田)イメージしてみてください。キーパーがボールを手放すためには、そのボールを受ける位置に味方の選手が動いてくれないといけないですよね。もちろん、状況によってはゴールキーパーがアバウトに大きく前に蹴り出すこともあると思うんですが、普通は、味方がポジションを取ったり、裏へ動き出したりしてくれないと、キーパーは有効なパスが出せないですよね。
(山田)大きな声を出したり、手でジェスチャーしたりしますもんね。
(寺田)つまり、試合終盤で、疲れが溜まった状況になってもキーパーだけじゃなくて、フィールドプレーヤーも時間稼ぎができなくなって、動き続けないといけなくなるんですよ。
(山田)…これ、サッカー変わりますね。
(寺田)変わりますよ。ゴール前の間接フリーキックほどじゃないですが、コーナーキックだってピンチですからね。反則を取られたくないじゃないですか。
(山田)いや、本当にワンチャンありますもんね。
(寺田)そもそも、ゴールキーパーが手や腕の中にボールを持っているときって、相手チームからしたらボールを奪うチャンスがないですよね。その、何も起こらない止まった時間が短縮されるんですよ。終盤だけ出なく、試合全体としても、ゴールキーパーのパスから速攻で相手ゴールを狙うような戦術が増えるかもしれません。
(山田)単純に、ゴールキーパーが持っている時間が延びただけじゃないんだ。
(寺田)以前、スポーツにルールがあるのは何のためかという話をしたことがあります。ルールには大きく三つの目的があるんですね。一つは安全性。これは絶対です。それから公平性。今回のルール改正も、有名無実化していた反則を公平に判断できるようになるっていう効果があるんですよね。
そしてもう一つが、競技を面白くするため。これが重要なんですよ。今回のルール改正は、試合の最後まで選手が動き続け、ボールを奪い合って、何が起こるかわからないというサッカーの魅力を高めるために考えられています。
(山田)観戦に行って、後半のアディショナルタイムに入ったときに、「いやもう無理だって、帰ろうぜ」がなくなるんだ。
(寺田)最後までどうなるかわからないんですよ。サッカーに限らず、スポーツのルールって必ず守らないといけないんですが、競技を面白くするために実は常に変化しています。
7月から全世界的に施行
(寺田)この新しい「8秒ルール」は、国際サッカー評議会では3月に条文が完成しています。7月1日から全世界的に施行されるんです。
(山田)そうなんですね。
(寺田)日本だけではなく世界的なんですが、評議会では適切なタイミングで始めるということになっています。Jリーグはもうリーグが始まっているので、おそらく7月の中断期のときになると思います。でも、今お話ししたように、2カ月後にはサッカーの景色は大きく変わってるかもしれない。
(山田)見る側は楽しみですけど、やる側はどうなんだろう?っていうね。
(寺田)そうですね。大きなルール改正なので、選手がすぐ切り替えて対応できるかというと急には無理なので、おそらく、各チーム対策を練ってるはずなんですよ。だから、Jリーグの試合を見に行く方は、キーパーからのプレーに注目してみると面白いと思います。もう既にちょっと変化が起きているかもしれません。
(山田)ただ単に秒数が2秒延びるだけじゃないっていうことですね。皆さん、サッカーが変わりますよ。今日の勉強はこれでおしまい!