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【なぜ】荷物は置き去り すぐそこにクマ…毎年10万人が訪れる、人気の山に迫る危機/北海道・大雪山国立公園

Sitakke

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雄大な自然が魅力の、北海道の『大雪山国立公園』。

多くの人に親しまれる一方で、クマとの事故の危険を高める事態が起きています。

連載「クマさん、ここまでよ」

置き去りの荷物

“北海道の屋根”と呼ばれ、国内最大級の面積を誇る『大雪山国立公園』。
毎年10万人近くの人が訪れる人気の山です。

ある登山者が見せてくれたのは、白雲岳に現れたクマの写真です。

大雪山系には多くのクマが生息していますが、人を見ても逃げない“人慣れ”したクマが問題となっています。

白雲岳の分岐点。避難小屋に行くか、白雲岳の山頂に向かうかという地点です。
そこには、ザックが放置されていました。

目的の山に早く登りたい…そんな思いから、荷物を置いていく登山者が多いといいます。

クマが荷物の中の食料を食べてしまうと、「人の持ちものは、おいしい」と学習し、人に付きまとう危険性が高まります。

環境省 大雪山国立公園管理事務所のアクティブ・レンジャー、村岡龍岳さんは、「人やものに対して執着してしまうと、大きな事故につながりかねないので、こういったことは控えてもらうよう、環境省として周知していきたい」と話します。

荷物を置いていた登山者が戻ってきました。

村岡さんが「白雲岳山頂まで行ったか」と声をかけると、登山者は「いや途中で…。クマがいました」と答えました。
環境省のスタッフが、「デポ(荷物を放置)すると、クマにちょっかいかけられると思う。この辺、クマが多い」と注意。登山者は謝罪していました。

クマに近づく人

白雲岳避難小屋の管理人・田村萌さんは、テント場で、「雪渓の下に水たまりがあるが、横の斜面から現れたり…」と指さします。
ここ数年、子連れなど複数のクマが出没。そのクマを撮影しようと、近づく登山者がいることも問題になっています。

北海道山岳整備の岡崎哲三代表は、「ヒグマが、テント場のすぐ脇の草地を食べに来た。親子クマだった。10人ぐらいの登山者がロープの際に、ずっと並んで写真を撮る。管理人が『できるだけ離れてくれ』と、さんざん声かけしても、登山者は全く動かない」と話します。

国立公園などの特別地域では、野生動物への餌やりや著しく接近することなどは、自然公園法で規制されています。

岡崎代表は、「これからエサやりや接近がどんどん積み重なってきたときに、ふとした拍子に、大きな事故が起きる可能性がある」と危惧しています。

この日も、避難小屋から400メートル先で歩く1頭のクマが…。このときは、登山者が遠くから見守っていました。

避難小屋からクマの姿が見えた。数人の登山者で距離をとって見守った

大自然や野生動物と、いかに共存していくか。それは、人間側の自覚にかかっています。

登山の際は、以下のような対策が呼びかけられています。
・ビジターセンターなどで出没情報確認
・「人慣れクマ」出没なら計画変更を
・クマよけ鈴・スプレーの携帯を

山に入るときのクマ対策について、この連載と連動するサイト「クマここ」で、専門家の監修のもとご紹介しているポイントをもう少しくわしくお伝えします。


山に入るときは…気を付けるべきポイント

クマは積極的に人を襲う動物ではありませんが、お互いに笹やぶに姿が隠れてしまっていて気づかないうちに出会ってしまい、びっくりした場合などは、身を守るために攻撃してくることがあります。
そうなると、命にもかかわります。

なので、まずは「出会わないことが一番です。
ばったり出会わないように、「人がいるよ、来ないでね」とアピールするのが大切です。

ルール①音を出す

いざというときに備えて、クマスプレーはカバンの中にしまったりせず、腰につけるなどすぐに使えるようにしておきましょう

クマ鈴をつけたり、声を出したり、ラジオを流したり、クマと近づく前に音で人の存在を知らせておきます。
ただ、鈴や笛を持っていても、クマと会ってけがをした人もいます。

ちゃんと音が鳴るか?ラジオの電池は切れていないか?
山菜採りなどに夢中になって、声や音を出すのを忘れていないか?
車に忘れたり、カバンの中にしまい込んだりしていないか?

「音が鳴るものを持つ」だけでなく、「音を出すをルールとして覚えておきましょう。

ルール②ひとりで行動しない

ひとりよりも、複数人で行動するほうが、クマとお互いの存在に気づきやすくなり、ばったり出会って事故にあうリスクを下げられます。

もし出会って事故になってしまった際も、助けを呼ぶなどして、命まで失うリスクは下げることができます。

ルール③「意識」と「知識」を持つ

自分だけは大丈夫…と思わずに、「いつクマに会ってもおかしくないという意識」を持つことも大切です。

クマの痕跡に敏感で、新しいものを見つけたらすぐに引き返すなど、クマに出会わないために「緊張感」を持っておきましょう。

ヒグマが生息するほどの雄大な自然が、『大雪山国立公園』の魅力。マナーを守って登山を楽しんできた多くの人たちによって、クマと人の距離が保たれ、事故を防いできました。
その価値を、たった一人の不注意が、崩してしまうかもしれません。

北海道の自然を安全に楽しみ、この先も価値を守っていくためのマナーを、今一度見直しましょう。

連載「クマさん、ここまでよ」
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。

文:HBC報道部 山﨑裕侍
編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は取材時(2024年8月)の情報に基づきます。

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