夕張に続く財政再生団体転落の可能性 名張市が5年間の財政計画公表
危機回避へ「大改革宣言」
三重県名張市は11月20日、2025年度から5年間の中期財政計画を公表した。今後の財政状況の悪化を予測しており、現状の財政運営を続けると28年度には北海道夕張市に続く「財政再生団体」に転落する可能性もあるとしている。市は新たに「行財政改革プラン」などを打ち出し、危機回避に取り組む。
中期財政計画では、高齢化による社会保障費の増加や老朽化した公共施設の維持更新費の増加、人件費の上昇、物価高騰などの影響で、24年度から29年度の間に毎年約5・6億円から約21・7億円の収支が不足すると試算した。23年度決算時点で残高が21・6億円だった市の貯金「財政調整基金」は、取り崩しが続いて26年度には枯渇し、28年度には累積赤字が約51億円、実質赤字比率は30・2%となり、20%の基準を超えて財政再生団体に陥ると予想する。企業の倒産に例えられる財政再生団体は、全国で夕張市だけが指定されている。
主な財政指標の推移を見ると、人件費や社会保障費といった固定的な支出が占める割合を示す「経常収支比率」は23年度が100%だったが、29年度には113・3%まで上昇。財政規模に対する負債の大きさを示す「将来負担比率」は23年度が130・5%だったが、29年度には174・3%まで上昇すると見込む。
財政破綻を回避するため、市は今後5年間の財政運営の方向性として▼当初予算での新規事業などは原則認めない▼投資事業は緊急性や重要度、財源措置、利用状況などを踏まえて優先順位を付ける▼市単独の補助金などの見直し検討を行うことなどを示した。
行財政改革プランでは▼公共施設などの使用料や手数料の見直し▼国や県の補助金メニューの最大活用▼市の未利用資産の売却や有効活用▼ふるさと納税の拡充▼新たなネーミングライツの導入などの歳入確保とともに、時間外勤務の抑制やデジタル化による業務効率化などの歳出抑制を掲げる。更に5年間の集中的な危機回避の取り組みとして、総人件費の抑制や不要不急な事業の休止・廃止や見送りなどを挙げる。
この日の市議会全員協議会で、北川裕之市長は「もはや経費の節減や事業の先延ばしでは十分に解消できず、この時期を逃すと市の財政を立て直すことが困難になる」と危機的状況を訴えた。
同市は2002年から続けていた「財政非常事態宣言」を22年3月に解除していたが、この状況を受けて新たに「なばり新時代の大改革宣言」を発出。市民に対し、改革への理解と協力を求めている。