山北町露木さん 米寿で夢の二人展 自作人形と亡夫の絵画で
山北町の人形作家・露木盛枝さん(88)による作品展「感謝の二人展〜亡き夫と私の和紙人形」が10月17日(木)まで町立生涯学習センターで開かれている。米寿を一つの節目に、その喜びとこれまで歩んで来られた感謝の思いを込め企画した、夫が遺した油絵との久々の合同展示。「夢でした」と感慨深げだ。
「生涯できる趣味を」と考え、65歳頃に始めた和紙人形。人形は割り箸や粘土を胴体の軸にして、それに和紙を着せるように重ねて作る。
山北町のまつりや伝統芸能などが自身の代表的なモチーフ。これを場面で表現し、独特の世界を作るのが露木流。1体1体に配役があり、1つのテーマに登場する人形は20〜30体に及ぶ。制作は主役クラスで数日かかりだが、「無心になれる時間で、とても幸せなの」と話す。これまで制作した人形は合計4500点を超えるという。
今回の展示は、およそ150点。歳を重ねる中で、よく思い出すようになったのは「囲炉裏を囲んで昔話を聞かせてくれたおばあちゃんや、母が縁側で聞かせてくれた昔話」だといい、それらを表現した作品を選んだ。
一緒に会場を彩るのは、亡き夫・康雄さんが描いた油絵15点だ。かつて創作活動の励みにもなっていた夫婦の二人展。自身の節目にもう一度やることにした。普段は自宅の2階に飾ってある夫の作品を大事そうに抱えながら「米寿の二人展は私の夢だったんですよ」と遠くを見つめる。
作品通し再会も
「露生まれ木々にひかりを頂ただいて盛りしげり行く枝だ々に感謝」――。米寿を迎えた日に遊びで作ったという短歌には、自身を支えてくれた周囲への感謝がにじむ。長年、保育園などに務めた露木さん。町内には、すっかり大人になった教え子たちがいっぱいだ。「作品展などで顔を合わすと、今後は私が気にかけてもらったりしてね。今回も出会えるかしら」とにこやか。
老いを忘れて
園の先生らしく、思いを歌や絵に表現して分かりやすく届けるのが得意だ。部屋にも絵手紙や書がたくさん飾られている。取材の最後、うさぎとかめの童謡に乗せて口ずさんだのは「老いを忘れてこれからは苦しみ喜び楽しんで趣味の炎が絶えぬよう楽しい楽しい人生を」――。
人形を通して人とのつながりが維持できる面もあるといい、それが作品づくりの原動力ともなってきた。作り続ける意欲に衰えは見えない。