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【佐野美術館で「今森光彦の地球昆虫紀行」展。インドネシアの「ホタルの大木」、オーストラリアの高さ2メートル超のアリ塚。命をつなぐ必死の所業/三島市】

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は三島市の佐野美術館で6月29日まで開かれている写真展「今森光彦の地球昆虫紀行」を題材に。

1994年度の第20回木村伊兵衛写真賞、2008年の第28回土門拳賞を受賞した写真家今森光彦さんは、故郷滋賀県の琵琶湖を望む田園にアトリエを構え、「里山」に身を置きながら世界各国の昆虫や自然環境を撮影してきた。今回展は地球を俯瞰する形で、エリアごとに特徴的な昆虫の写真を展示している。

今森さんはアジア、アフリカ、オセアニア、南アメリカの森林、砂漠地帯、河川の奥へ奥へと来場者をいざなう。樹木の緑が、砂地の茶色が濃く見える。昆虫たちの姿は、我々が目にしたことがないようなものが多い。

今森さんはまた、日本の「里山」に生きる昆虫たちの表情も紹介する。私たちの生活圏が世界各国と地続きであることを意識させる構成になっている。展示スペースを抜けると、今森さんの地元での里山活動の実践記録がパネルで紹介されていて、作品と行動がこれまた地続きであることがはっきり分かる。写真家、アクティビストとしての顔つきが変わらないのは、自分の積み重ねに対する強固な信頼があるからではないか。

各作品の昆虫たちについて言えば、私たちの手元にある物差しでは測りきれない事象に驚くことばかりだ。インドネシアの大木に明滅する無数のホタルの光、900グラムほどあるという「糞ボール」を後ろ足で転がすケニアのスカラベ、オーストラリアのサバンナに屹立する、王宮を思わせる高さ2.5メートルのアリ塚…。「規格外」という言葉が浮かぶ。

だが、そのどれもが人間にとってみればごく小さな昆虫による、命をつなぐための必死の所業なのだ。「一分の魂」が寄り集まり巨大化したそのありさまは、人間の手が及ばない「自然の摂理」の底知れなさを明快に視覚化している。

(は)

<DATA>
■佐野美術館 写真展「今森光彦の地球昆虫紀行」
住所:三島市中田町1-43 
開館:午前10時~午後5時(木曜休館)
観覧料(当日):一般・大学生1300円、小中学生と高校生650円
※土曜日は小中学生無料
会期:6月29日(日)まで

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