【2024年版】長期優良住宅のメリット・デメリット|手続きも解説
長期優良住宅とは「長期にわたり良好な状態で安心して暮らせる高性能な家」であり、かつその性能が国の認定基準を満たしている住宅を指します。
しかし、昨今では建築技術が高まり、認定を受けなくても性能の高い家を建てることは可能です。そのため「認定を受けるメリットはあるのか」と迷う人も多いでしょう。
結論から述べると、認定を受けることでデメリットを上回るメリットを享受できます。ただし、デメリットも押さえておかないと、申請後に後悔するケースもあるでしょう。
この記事では長期優良住宅のメリットやデメリット、認定手続きについて、2024年現在の適用条件などをもとにくわしく解説します。長期優良住宅が気になる人は、最後までチェックしてみてください。
長期優良住宅とは|国の認定基準を満たす安心・快適な家
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用できるよう「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の認定基準を満たした住宅のことです。
この法律は、数世代にわたって住み続けられる丈夫な家の建設を促進することで、建て替えによる環境負荷の軽減を主な目的として、2009年に施行されました。また、普及のためにさまざまな優遇措置や補助金事業が展開されている点も注目ポイントです。
なお、令和4年度の調査によると、新築戸建ての着工戸数に対する長期優良住宅の割合は29.3%で、3年連続で増えています。
出典:長期優良住宅の認定状況について(令和5年3月末時点) 国土交通省
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅の認定基準(戸建て)は、以下の通りです。
・劣化対策
数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること
(劣化対策等級(構造躯体等)3かつ 構造の種類に応じた基準)
・耐震性
極めてまれに発生する地震に対し、継続して住むための改修の容易化を図るため、損傷レベルの低減を図ること
(品確法(住宅品質確保促進法)に定める免震建築物に該当、または住宅の構造などに応じて耐震等級1~3(倒壊等防止)に該当する必要がある)
・維持管理・更新の容易性
構造躯体に比べて耐用年数が短い内装や設備について、維持管理を容易に行うために必要な措置が講じられていること
(戸建ての場合、維持管理対策等級(専用配管)3)
・省エネルギー性
次世代省エネルギー基準に適合するために必要な断熱性能などを確保していること
(断熱等性能等級5、かつ 一次エネルギー消費量等級6)
・居住環境
良好な景観の形成や、地域おける居住環境の維持・向上に配慮されていること
・住戸面積
一戸建ては75平方メートル以上、少なくとも1つのフロアの床面積が40平方メートル以上あることが条件
・維持保全計画
定期的な点検、補修等に関する計画が策定されていること
・災害配慮
2022(令和4)年の法改正で追加された項目。災害リスクが特に高い地域では、所管行政庁が定めた措置を講じる必要がある。具体的な災害配慮の措置については、長期優良住宅の申請先である所管行政庁に確認すること。
共同住宅の場合は、上記8項目に加えて済む人のライフスタイルに合わせられる「可変性」と、高齢者への配慮として「バリアフリー性」が加わります。
なお、法律や認定基準は社会や経済の情勢や技術の発展に応じて見直し・改定が行われるため、鮮度の高い情報をチェックすることが大事です。
2022年版、2023年版の認定基準や改定のポイントについては、以下の記事を参考にしてください。
・2022年版
・2023年版
長期優良住宅とZEHの違いは?
長期優良住宅とZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)では、目的と重点を置く性能が違います。
長期優良住宅は、認定において建物の耐久性や耐震性、省エネ性、劣化対策などが総合的に評価されます。一方、ZEH住宅は省エネ性能に特化し、断熱性能の強化と高効率設備の導入によるエネルギー使用量や光熱費の削減効果が評価のポイントです。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを押さえて、家族のライフスタイルに合う性能を検討してみるとよいでしょう。
長期優良住宅の認定を受ける4つのメリット
昨今では一般住宅でも高い性能を備えた家を建てることが可能ですが、前述の基準を満たして長期優良住宅にすることでさまざまなメリットが得られます。
長期優良住宅の認定を受けるメリットについて、以下の4点を紹介します。
・税制上の優遇を受けられる・地震保険料の割引が受けられる・補助金を受けられる場合もある・住宅ローンの金利が優遇される
それぞれについて、くわしく押さえていきましょう。
家づくりとお金のアドバイザーによる長期優良住宅のメリット解説(2022年)もご覧ください。
>>長期優良住宅のメリットは?補助金制度や税制優遇についてプロが解説!
1.税制上の優遇を受けられる
長期優良住宅の認定を受けると、税制面で以下の5つの優遇を受けられます。
1-1.住宅ローン控除での優遇を受けられる1-2.投資型減税制度を活用できる1-3.不動産取得税が減税される1-4.登録免許税の税率が引き下げられる1-5.固定資産税の減税期間が延長される
それぞれについて解説します。
1-1.住宅ローン控除での優遇を受けられる
長期優良住宅の認定を受けると、住宅ローン控除においても優遇を受けられます。
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して家を取得した人の税負担を軽減する制度です。具体的には最大13年間、年末の住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除されます。
また、長期優良住宅の場合は対象となる住宅ローンの限度額が5,000万円と、一般住宅の3,000万円よりも高く設定されていることも押さえておくべきポイントです。
長期優良住宅にすると控除額はどのくらい変わる?くわしくはこちらの記事をチェックしてみてください。
>>長期優良住宅を建てる際、住宅ローン控除はどのくらい控除される?
1-2.投資型減税制度を活用できる
住宅ローンを活用せず自己資金で長期優良住宅を取得した場合は、投資型減税制度を活用できます。投資型減税の正式名称は「認定住宅等新築等特別税額控除」で、認定住宅を取得する際に税制優遇を受けられる制度です。
長期優良住宅の場合、掛かり増し費用の10%が所得税から控除されます。掛かり増し費用とは、長期優良住宅の性能強化のために支出した費用のことを指します。
限度額は650万で、最大控除額はその10%の65万円です。住宅ローン減税と異なり、1回のみの控除となります。
1-3.不動産取得税が減税される
長期優良住宅では、不動産を取得する際に課税される不動産取得税についても、一般住宅と比べて多く控除されます。課税標準からの控除額が、一般住宅では1200万円であるのに対し、長期優良住宅の場合は1300万円です。(適用期間:2026(令和8)年3月31日まで)
不動産取得税は「土地または建物の固定資産税評価額×税率」の計算式で求めることができます。
一般住宅の不動産所得税額 =(不動産の固定資産税評価額ー1,200万円)×3%
長期優良住宅の不動産所得税額=(不動産の固定資産税評価額ー1,300万円)×3%
たとえば評価額が同じ4,000万円の場合、不動産所得税は一般住宅で84万円、長期優良住宅で81万円となります。
なお、税率は4%ですが、2027(令和9)年3月31日までは特例として3%が適用されています。
出典:https://www.mlit.go.jp/page/content/001712685.pdf p6
1-4.登録免許税の税率が引き下げられる
長期優良住宅の認定を受けると、住宅を購入した際の登記にかかる登録免許税の税率も引き下げられます。
2027(令和9)年3月31日までに取得した場合に適用される税率は以下の通りです。
・保存登記 :0.1%(一般住宅の場合は0.15%)
・移転登記(一戸建て):0.2%(一般住宅の場合は0.3%)
たとえば住宅評価額が4,000万円の場合、保存登記にかかる登録免許税は一般住宅で6万円のところ、長期優良住宅では4万円となります。
1-5.固定資産税の減税期間が延長される
長期優良住宅の場合、新築住宅取得の際に固定資産税が2分の1に減税される期間が、一般住宅よりも延長されます。
具体的な延長期間は以下の通りです。
・一般住宅 :一戸建てで3年間、マンションで5年間
・長期優良住宅:一戸建てで5年間、マンションで7年間
住居面積などの条件については、手続き先の市町村役場などで情報を確認してください。
2.地震保険料の割引が受けられる
長期優良住宅は認定基準において「耐震等級2以上」を満たす場合、地震保険料の割引対象となります。
耐震等級2の割引率は30%、耐震等級3(最高等級)は50%、免震建築物の場合は50%です。
3.補助金を受けられる場合もある
長期優良住宅の性能が補助事業の要件を満たす場合、活用できる補助金の幅が広がったり、一般住宅よりも優遇されるケースもあります。
「地域型住宅グリーン化事業」は、採択された地域の中小工務店などが建てる長期優良住宅が補助対象となる事業です。2024年10月現在は募集を停止していますが、今後も同様の補助事業が行われる可能性もあるため、引き続き動向をチェックしてみるとよいでしょう。
参考:地域型住宅グリーン化事業
過去に実施された長期優良住宅の補助金例や申請の注意点はこちらの記事をご覧ください。
>>長期優良住宅の補助金3つ | 活用する際のポイントや優遇制度も解説
既存住宅を長期優良住宅にリフォームする際に活用できる補助金もあります。「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、すべての項目で認定基準に適合する「認定長期優良住宅型」だけでなく、劣化対策・耐震性・省エネ対策について適合基準を満たす「評価基準型」も補助対象です。
令和6年度事業については、事前採択タイプは受付終了、現在は通年採択タイプのみ申請受付中です。また、評価基準型も予算の上限に達したため、受付は締め切られています。既存住宅の長期優良住宅化を考えている人は、引き続きチェックしてみてください。
4.住宅ローンの金利が優遇される
長期優良住宅を建てる際に長期固定金利の住宅ローン「フラット35」を利用する場合、一般住宅よりも金利が引き下げられます。
また、「フラット35S」も適用できれば、一定期間、さらに金利を下げることが可能です。「フラット35S」はフラット35の利用者が利用でき、長期優良住宅など高い性能の住宅を取得する際に借入金利が一定期間引き下げられます。
参考:https://www.flat35.com/files/400354547.pdf 住宅金融支援機構
長期優良住宅の認定を受けるデメリット
長期優良住宅はメリットだけでなくデメリットもあります。以下でくわしく解説するように、デメリットのほとんどは認定を受けるためのコストや時間、手間などです。
1.建築コストが高くなる2.申請のための手間や時間、費用がかかる3.定期点検やメンテナンスの手間と費用がかかる
どれもメリットを享受するためには必須の事項ですが、知らずに申請して後悔することのないよう、事前に押さえておきましょう。
こちらの記事から、長期優良住宅の申請をして後悔しないためのポイントもチェックしてみてください。
>>長期優良住宅のメリット5つ | デメリットや失敗を防ぐポイントも解説
1.建築コストが高くなる
長期優良住宅の認定を受けるためには、耐震性や省エネルギー性能などさまざまな項目において高いレベルの基準を満たす必要があります。そのため、基準を満たすための設計や構造、資材費なども一般住宅と比べて割高です。
また、工期が長くなると、人件費もかかります。
上記の要因などから、長期優良住宅の建築コストは一般住宅と比べて高くなる傾向があります。
2.申請のための手間や時間、費用がかかる
長期優良住宅の認定手続きは工事着工前に行われます。申請から認定までに時間を要するため、一般住宅と比べて着工までに時間がかかる点がデメリットです。
長期優良住宅の認定申請や審査には費用もかかります。具体的な費用は所管行政庁によって異なりますが、目安として5~6万円程度です。また、申請はハウスメーカーや工務店が行うため、手数料含めて20~30万円程度かかると見込んでおきましょう。
3.定期点検やメンテナンスの手間と費用がかかる
長期優良住宅は入居後も認定基準を満たすために、事前に提出した維持保全計画に沿って定期的な点検及びメンテナンスが必要です。長期優良住宅の維持保全期間は30年で、点検は10年以内ごとに行うなどの規定が定められています。
計画に則った点検を怠ったり改善命令に違反したりすると認定取り消しになるだけでなく、補助金や優遇を受けた分の税金を返還するよう求められることもあるため注意が必要です。
長期優良住宅の認定手続き
長期優良住宅の申請は着工前に、一般的には建築主である住宅会社や工務店が行います。
長期優良住宅の認定を受けるまでの流れは以下の通りです。
・設計において認定基準を満たす・技術審査を受ける
→適合証が交付される・認定申請を行う
→認定通知書が交付され、着工可能となる
ここでは、認定の手続きについて基本的な事項を押さえておきましょう。
設計において認定基準を満たす
長期優良住宅の認定項目においてはそれぞれに詳細な評価基準があり、審査に通過するためには設計段階から基準を満たしておくことが必要です。
技術審査を受ける
設計が完成したら、登録住宅性能評価機関の技術的審査を受けます。申請には確認申請書(または設計住宅性能評価申請書)および添付図書(設計内容説明書や各種図面、計算書など)が必要です。
着工予定の住宅が性能面で長期優良住宅の認定基準を満たしていることが確認されると「適合証」が交付されます。
認定申請を行う
次に、所管行政庁に認定申請をします。申請に必要な書類は適合証のほか、認定申請書および添付図書(確認書や各種図面、計算書など所管行政庁が提出を求める書類)です。
申請が受理された後に適合審査が行われ、長期優良住宅として認定されると「通知書」が交付されます。これで長期優良住宅の着工が可能です。
認定を受けると発行される通知書や申請のポイントについては、こちらの記事からご覧ください。
>>長期優良住宅認定通知書が適用する住宅とは?申請方法も解説
まとめ:長期優良住宅の認定を受けるメリットとデメリットを踏まえておこう
長期優良住宅は、長く安心して暮らせる家や災害に強い丈夫な家、次世代に住み継げる家を建てたい人にとって最適な性能を備えた住宅です。
この記事では、長期優良住宅の認定を受けるメリットやデメリット、手続きについて解説しました。認定の申請や認定後も基準を満たすための手間やコストはかかりますが、認定を受けることで税制優遇を受けられるなどさまざまなメリットを享受できます。
記事を参考に、長期優良住宅のメリット・デメリットを踏まえたうえで、認定申請を検討してみてください。