アジア初の大回顧展となる「ヒルマ・アフ・クリント展」が6月15日まで、竹橋『東京国立近代美術館』で開催中
ニューヨークの『グッゲンハイム美術館』で同館史上最多の60万人以上を動員した、世界が注目する抽象絵画の先駆者ヒルマ・アフ・クリント(1862-1944)。その画業の全容を明らかにする「ヒルマ・アフ・クリント展」が2025年6月15日(日)まで、東京都千代田区の『東京国立近代美術館』で開催されている。
再評価が進むヒルマ・アフ・クリントの作品が満を持して初来日
20世紀初頭、ワシリー・カンディンスキーやピート・モンドリアンといった同時代のアーティストに先駆け、抽象絵画を創案した画家として、近年再評価が高まるヒルマ・アフ・クリント。19世紀後半スウェーデンに生まれた彼女は、王立芸術アカデミーで正統的な美術教育を受けた後、画家としてのキャリアをスタートさせた。
一方で神秘主義などの秘教思想やスピリチュアリズムに傾倒し、交霊術の体験などを通して、アカデミックな絵画とはまったく異なる抽象表現を生み出していく。その中で1906年から1915年にかけて描き上げられたのが「神殿のための絵画」と呼ばれる全193点の抽象絵画である。それらは自身が構想した神殿を飾るためのものだったという。その後、81歳で死去するまで制作を続けたものの、作品はほとんど展示されることなく手元に残されたという。
潮目が変わったのは21世紀に入ってから。2013年に『ストックホルム近代美術館』からスタートしたヨーロッパ巡回の回顧展でその全貌が明らかになり、100 万人以上の動員を記録。また2018年にニューヨークの『グッゲンハイム美術館』で開催された回顧展では、同館史上最大となる60万人以上の動員を記録。ヒルマ・アフ・クリントは未知の画家として世界に驚きをもって迎えられる。それ以降、世界各地で大規模な展覧会が開催され続けている。
本展の広報担当者は「見どころはアフ・クリントの代表的な作品群「神殿のための絵画」の中でも、特に巨大なサイズで描かれた〈10の最大物〉です。高さ3mを超える画面からあふれ出てくるようなパステルカラーの色彩と、多様な抽象的形象。そして、その圧倒的なスケール感は、まるで異空間を漂っているかのような、唯一無二の体験をもたらします」と語ってくれた。
アジア初の回顧展で初来日となる140点が展覧
本展は代表的作品群「神殿のための絵画」を中心に、彼女が残したスケッチやノートなどの資料、同時代の秘教思想・自然科学・社会思想・女性運動といった多様な制作の源の紹介を交えて、その画業の全容に迫るもの。
特にハイライトとなる「神殿のための絵画」のなかでも巨大サイズで描かれた〈10の最大物〉(1907年)は、幼年期・青年期・成人期・老年期と人生の4つの段階を描いた10点組の大作。身を包み込むような圧倒的なスケールで観る者を引き込んでいく。
彼女の内面世界にふれることができる、圧巻の内容となっている。
開催概要
「ヒルマ・アフ・クリント展」
開催期間:2025年3月4日(火)~6月15日(日)
開催時間:10:00~17:00(金・土は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし3月31日、5月5日は開館)、5月7日(水)
会場:東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)
アクセス:地下鉄東西線竹橋駅から徒歩3分
入場料: 一般2300円、大学生1200円、高校生700円 ※当日に限り所蔵作品展「MOMAT コレクション」も観覧可。
※中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://art.nikkei.com/hilmaafklint/
取材・文=前田真紀 画像提供=ヒルマ・アフ・クリント展
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。