昭和と平成の仙台の街並みを定点撮影で比較。今昔写真を見比べ、地元の歴史を「地元学」で学ぶ【宮城県仙台市】
「地元学」発祥の地は、熊本県水俣市、または、仙台市宮城野区にあるといわれている。これは、地域に住む人々が自らの暮らしや知恵を学び、それを生かす手法を模索する取り組みだ。
一方、同じ仙台市では今昔写真を用いたアーカイブ事業が繰り広げられている。それは、仙台市宮城野区の出版社・風の時編集部(代表・佐藤正実さん)が主催している「ここダネ!」で2021年から始まった。翌年の2022年には青葉区の市立上杉山中学校の生徒たちも加わり、定点撮影などで地域の魅力を掘り起こしている。
2024年度は「文化芸術を地域に生かす創造支援事業」として取り組んだ。
昔の写真からひもとき、地域の方々に話を聞いて現在の定点を知るもので、地域住民から地域の記憶を聞き後世へ伝承するといったかたちで事業は進められた。
風の時編集部のこの活動は、小・中学校や市民センターの協働がなければ生まれなかったかもしれない。
人口減少や少子高齢化などが進む中、まちの記憶を掘り起こす小・中学生から高齢者まで幅広い世代の方々がいるおかげで「後世への伝承」が成り立っている。
「思い出をそのまま残したい」「地域の魅力や記憶を伝えたい」「地域の再発見をより一層深めたい」などといった人たちが各々の地域に集結している。
「今後はどこを定点に地域の魅力や記憶を伝えるのか?」と深掘りをするほど目が離せなくなる。「アーカイブは地域の宝」。自分の住んでいる地域のことを知らなかったり、関心がなかったりするのはもったいない。
2024年2月25日、実績を振り返る目的で【車座座談会「ウチの推し!は『ここダネ!』」】という座談会が仙台市宮城野区の幸町市民センターにて開催された。
青葉区中央、柏木、福沢、木町通、幸町などの市民センターならびに上杉山中学校の事例や特徴などが座談会にて紹介されており、主に、市民センター職員や学校の先生も多く来場されていた。
館内には過去に展示された展示内容で、昔の写真、まちが変わる前に撮った写真、他事業から提供された写真、航空写真から読み解く記憶、聞き取り調査をする中学生などさまざまな手法から定点観測も含めて実績が紹介された。
さらに、昔の地図を見ることで「かつては◯◯だったのか?」という新たな発見が生まれ、世界観が広がった。
そして、2024年9月10~29日の間、「「ここダネ!」のトリセツ」と題して仙台駅東口近くにある仙台市生涯学習支援センターの1階展示フロアにて過去の事例が紹介された。これまでの4年間の実績を今後につなげて活動範囲がどんどん広がることを祈るばかりだ。
年が明け、2025年2月11~15日、青葉区の上杉コミュニティ・センターにて上杉山中学校の生徒たちの観点で記録された「ここダネ!」のパネル展が開催された。今回は3年間の活動の実績をもとに展示が繰り広げられた。今回も実に新発見そのもので、まちの変化が見えてくるものだった。
今後もこの活動が長く継続できることを期待している。
※すべて筆者撮影