英語を得意にする勉強術 ––––NHK「ラジオ英会話」講師・大西泰斗先生に高校生記者が取材
英語力を伸ばしたい高校生は多いですが、英語が得意になるためには学習をどう進めればよいのでしょうか。
高校生のリスナーも多い「ラジオ英会話」で講師を務める大西泰斗先生に高校生記者たちがインタビュー。全国の高校生読者から寄せられた、英語4技能を伸ばすための勉強法をはじめとするさまざまな質問に答えてもらいました。
※2024年3月21日に公開された記事です。
英語を使う自分を想像してみて
英語を好きになるためにできることはありますか。
日本語を日常的に話していても、「日本語という言語そのものが好き」という人は多くはないですよね。英語も「コミュニケーションの道具」として便利だから使われている。私も英語そのものが好きというわけではありませんが、世界中のどこに行っても英語でコミュニケーションをとりながら、日本にいるのと同じ感覚で旅を楽しめる自分は大好きです。
海外の映画を見て「こんなふうに英語が話せたらいいな」と憧れたり、自分が旅してみたいエリアに関する英語の本を読んだりと、英語を通じて触れられる世界にフォーカスしてみると楽しいですよ。
【語彙力UP】つまずいたら最初から
単語が覚えられないという声が寄せられています。語彙力をつけるためにおすすめの学習法はありますか。
単語集を開いて、まずページの上から下まで、英語だけを見て日本語の意味が思い浮かぶかチェックします。途中でつまずいたら、そのたびに1語目まで戻って全てやり直してください。
全部できたら、今度はページの下から上に1語目までさかのぼってチェックします。そして、次は視線をランダムに動かしながら、パッと目についた英単語の意味を言えるかをチェック。これを1日に10ページ程度まとめて取り組み、1ページ目から順にチェックして、途中でつまずくことがあれば1ページ目の最初からやり直し。一見たいへんに見えますが、慣れるとそれほどでもありません。
最後まで到達したら、今度は10ページ目から1ページ目に戻っていきます。この方法で1週間頑張れば、かなりの数の英単語が覚えられますよ。それでも覚えられない単語は、知識のリンクを増やしましょう。語源を調べて複数の意味を結び付けたり、語呂合わせを作ったり。日本語訳以外のリンクをはって自分の頭の中に定着させてみてください。
【リスニング】音の変化に注意
リスニングの力を伸ばすコツを教えてください。
リスニングが苦手な場合、原因は大きく2つあって、1つは語彙力が不足しているケース。これは単語を覚えることが解決策になります。もう1つは、「書かれている英語と実際に発音される英語は全く違う」ことを認識していないケースです。
例えば、“I’m an engineer. ”は「アイム・アン・エンジニア」とは発音しません。I ’mのmとanのa、anのnとengineerの初めのeをつなげて「アイマネジニア」となる。こうした音の変化を知らないと、読まれることがない音を待ってしまうので、聞き取りがますます難しくなります。
初級レベルのうちはスクリプトを見ながら音声を聞いて、「こういうときは音がこう変化する」という法則をきちんと身につけていきましょう。
【リスニング】メモは殴り書きで
リスニングでメモを取る際に注意すべきことはありますか。
皆さん日本語ならばメモはいりませんよね。でも、英語に慣れていないと内容ではなく「英語」自体に意識が割かれます。だから重要ではない内容も聞こうとしてしまう。さらにメモをしようとすると書くことにも集中してしまい悪循環です。
聞こえる情報の全てをメモするのではなく、ストーリーに関連するキーワードに意識を向けることに慣れると、書き取る内容自体を減らせるはずです。英語を聞き取ることに集中できるように、書き取る自分の手元は見ないこと、殴り書きでOKと考えて、きれいな字で書こうとしないことも大切です。
【スピーキング】❝使える❞表現をストック
スピーキングを得意にするにはどうすればよいですか。
基本的には覚えることが大事です。スピーキングが苦手な人はまず頭に日本語が思い浮かんでから英語に変換しますが、「頭で考えてから口が動く」のではなく「まず口が動く」ようになることを目指しましょう。そのためには「こういう状況ではこう言う」という“使える”表現を丸ごと覚え、状況に応じた表現のストックをできるだけ多く持っておく必要があります。
例えば、初対面の人とあいさつをする場面では、「『初めまして』は英語で何と言うんだっけ」と考えるのではなく、“It’s a pleasure to meet you.”などのフレーズが反射的に口から出てくるレベルまで、日頃から相手がいることを想定した会話練習を繰り返しておくことが大切です。
“使える表現”をたくさん覚えることは、リスニング対策としても有効です。お決まりのフレーズを知っていれば、会話の一部が聞き取れなくても「おそらくこういうことを言っているのだろう」と予測でき、言っていることの意味が取れるようになります。
【リーディング】返り読みをやめる
大学入試の長文問題を時間内に解くために意識するとよいことはありますか。
入試では、素早く読む力も求められますが、英語を頭の中で日本語に訳す癖がついていると、時間がかかる。英語と日本語は語順が違うため、返り読みをする必要が生じるからです。そこで意識してほしいのが、「英語は説明が後ろにくる」という「説明ルール」です。
例えば、“We met him at a bar in Roppongi .”という文の場合、We met himの場所を説明するために、その後ろにat a barが来て、さらにa barの場所を説明するためにその後ろにin Roppongiを置いています。「六本木のバーで彼に会いました」と修飾語が前に置かれる日本語とは語順が逆転していますよね。
英語では必ず右に説明が展開していくので、この「説明ルール」を理解して、返り読みをせずに右へ右へと内容を追っていくと長文を速く読めるようになります。
【ライティング】接続表現を覚えよう
エッセーなどで自分の考えや経験を英語で表現するときのコツを教えてください。
first(ly), second(ly), in conclusion, on the other hand, for exampleなどの接続表現をまとめて手に入れてください。こうした表現は道路標識のようなもの。積極的に取り入れることにより、文章の論理構成が明快になり読みやすくなるだけではなく、自分の考えを整理することができます。
学習の全体像をつかむ
「ラジオ英会話」は、英語が苦手な人でも取り組めますか?
英語が苦手な人の多くは、「英語はどんな言葉なのかがよくわからないのに、細かいルールの勉強から始めなければならないから面白くない」と感じているのではないでしょうか。三単現のs、itとthatの違いなど……面倒くさいですよね。
まずは、「ざっくりこれだけ理解すれば英語でコミュニケーションができますよ」という英語の全体像を見渡せるような説明をしてくれる教材や指導者を選んで学習を進めていくことが大切だと思います。「ラジオ英会話」は全体像をつかむのに適した教材です。英語が苦手だと思ったらこの講座を試してもらいたいですね。
最短距離で英語を学べる
最後に、大西先生が考える「ラジオ英会話」の魅力を教えてください。
「ラジオ英会話」は、わかりやすいルールで英文法を説明し、英会話の中で実際によく用いられるパターンを抽出して、最低限必要なフレーズや語彙を最短距離で学べる設計にしています。皆さんには英語の勉強に何年も費やすよりも、早く英語を使って自分のやりたいことを実現してほしい。それが私の夢です。英語は自分に合うスタイルで学べば得意科目にできますから、ぜひ「ラジオ英会話」を皆さんの学習法の選択肢の一つに加えてみてくださいね。
大西泰斗(おおにし・ひろと)
筑波大学大学院文芸言語研究科博士課程修了。英語学専攻。オックスフォード大学言語学研究所客員研究員を経て、現在、東洋学園大学教授。NHK「ラジオ英会話」の講師を務める。『ハートで感じる英文法 決定版』(NHK出版)など著書多数。
■『高校生新聞』記事より特別転載(2024年3月21日公開)
♦文・安永美穂
♦写真・幡原裕治
♦取材・五十嵐彩奈、東華乃子、那須優月、矢野ひなた=高校生記者