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トランプ政権が富裕層向け永住権を販売へ。グリーンカードと何が違う?

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【画像出典元】「alisa.strj/Shutterstock.com」

アメリカのトランプ大統領は2月末、裕福な外国人向けに新施策を導入する計画を発表しました。「ゴールドカード」という、アメリカに永住できる最上級の特権を新たに販売するというものです。価格は数億円規模と超高額ですから、選ばれし富裕層のみが対象となりそうです。既存のビザやグリーンカードとは何が違うのでしょうか?本記事ではトランプ政権で推し進められる超富裕層向けの新施策について、現地報道をもとに深掘りします。

ゴールドカードとは?

ニューヨークでビジネス支援も行う筆者のもとには、富裕層のお客様がいらっしゃることがあります。数日の滞在でこの街が気に入ると、マンハッタンの超高層ビルを眺めながら「あのようなコンドはいくらしますか?」や「どれほど投資したらアメリカに住めますか?」などの質問を受けることがあります。

「我々はゴールドカードを販売します」

2月25日、トランプ大統領のこの発表を聞いた時、筆者の脳裏にはまさに前述のようなクライアントとのやり取りが浮かびました。

【画像出典元】「Roman Samborskyi/Shutterstock.com」

ゴールドカードは、アメリカへの移民を希望する人に与えられる永住プログラム(制度)の一種です。そのお値段、なんと500万ドル(7億4000万円相当)!富裕層の中でも選りすぐりの超富裕層を対象にした、アメリカ移住&事業を可能にする「特権」の新たな導入ということになるでしょう。

アメリカ国内に(で)合法的に滞在したり就労したりするプロセスは外国人にとって非常に複雑です。一方で富裕層の外国人投資家にとって、それらができる権利を比較的すぐに得られる(お金で買える)というのが、ゴールドカード・プログラムの最大のメリットになります。またゴールドカード保持者は希望すれば、いずれアメリカ市民権取得の道も開かれます(審査あり)。

一方、アメリカという国家にとってゴールドカードを販売するメリットは、外国の富裕層を取り込み、高額の税金をアメリカに納めてもらう=外国資本を誘致できるということでしょう。多くの雇用が創出され国内の経済が活性化し、ひいては財政赤字の削減に繋がることが期待されます。

アメリカの財政赤字は深刻な状況です。25会計年度(24年10月─25年9月)の2月までの累計では1兆1470億ドルに拡大していると報じられています。今後も赤字は増加するものと見られます。

第二期トランプ政権の発足以来、イーロン・マスク氏率いる政府効率化省(DOGE)が中心となり、アメリカの財政赤字を削減する方法が模索されています。このゴールドカードもトランプ政権が歳入増加を期待する施策の1つでしょう。

ゴールドカードを購入できるほどの国外の富豪の数は3700万人規模と見積もられ、売れ行きは今のところ1日で1000件の日もあるそうです。合計で百万単位が売れるだろうとの見通しが発表されましたが、果たしてそれほど多くの人がこの権利を買うのでしょうか?似たような投資家ビザ(下記参照)でも年間の取得者数は8千人ほどだったと報じられています(2022年度実績)。

投資家ビザに代わるもの

【画像出典元】「Khosro/Shutterstock.com」

現地報道をまとめると、ゴールドカードは既存の米移民ビザの一つであるEB-5移民投資家ビザにとって代わるものとなりそうです。EB-5移民投資家ビザとは、これまでアメリカでの認可されたビジネス/商業企業に投資し、アメリカ人労働者10人以上のフルタイム(正社員)雇用を創出・維持する外国人投資家とその扶養家族に与えられているものです。

投資額は最低でも80万ドル(1億2000万円相当)、通常は105万ドル(1億5000万円相当)が義務付けられています(80万ドルのケースは失業率の高い地域や農村地域への投資など)。そしてこのビザ取得から5年後には(審査を経て)外国人投資家とその扶養家族がアメリカ市民権も取得できます。

しかしこのEB-5プログラムは悪用され、詐欺や横領、マネーロンダリングなどに関与する犯罪者を国内外から引き寄せている問題が指摘され物議を醸してきました。よって外国人富裕層向けのEB-5プログラムを終了させ、新たにゴールドカード・プログラムを設けたのです。

ちなみに4月上旬、トランプ大統領はエアフォースワン(大統領専用機)で移動中、記者に向けゴールドカードを見せました。大統領が手に持った金色のカードはトランプ氏の肖像画とサイン入りで「THE TRUMP CARD」と書かれてあります(実際のものか試作品かは不明)。その時点でリリースの時期については「2週間以内」と発表していました。

グリーンカードと何が違う?

【画像出典元】「Artiom Photo/Shutterstock.com」

アメリカに永住できる権利と言えば、一般的に「グリーンカード」の方が知られているでしょう。

グリーンカードとは?...米主要紙USAトゥデイにはこのように説明されています。
「米国政府が発行する身分証明書で、米国民以外の人が米国に永住し、働くことを認めるもの」

もとは外国人登録受領カードが色で呼ばれるようになったことから、この呼称が定着したようです。最新(2023年)のデザインは緑のベースカラーに赤、白、青の星条旗などが描かれたものです。USCIS(米国市民権・移民局、通称アメリカ移民局)の資料によると、長い歴史の中で必ずしも緑でなかった時代もあり、時代ごとに白、ブルー、ピンクなど緑以外の色も使われてきたとのこと。

日本人を含む外国人にとってグリーンカードは、ゴールドカードと違って大金を積む必要はなく(申請料や弁護士費用は必要)、またアメリカにある企業での雇用やアメリカ市民との結婚、抽選のDVプログラム(グリーンカード・ロッタリー、永住権宝くじなどとも呼ばれる)などにより得られるものです。雇用主がスポンサーとなるグリーンカードの手続きは、シンクタンクのケイトー研究所によると3年以上かかると言われています(時期により異なる)。

DVプログラムの抽選は移民の国籍などのバランスを取るために設けられていて、日本人を含む特定の国民を対象に年に一度実施されているものです。USCISの資料では、抽選で年間最大5万件の移民ビザが発給されているといいます。この抽選は以前は郵送での応募のみでしたが、近年はオンライン上で手軽にできるようになったので、アメリカ移住を考えたことがある人は運試しに応募してみても良いかもしれません。

DVプログラムの抽選の申し込みは代行サービスがありますが、多少の英語力さえあれば、応募自体はウェブ上で簡単にできるものです。そもそも永住権が当たれば、基本的には英語圏のアメリカに移住することになりますので、応募上で必要な英語での書類作りを第三者に頼ることは、在住者としてお勧めできるものではありません。

ここまで書くと「なんだ高額のゴールドカードより通常のグリーンカードの方が良いのではないか」と思われるかもしれません。「永住権取得」だけに着目すると雇用、結婚、ロッタリーで手に入るグリーンカードの方が良さそうです。しかし「市民権取得」に着目すると、グリーンカード保持者は一般的に5年間待たなければなりません。ゴールドカード保持者は市民権取得までの手続きが迅速化されるようです(詳細は専門家に要問い合わせ)。

(*ちなみに市民権取得のメリットは大統領選に投票でき、国外に長期滞在する場合もステータスが保持でき、家族のグリーンカード申請をよりスムーズにサポートできるなどが挙げられます。また、グリーンカード保持者でも政治的な理由で拘留されたり入国拒否されグリーンカードを没収されたなどのニュースが重なっていますが、市民権を取得すると入国拒否や国外追放の心配はなくなります)

また「雇用や結婚、ロッタリーで」と書きましたが、誰もが雇用されたり結婚をしたりするわけではないですし、一部の国(中国、韓国、カナダ、メキシコなど)の出身者はロッタリーに応募できません。つまり誰もが「雇用や結婚、ロッタリー」の機会を得られるわけではないのです。さらにゴールドカードは国外での収入が非課税になるなど税制上の大きな優遇措置が設けられているという情報もあります。よってこれまでのEB-5プログラム該当者にとって、大金さえ積めば永住の権利が手に入るゴールドカードは「魅力的な特権」と映るのでしょう。

(注:永住権=グリーンカード保持者は市民と同様にアメリカ国外で得た所得も全てアメリカに納税義務があるといいます。例えばグリーンカード保持者が日本に住む場合、日米両国で税金を申告しなければなりません。二重課税を防ぐ方法あり。専門家に要問い合わせ)

またアメリカのみならず、ゴールドカードと同様の富裕層向け投資家ビザは世界各国にもあるものです。CBSニュースは英国、スペイン、ギリシャ、マルタ、オーストラリア、カナダ、イタリアなど100ヵ国以上が同様のビザを提供していると報じています。

【画像出典元】「proslgn/Shutterstock.com」

富裕層にターゲットを絞って取り込もうとする計画がある一方で、アメリカ国内の社会的・政治的不安から、逆の動きも見られます。つまりアメリカから国外への居住権取得の関心が最大に高まっていると、米メディアは報じています。

人気の移住先はポルトガル、ギリシャ、マルタ、カリブ海などで、その一つのポルトガルは50万ユーロ (約8千万円相当) 以上の投資で永住権を手にでき、シェンゲン圏内の29ヵ国にもアクセスできるようになります。ゴールドカードの500万ドルに比べれば随分お得に感じます。

このように、世界の富裕層にとってゴールドカードがどれほどの訴求効果があるかは未知数ですが、500万ドルを投じてでもさらなるアメリカンドリームを追求したい熱い野心家にとって、ゴールドカードが新たな打出の小槌となる可能性はあるでしょう。

(2025年4月現在の情報です。内容は変更の可能性あり。詳細や最新情報はアメリカの移民法専門の弁護士や専門家にお問い合わせください)

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