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蔦屋重三郎もびっくり、浮世絵にあらず江戸時代の油絵展!「司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵」府中市美術館にて。3月15日(土)から

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蔦屋重三郎もびっくり、浮世絵にあらず江戸時代の油絵展!「司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵」府中市美術館にて。3月15日(土)から

 NHK大河ドラマ『べらぼう』人気で浮世絵がクローズアップされている昨今、キャッチフレーズに「春の江戸絵画まつり」とあって浮世絵展かと思いきや、さにあらず。「司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵」―と題して、江戸時代後期の二大画家の油絵展が、府中市美術館で開催される。油絵といえば西洋のもの、というイメージだが、江戸時代の日本でも描かれていることに意外性もあり、二人の代表的な画家、司馬江漢(しば・こうかん=1747-1818)と亜欧堂田善(あおうどう・でんぜん=1748-1822)の二人の作品が並ぶのは稀なことである。

 学校の教科書でも取り上げられるほどの歴史的業績を残した司馬江漢と亜欧堂田善は、ともに江戸後期、18世紀半ばから19世紀初めに活躍した「洋風画」の代表的作家。現代とは異なり、鎖国下にあって海外から流入する情報がごく限られる中で、人づてに長崎などに持ち込まれる舶来の書物を頼りに獲得した〝洋風〟の技術によって、現代のわれわれをも惹きつける、優れた絵画を生み出した。そこに見られるのは純然たる西洋画ではなく、和の伝統美と洋の迫真描写の間での揺らぐ在り様で、ともすると奇妙にも見える和洋の折衷こそが二人の作品を魅力的にしている、といえる。荏胡麻(えごま)の油などを使って調合した絵具で、日本で古くから使われてきた薄くて繊細な絵絹(えぎぬ)に描いているためか、滑らかでさらりとして、明朗かつ落ち着きのある色彩。飾れば、西洋風とも日本風とも言えない不思議な雰囲気が醸し出されている。

「色々な展覧会で二人の油絵を紹介してきたが、作品をご覧になっている方からよく聞こえてきたのが、〝かっこいい〟という言葉で、きっぱりとした水平線の上に広大な青空が広がる江漢の風景画、遠近法を使って果てしなく景色が続く様子を描いた田善の作品。どちらにも西洋の画法への興味がストレートに表れていて、西洋や明治時代以降の重厚で複雑な油絵とは異なる魅力を持っています。それが新鮮に、潔く感じられるのかもしれません」とは「かっこいい」とのタイトルを付けた府中市美術館のコメント。近代以降、「稚拙な段階の西洋画」というレッテルを貼られた二人の作品だが、今、われわれが感じるような心地良さや、「きれい!」という感激こそが、江戸時代の人々が味わっていた趣に近いのではないだろうか。

 
 本展覧会では、油絵だけでなく、銅版画や、墨や在来の絵具を使った作品も展覧できる。二人の生い立ち、画家としての立場や環境の違い、目指すものの違いにも注目している。科学者であり文人でもあった江漢と、幕府老中もつとめた白河藩主松平定信のもとで黙々と技術を極めた田善。二人の違いが作品にどう表れているかも、大きな見所である。

 
 江戸絵画ブームとも言われる昨今だが、江漢や田善に興味を持つ人は多くはない。そのせいか、展覧会が開かれることは稀で、特に江漢の展覧会は、2001年に府中市美術館で開催以来の展覧会となる。

司馬江漢《三囲之景》本間美術館(前期)

亜欧堂田善《洋犬母子図》(後期)

「春の江戸絵画まつり 司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵」
会期:2025年3月15日(土)〜2025年5月11日(日)
   前期2025年3月15日(土)〜2025年4月13日(日)
   後期2025年4月15日(火)〜2025年5月11日(日)
   ※作品の大幅な展示替えを行います。
会場:府中市美術館
住所:東京都府中市浅間町1丁目3番地(都立府中の森公園内)
時間:午前10時~午後5時(入場は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(5月5日をのぞく)
TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
【府中市美術館 公式サイト】https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

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