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AI時代でも武器になる、ビジネスパーソンの文章術

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AI時代でも武器になる、ビジネスパーソンの文章術【求人ボックスジャーナル】はたらき方やキャリアを考える機会を創出するメディア

生成AIの普及により、仕事でもChatGPTやGeminiといったツールを使う人が増えています。特に多いのは文章生成の活用でしょう。AIを使えば資料やプレゼン、報告書を短時間で仕上げられ、効率化につながります。
しかし、AIに頼りすぎるのは要注意。思考力やオリジナリティが低下する可能性があるためです。さらに、すぐに返答が求められるメールやチャットでは、わざわざAIに指示を入力するほうが非効率になる場合もあります。

そこで本記事では、「自分で文章を書くことの重要性」を見直しつつ、すぐに実践できるテクニックをご紹介します。文章に苦手意識がある人や、仕事の効率を上げたい人はぜひ参考にしてください。

なぜAIに文章を任せすぎてはいけないのか?

「生成AIは便利だから積極的に使うべきだ」と考える人も多いでしょう。特に文章が苦手な人にとっては、強い味方です。

ところが、生成AIにはデメリットもあります。言語学者の石黒圭さんは、AIの文章は「内容が常識的で、読まなくてもわかる、刺激に乏しい文章」だと指摘しています。「新規性・個性が乏しい」ため、読み手の興味を引きにくい内容になってしまうのです。*1

定型的な文書ならいいかもしれませんが、気持ちを伝えるためのメールや斬新さが求められる企画書・プレゼン資料には不向きな場面もあるでしょう。

さらに石黒さんは、生成AIに頼りすぎると思考力の低下リスクがあると警告します。*1

「考える」という過程をテキスト生成AIに任せ、そのことに慣れてしまうと、その人は考えられなくなって創造性を失い、人間としての市場価値を下げてしまうことになるでしょう。(中略)テキスト生成AIにはできない創造的思考を行い、独自の付加価値を創出できる人材を市場は求めているのです。

つまり重要なのは、文章の上手・下手よりも、自分で考えて書くこと。そもそも、 生成AIに指示を出す「プロンプト」も文章 です。課題を整理し、どのようなプロンプトなら最適な回答を得られるかを考えるのは人間です。生成AIを使いこなし、長く活躍できる人材になるためにも、自分で文章を書く力は欠かせないのです。

今すぐ使える文章術3選

とはいえ、自分で考えて文章を書くのは時間も手間もかかります。

「何から書けばいいのか」
「わかりやすく書けているか」
「失礼な表現になっていないか」

こうしたことで迷って時間を取られ、他の業務に支障が出てしまっては本末転倒。そこで役に立つのが、決まった構成やフレーズといった「文章術」です。

ここからは、“時短で”“伝わる”文章を書くためのテクニックをご紹介します。

文章を早く書く「型」を使う

書く順番が決まっていれば、迷わずスピーディに文章を仕上げられます。ライターの藤𠮷豊さんは「文章を上達させるには、基本の『型』を押さえることが早道」と述べ、逆三角形型の構成を提案しています。*2

逆三角形型とは、「結論・説明・補足」といった順番で書く方法です。重要度の高い順に情報を示すため、「最後まで読まなくても概要がつかめる」のがメリットです。*2

たとえば、報告書なら次のようになります。

結論:本日の商談は成功し、A社との契約を締結しました。
説明:お客様が懸念されていたコスト面は、追加サポートを提案したことで解決。
補足:契約の金額と詳細については、添付資料をご確認ください。

また、国語辞典の編纂をした飯間浩明さんは「クイズ式」という型をすすめています。これは「疑問・結論・理由」の順で展開する型で、飯間さんによると「考えたことを間違いなく伝えるための文章の形式」だそうです。*3

先ほどと同じように、報告書の例で考えてみましょう。

疑問:なぜ本日の商談でA社との契約を獲得できたのでしょうか。
結論:お客様の懸念だったコスト問題を、追加サポートの提案で解消したからです。
理由:「サポートがあることで長期的にコスト削減できる」と具体的な数値を示したことで、安心して契約に踏み切っていただけました。

飯間さんによれば、クイズ式は「問題を出すことによって、筆者と読者とが問題意識を共有できる」のが特長です。読み手が「文章から何を読み取ればいいか」と迷わない点もメリットだと言います。*3

同じ内容でも、型によって伝わり方や利点が変わります。結論が最初にわかる逆三角形型はメールや報告書に、相手と課題を共有しながら説明できるクイズ式はプレゼンや企画書にマッチしそうです。2種類の型を身につけておけば、多くのビジネス文書をスムーズに書けるでしょう。

接続詞の使い方で印象アップ

メールやチャットでよくある悩みの一つが「言葉づかい」ではないでしょうか。プライベートのやり取りと違い、ビジネスの場では正確で丁寧な表現が求められます。

特に注意したいのが、接続詞です。書き言葉の中に話し言葉が混ざると、子どもっぽさや雑な印象を与えてしまいます。前出の石黒圭さんによると「話し言葉的な表現が出やすく、文頭に来て目立つことが多いので、とくに注意が必要」だそうです。*4

以下は、よく使われる接続詞の話し言葉と書き言葉の対応例です。取引先へのメールや資料で無意識に話し言葉を使っていないか、ぜひチェックしてみてください。

話し言葉 書き言葉 でも しかし・ですが だから・なので それゆえ・このため・したがって あと・それから そして・また・このほか とにかく いずれにせよ じゃあ では・それでは

定型文にバリエーションを持たせる

「お疲れ様です」
「お世話になっております」

など、日々のメールやチャットで使う定型文があります。便利な一方で、相手や状況に応じて「少し柔らかい表現にしたい」「普段よりも丁寧に伝えたい」と迷うこともあるでしょう。

こうした時に役立つのが、言いかえのバリエーションです。司会者で株式会社総合会話術仟言流の代表を務める鹿島しのぶさんは、丁寧な表現が「相手に自分の気持ちや状況をきちんと伝える」ほか、「良好な人間関係を築く第一歩になる」と言います。*5

たとえば、以下のような定型文の言いかえができます。ぜひ覚えておきましょう。*5

定型文 言いかえ 初めまして 初めてご連絡いたします お世話になっております 日頃より温かいお心遣いをいただき、ありがとうございます。
平素よりお心にかけていただき、深く感謝申し上げます。 確認しました 拝見(拝読)しました 了解しました 承知いたしました・かしこまりました お願いします お願い申し上げます・切にお願い申し上げる次第です

相手に合わせて表現を調整することで、あなたの誠意や気持ちがより伝わります。また、正しい敬語の使い分けを身につければ、ビジネスシーンで一歩リードできるでしょう。

文章術と生成AIを使いこなそう

生成AIは便利ですが、自分で文章を書いたほうが早い場面もあり、思考力も磨かれます。

また、前出の石黒さんは「自分の書いたものをテキスト生成AIに投げ、テキスト生成AIから返してもらったものをさらに自分の感覚で修正するということで、文章の質を高める」という方法も紹介しています。*1

つまり、最初から生成AIに丸投げせず、 校正や改善のためのサブツールとして活用するのが効果的 だということです。生成AIを完全に断つのではなく、目的に応じて使い分ける必要があります。

今回ご紹介した文章術も同様に、シーンに応じて「どのテクニックを使うか」を考えて実践することが、ビジネスパーソンとしてのスキルアップにつながります。

賢く文章を書くためのテクニックと生成AIを組み合わせ、効率と質の両方を高めていきましょう。

参考文献
*1 ダイヤモンド・オンライン|AIの回答、そのままコピペしてない?あなたの評価が下がるChatGPTの危険な使い方
*2 日経X TREND|ビジネス文章に才能は関係ない 意識すべき2つの「型」
*3 飯間浩明(2018)『伝わるシンプル文章術』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
*4 ダイヤモンド・オンライン|「子どもっぽい接続詞」とその言い換え一覧
*5 鹿島しのぶ(2018)『大人の表現「そのまま使える」ハンドブック』, 三笠書房.

文・写真:藤真唯

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