「俺たちの仕事と似てる」大竹まことが考える小説家との類似点に作家も関心「なるほど」
お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜13:00~15:30) 2月17日の放送は、ちくまプリマー新書から発売中の『読まれる覚悟』を著した、小説家の桜庭一樹氏を招き、本の内容について伺った。
大竹「桜庭さんは、ライトノベルからご本をお書きになって、確か5冊目ぐらいで直木賞をお取りになったんですよね」
桜庭「そうですね。大人向けの本を書くように変わって、そこから5冊目ぐらいかな?直木賞をいただきました」
大竹「最初は、たくさん読んで欲しいという思いと、読まれるとどうなるんだという思いが交錯したとお書きになってますね」
桜庭「本を書くとき、想定する読者は自分の脳内で考えた読者なので、自分が思った通りに読んでくれて、褒めてくれたり面白がってくれると想像していたんですけど、現実の読者は自分と違う人なので、思いもかけない読み方をされるので、それで感動することもあります。めちゃくちゃ深読みで、これいいなと思うこともあるし。その人の人生が投影されるから、「この人の人生はこうだから、こんな風に呼んでくれたんだ」と思うと、その人と対話したような気にもなるし、嬉しい時もあれば、ちょっとびっくりするぐらい違うときもある」
阿佐ヶ谷姉妹(笑)
大竹「ただ、最初の売れてない頃は、読まれたいと思っていた」
桜庭「そうですよ。読まれたい、仕事が欲しい、本が出したい、どこかに出たい、名前だけでも覚えていて。(笑)4年ぐらい全然売れなかったので、まず本を出したい。出したら、一冊でも読んでもらいたい。本屋さんで見てるけど誰一人手に取らない。で、お母さんの感想しか聞かない」
大竹「自分のお母さん?」
桜庭「お母さんの辛口批評しかない(笑)とか、そんな感じですね。それだとまず、読まれたい。どんな読まれ方でも読まれたい。本を出したのに消えたみたいな時期が4年ぐらいあったんですよ」
大竹「なんかでもあれだよね。俺たちの仕事とちょっと似てるよね。知られたいっていうのと、分かってほしいっていうのと」
阿佐ヶ谷姉妹・江里子「そうですね」
大竹「ただ、本当のことを分かっちゃうとダメになっちゃう。言ってること分かります?分からないのは魅力じゃないですか」
桜庭「あ~、うん、分かります」
大竹「だから、分かられると消費ってことなんですわ。全部わかっちゃうと、飽きられるってことなんですよ。だから、消費されないぐらいの度量を持ってる人が「この人は、いつまでたっても不思議な人だな」と思われるというか、そういうのをどこかでお持ちになってるんですよね」
桜庭「分かります。なんか全部書ききらないのが小説でもあるから。自分の中にテーマがあるんだけれども、それをどれぐらい出すかのコントロールもあって、出し切らないのもあって、多様な読み方をされるんだと思う。全部、言い切っちゃったら一つの答えしかないから、みんな同じように受け取るんですけど、そうではない「謎」として提示する、「問」としておくから、みんながいろんな答え方をするので、それが多様な読まれ方なので。今回の本のタイトルは『読まれる覚悟』なんですけど、言い切らないことによって多様に読まれることを覚悟するのが作家だということなんだろうって今思いました」
大竹「ああ、今思ったの!?」
桜庭「大竹さんのお話が深かったので今思ったんです。なるほどなあ」