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あなたの食卓から魚が消える未来<2048年問題> 原因は大きく3つ!自然・資源を守る対策は?

サカナト

サンゴの白化現象(提供:PhotoAC)

ある日、食卓から魚が消える……。そんな未来が来るかもしれないと聞いたら、あなたはどう感じますか?

日本でも有数の漁獲量を誇る長崎県・五島列島に住む私にとって、「魚が食べられなくなる日が来る」なんて、とても信じられない話でした。

しかし、実際に世界中で魚の数は減少しており、WWF(環境保全団体)のレポートによると、海の生物はこの50年間で半分以下まで数を減らしているのだそうです。

また、2006年には「2048年までに天然の魚介類が壊滅する」という論文がアメリカの科学専門誌『サイエンス』に掲載。この論文に関しては、データ解析の方法などについて反論する論文が出されるなど、その現実性には懐疑的な面もあったようですが、「2048年問題」として世界中で話題になりました。

ではなぜ、ここまで海の魚たちは急激に数を減らしているのでしょうか?

「2048年問題」が起こりうるとして、それを引き起こしている原因は大きく3つあるのです。

地球温暖化の影響

ひとつ目の原因は「地球温暖化」。

産業革命(1760年~1840年)から現在にかけて、世界の平均気温は1.5℃も上昇しています。この気温の上昇は、海の生き物たちにとって非常に深刻です。

サンゴ礁(提供:PhotoAC)

そして、1.5℃の上昇で魚の減少率は2~3倍に急増し、上昇が2℃に達するとサンゴが99%消滅するというのです。

さらに、寒い時期は動きの大人しい生きものたちも、1年中活発に動けるようになります。すると、植物性が強い魚が1年中海藻を食べることで、藻場が減ってしまう「磯焼け」を引き起こし、魚たちの減少に拍車をかけています。

サンゴや藻場がなくなってしまうということは、そこに暮らしている多くの生き物たちもいなくなってしまいます。

人口増加による魚の乱獲

2025年現在の世界の人口は約82億人、2048年には93億人を突破すると予想され、さらに漁業設備の進歩も相まって「魚のとりすぎ」が深刻化しています。

FAO(国連食糧農業機関)のレポート”FAO Report: Global fisheries and aquaculture production reaches a new record high“によると、世界の水生動物性食品の一人当たり消費量は、1961年の9.1kgから2022年には20.7kgと2倍以上に増加しています。

水揚げされたコノシロ(提供:PhotoAC)

世界で消費される水生動物のうち、約51%は養殖によるもの、つまり市場に出回る魚介類の半分以上が養殖で育てられていることになります。

このことから、将来も私たちの食卓に魚が並ぶためには、養殖業の発展が重要であることがわかります。しかし同時に、養殖場の造成による環境破壊や餌となる小魚の乱獲など、養殖にも多くの課題が潜んでいます。

深刻な海洋汚染

人間の技術の発展に比例するように深刻化しているのが「海洋汚染」です。

特に「プラスチックゴミ」での汚染がひどく、世界では年間800万トン(ジャンボジェット2万3000機分)が海に流されており、2050年にはプラスチックの重量が魚の重量を超えると言われているほどです。

海洋漂着ゴミ(提供:PhotoAC)

このような人間の海洋汚染によって、毎年世界では10万匹以上の海洋生物がプラスチックの誤嚥により命を落とし、海鳥にいたっては生涯でプラスチックを摂取してしまう個体が90%以上も存在するそうです。

どれだけ人間の身勝手が海の生物たちに悪影響を与えているか、よく分かると思います。

世界における取り組みは?

持続可能な漁業で獲られた水産物であることを証明する国際的な認証制度「MSC認証(サステナブル・シーフード)」の導入のほか、調査に基づいた漁獲量の管理、漁期や漁場の規制、海洋保護区の定め、科学やAIを使ったデータ採取など、世界中で持続可能な漁業への様々な取り組みが開始されています。

現在では、日本でも持続可能な漁業に関する様々な取り組みが開始されています。2020年〜2021年には「改正漁業法」「水産流通適正化法」の2つの法案が成立しました。

「改正漁業法」は漁業者から提供された漁獲・水揚げ量などをもとに、漁獲枠の上限を決めるなどの「管理漁業」にシフトする法案です。科学的な根拠をもとに、資源管理の目標を定め、効果的な資源量管理措置を実施します。これにより、乱獲や未成魚の漁獲に対する規制や違法漁業の取り締まりを強化します。

「水産流通適正化法」の目的は違法漁獲物を市場から排除すること。違法漁獲物が蔓延してしまうと、魚が繁殖する前に過剰に獲られてしまったり、正規の漁業者が価格競争で不利になり漁業を続けられなくなったりと、日本の漁業に大きな悪影響を及ぼしてしまいます。

そのため、国内漁獲物のトレーサビリティー(どこで獲られた魚か追跡できる)や国外からの違法漁獲物の流入防止が鍵となります。

これらの取り組みはどれも「魚が自然に再生産するスピードを上回って獲り過ぎない」ことを目標にしています。

持続可能な漁業への取り組みで魚資源は回復するのか

2025年現在、FAO(国際連合食糧農業機関)によると、持続可能な漁業への取り組み管理が上手くいっている地域では、魚資源が確実に回復しているといいます。

実際に、北東太平洋や南西太平洋、南極海では85%〜100%の魚の群れが健康な状態に保たれており、さらにこの海で獲れる魚の約96%〜100%が持続可能な資源であることと判明した調査結果もあるようです。

はたして、「2048年問題」で予想された最悪の結末からいい方向へと変わっていくのでしょうか。

今の私たちにできること

魚が減少しつつある現状を少しでも改善するために、私たちは何をすべきなのでしょうか?

一般市民でもできるのは、ゴミのポイ捨てしない、ゴミの分別をするのはもちろんのこと、昨今、世界で推進されているMSC認証を受けた水産物を選ぶことです。

MSC認証は、「この魚は、自然の海を壊さない方法で獲られました」ということを証明しているもの。たとえば、魚が増えるスピードをこえるほど獲りすぎないといったルールを守っていたり、海の生きものたちの暮らしを邪魔しないように漁をしていたりするなど地球や海にやさしい漁業にだけ与えられます。

みんながMSC認証の水産物を選ぶことで、いつまでも美味しい魚を食べ続けることのできる未来を守れるかもしれません。

(サカナトライター:ティガ)

参考文献

ELEMINIST-直近1年間の世界平均気温が史上最高 1.5℃を上回る

WWF-世界の海から、魚たちが消える日|私たちができることはあるか?

Marine Stewardship Council-MSC「海のエコラベル」とは

日本財団-海のおいしい魚を守るため「サステナブル・シーフード」を食べよう!

Food and Agriculture Organization-FAO releases the most detailed global assessment of marine fish stocks to date

Social Act Career-持続可能な漁業とは?海と魚の今と日本の取り組み

国際農研-1046. 2024年 世界漁業・養殖業白書

水産庁-特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律

水産庁-沿岸漁業者の皆様へ ~新しい資源管理の話~

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