世界最長寿の脊椎動物は大型のサメ? 脅威の寿命400年<ニシオンデンザメ>は時をおよぐサカナ
「400年近く生きる」と言われる魚がいることを知っていますか。
それが、北極海や北大西洋に生息する大型のサメであり、世界最長寿の脊椎動物として知られる「ニシオンデンザメ」。
眼球レンズの内部の核部分に含まれる放射性炭素から年代を推定するという研究では、少なくとも272年の寿命があるといわれ、推定では大きい個体であれば300~400年近く生きる可能性もあるようです。
ニシオンデンザメとは
ニシオンデンザメ Somniosus microcephalus は北極海や北大西洋に生息するサメで、深海を中心に幅広い水深帯で確認されています。
本種の泳ぐスピードは時速1キロほどと非常に遅く、“世界一のろい魚”とも呼ばれ、獲物は追いかけるのではなく、待ち伏せや漂流物の捕食によって生き延びていると言われています。
一方、胃の中からはタラやアザラシ、稀にホッキョクグマの骨まで見つることもあるとか。
ニシオンデンザメの長寿メカニズム
ニシオンデンザメが非常に長生きするのはなぜでしょうか。
1つの理由として、北極・深海という低温環境に棲み、代謝が極めて低い可能性が挙げられます。
さらに、2024年のゲノム解析や関連研究では、加齢に伴う代謝変化がほとんど見られなかったため、老化に対する耐性を持っていることが示されました。
このほかにも、ゲノム研究でDNA修復に関わる遺伝子の複製や独自の変異が見つかっており、長寿との関連がある可能性や、深海という特殊な環境で被捕食者も少なくストレスレベルが低い可能性などが挙げられています。
これらの要素が絡み合って、ニシオンデンザメは他の脊椎動物と比べ極めて長寿になりうると考えられているのです。
繁殖までに150年かかる
ニシオンデンザメの性成熟年齢は150年前後と推定されており、この非常に遅い成長速度も長寿の要因のひとつと言われています。
ただ、繁殖サイクルや妊娠期間など詳細な生殖生態はまだ不明な点が多く、研究途上のようです。
深海でゆっくり泳ぎ続けるサメ
ニシオンデンザメは、目にクラゲの一種である寄生性コペポーダが付着することでも知られています。この寄生虫は目球に張りつくため、白く濁ったような目になり、視力を低下させます。
暗い深海での生活において重要となる嗅覚や、振動感知を主な感覚器官として使い、彼らは低下した視力で数百年という時間の流れを泳ぎ続けています。暗闇で数百年を生きることは、果たして幸せなのでしょうか、それとも孤独なのでしょうか。
深海の静けさの中で、ゆっくりと泳ぎ続けているオンデンザメ。数百年を漂うその孤高の姿にロマンを感じ、私はこのサメに惹かれてしまうのです。
(サカナトライター:こやまゆう)
参考文献
Distribution and feeding ecology of the Greenland shark (Somniosus microcephalus) in Greenland waters
Greenland shark may live 400 years, smashing longevity record