「社長AI」と話そう、クローンに開始1週間で700件超の相談 伝えにくい本音や意見も
ID AI Factory(AIF、東京都千代田区)は10月9日、生成AIを活用し、同社社長の思考・哲学を再現したAIクローンと対話できる「舩越社長AI」を社内向けにリリースしたと発表した。リアルでは難しい本音や意見を気軽に打ち明けてもらうことで、社員のモチベーション維持や自社への帰属意識向上をはかるのが狙いだ。
企画の方向性確認や次世代経営層育成などへの活用も
社長AIクローン生成に向けて、AIFは今回、同社の代表取締役社長兼グループ最高経営責任者を務める舩越真樹氏の考え方を忠実に再現するため、過去20年以上にわたる従業員向け講話の記録をAIに学習させた。
これにより、トップリーダーの主義信条や観点、直近の経営方針に一問一答形式かつ多言語対応で触れることが可能となった。人には相談しづらい本音や直属の上長にはいえない意見を打ち明け、ヒントをもらうだけでなく、マネージャー層が企画の方向性を確認する羅針盤としてや、次世代の経営者を育成する教材としての効果が期待できるという。
運用開始から約1週間で、簡単な挨拶や個人的な相談、IR活動や事業戦略に関する意見提案など、すでに700件以上の対話が行われている。
より再現度の高いコミュニケーションの実現に向けて開発を継続
AIクローンにはさらなる進化の余地があり、同社は今後も社長のプロフィールや最新の講話内容を学習させることで、より再現度の高いコミュニケーションの実現を目指すとしている。
舩越氏はエネルギッシュな人柄やイノベーティブな思想・哲学を持っていることから、社内外から世代を問わず定評があるという。同社としては、ユニークなスピリットをグループに伝承し、次世代の助けとして活用するため、研究と発展を継続する予定だ。
タウンホールミーティングや社内向け説明会を通じて、経営陣と若手が交流
近年、経営陣と従業員による対話を重視する動きが企業の間で広がっている。
日本電気(NEC、東京都港区)では、社長兼CEOと社員の対話の場として「CEO Town Hall Meeting(タウンホールミーティング)」を毎月開催している。開始から約2年で、参加者は延べ20万人を超えた。
対話の中では、「好奇心を持って、楽しんでもらいたいなと思う」など、社長の「生」の言葉が聞かれることも多く、社員からは「失敗してもいい、それを次に生かせばよいという社長の考えが心に響いた」「NECが先進的な事業をしていると改めて理解し、モチベーションが上がった」などの声が聞かれ、エンゲージメント向上につながっている。
コニカミノルタ(東京都千代田区)は、インナーコミュニケーション強化として、若手社員が企画する開催する社内向け説明会「CEO LIVE!」など、マネジメントと社員の双方向コミュニケーションがもたらすエンゲージメント向上施策を展開している。
「CEO LIVE!」は、より活発なコミュニケーションを促すため、2023年度に始まった四半期イベント。会場とオンラインを合わせたハイブリッド形式で行われ、後半には、社員が質問し、役員がその場で回答するQ&Aタイムが実施される。
当社は、ぽつぽつと質問が出てくる程度だったが、回を重ねるごとに活発になり、今では、多くの質問が寄せられ時間切れになることや、その場で回答できなかったものは後日、社長や担当役員の返信を社内イントラで掲載することもあるという。「若手社員であっても、行動を起こせば会社に変革を起こせるという自信も得られた」と企画した社員は効果を実感している。
発表の詳細は同社の公式リリースで確認できる。
また、NECの「CEO Town Hall Meeting」、コニカミノルタの取り組みはそれぞれの公式サイトで確認できる。