本番前に緊張するのはどうして?
ふらっと こども電話相談室
2024年7月17日放送
TBSラジオで長年親しまれた名物企画「全国こども電話相談室」(1964年~2008年)のコンセプトを受け継いだコーナーです。パンサーの向井慧が「電話のおにいさん」となって、毎回、様々な質問に合わせた頼もしい先生をお呼びしています。今回の質問は・・・
Q. 本番前に緊張するのはどうしてですか?(宇一郎くん 13歳)
(回答した先生)早坂信哉さん/東京都市大学教授、医師
向井おにいさん:もしもし、こんにちは。お名前と年齢を教えてください。
― 井上宇一郎です。13歳です。
向井おにいさん:宇一郎くんは今度、ミュージカルに出演するんですよね。昔から演じたりすることを仕事にしたいと思っていたんですか?
― バレエをやってて、プロになろうと思ってました。
向井おにいさん:ほう、なるほど。宇一郎くんの聞きたいことはなんでしょうか?
― 本番前に緊張するのはどうしてですか?
向井おにいさん:やっぱり宇一郎くんは緊張するほうですか?
― あんまりしないほうではあるんですけど、たまにコンクール前とか、すごく大きい舞台があったときは結構、緊張します。
早坂先生:宇一郎くん、こんにちは。今日は質問いただきありがとうございました。おそらく先生よりも宇一郎くんのほうが緊張する場面をいっぱいクリアしてるんじゃないかなと思うんですけど(笑)。でも今日は宇一郎くんのほかにもいろんなお友だちも聞いていると思いますので、少し説明しておきたいと思います。緊張っていうのは、宇一郎くんはどんな感じになるんでしょうかね?
― やっぱり、失敗しないでできるかなみたいな心配事が結構、あります。
早坂先生:そうですよね。そもそも緊張というのは、人の体の中にある自律神経っていうものが関わっているんです。宇一郎くんは自律神経って聞いたことあります?
― はい。
早坂先生:ありますか、よかったです。自律神経というのは、交感神経と副交感神経というふたつの神経がシーソーみたいにバランスがとれているようなものなんです。交感神経とか副交感神経って聞いたことはありますか?
― 副交感神経は聞いたことあります。
早坂先生:おー、あります? どんなふうに聞いたことがあります?
― あの、少し忘れちゃいました(笑)。
早坂先生:忘れちゃいましたか(笑)。交感神経と副交感神経はちょうど反対の働きをするんですね。交感神経は、非常事態になったときに戦ったり逃げたりするための神経。車で例えるとアクセルになるような神経のことです。副交感神経はリラックスの神経。車でいうとブレーキにあたる神経。緊張というのはこのふたつの神経のうち交感神経、アクセルに相当する神経のほうが興奮した状態のことをいうんです。自律神経がどうして人間の体に備わっているのかというと、今は人間はとても安全なところに住んでいますけど、大昔はすぐ猛獣に襲われるような野生の中に住んでいたわけですよね。
― はい。
早坂先生:そうすると、猛獣から身を守るためには戦うか逃げるか、体を準備しきゃならないということになりますよね。舞台の本番は別に猛獣に襲われるわけじゃないんですけど、ある意味同じですよね。
向井おにいさん:戦うぞっていう気持ちですもんね。
早坂先生:本当に宇一郎くんにとっては戦いの場なのかな。
― はい!
早坂先生:そうですよね。いい返事をしていただきました(笑)。うまくいくのかなとか失敗したらどうしようっていう不安が宇一郎くんのレベルになってもきっとあるんだろうなと思いますけども、そうすると交感神経のスイッチが入って、体が緊張してくるんです。ここまでの仕組みはわかったかな?
― だいたいわかりました。
早坂先生:ありがとうございます(笑)。
向井おにいさん:宇一郎くんは緊張をほぐす方法ってあるんですか?
― 舞台の前に出て、一回、舞台を見つめてみて、ちょっと落ち着きます。
早坂先生:なるほど。リハーサルみたいな形で頭の中でやるっていうことなんですかね。
― なんかその世界に入り込む準備をするみたいな。
向井おにいさん:やっぱり場所を知っておくっていうのは落ち着くためのひとつの行動ですよね。
早坂先生:大事ですよね。すごくいいやり方で、これを聞いているお友だちもすごく参考になるんじゃないかなと思います。試験会場を事前に見ておくとか、そういうのはとても大事な方法かなと思います。あと、それ以外にリラックスする方法としては、深呼吸ですよね。これをよくやる方も多いと思いますけども、おなかを膨らませたりへこませたりするような深呼吸ですね。
向井おにいさん:先生のさっきのお話では、緊張するっていう状態は交感神経が非常に活発に働いているということですけど、となるとやっぱり副交感神経を動かさなければいけないってことになりますよね?
早坂先生:そうです、少し動かしてあげたほうがいいということですね。
向井おにいさん:腹式呼吸をするとなんで副交感神経が活発になるんですか?
早坂先生:ゆっくり深呼吸をすることは結構、自律神経に影響するんです。呼吸が浅くなってくると息が苦しくなってきて、実はそれって交感神経に働くというか、スイッチが入っちゃうんです。逆に、ゆっくり腹式呼吸をすることによって副交感神経のスイッチを入れることができる。そういう体の仕組みになっているんです。ちなみに向井さんはどういう方法をやっていらっしゃるんですか?
向井おにいさん:ぼくは緊張したとき、地に足をつけるっていう言葉がある通り、舞台に出る前に足に力を入れます。緊張している状態のときってふわふわしちゃって、なんかパフォーマンスが思ったようにできないことが多いので。
早坂先生:なるほど、なるほど。
向井おにいさん:ちなみに宇一郎くんはどうですか、今日の電話は緊張してました?
― あ、少し緊張してました(笑)。
向井おにいさん:少し緊張してましたか(笑)。
(回答者プロフィール)早坂信哉さん。東京都市大学教授で医師。体や心の健康について長年研究しています。「おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術 」(山と渓谷社)、「最高の入浴法 お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案」(大和書房)などの著書があります。