前向きに社会生活を送るために必要な「自己肯定感」。不安や消極的な自分から脱する正しい自己肯定感の上げ方とは【心の不調がみるみるよくなる本】
自分のことを好きになれないのはなぜ?
前向きに社会生活を送るために必要な感情が「自己肯定感」です。自己肯定感が低いと、考え方も消極的になり、不安を抱えやすくなります。
ありのままの自分を受け入れる
いわゆる「自己肯定感」は、前向きに生きるために必要な感情です。定義としては「自分のことを好きになる」ではなく、「ありのままの自分を受け入れる」とするのが正しいでしょう。なぜなら、精神疾患のひとつに「自己愛性パーソナリティ障害」というのがあるのですが、患者は「自分が特別な存在である」という妄想や肥大した自尊心から、他人の批判などに耐えられず、暴力的な怒りをあらわしたり、すぐ引きこもったりするなどしてしまいます。この障害は、まさに「ありのままの自分を受け入れられない」ところからはじまっています。特別、何かしら人より優れているといった評価をされていなくても、そのままの自分を肯定することが健全なのです。
成功と賞賛が自己肯定感を高める
他人との比較などをとおして、自分の短所や長所に気づきながら自尊心を育てることは、人間の成長にとって必要な過程です。しかし、自分の短所ばかりに注目し、自己を否定するのはよくありません。短所も含めて受け入れることが大事です。
自己評価には、「認知的斉合性理論」がかかわっています。人は自分の評価と他人の評価を一致させたい傾向があり、自己評価の低い人は周囲からも低い評価を受けたがります。つまり、ほめられるのが苦手で、悪くいわれることで安心してしまうのです。
自己肯定感を高めるのに必要なのは、何かに挑戦して成功した経験と、それに対する周囲からの高い評価です。こうしたポジティブな記憶を積み重ねていくことで自信がつき、失敗したときや悪くいわれたときにも冷静に対処できるようになります。つまり、批判の声を恐れず、失敗の原因を分析したり、対策を練ったり、次の挑戦に生かそうと考えたりする意欲は、成功と賞賛の経験があるからこそ生まれるのです。自己評価を低くし、ほめられることから逃れていては、自己肯定感は高まりません。
人は「失敗」して「成長」する
不安の根本には「失敗が怖い」「失敗して笑われたらどうしよう」といった心理があります。しかし、失敗なくして成長もありません。失敗を恐れず、「何でもやってみよう」と気楽に考える姿勢が大切です
1 失敗を過度に恐れない
多くの体験をすれば、それだけ多くの失敗をするものです。もし、どうしても「失敗が怖い」という感情から逃れられない場合は、小さな挑戦からはじめましょう。
2 失敗の原因を分析する
失敗したとしても、「私はダメなんだ」などと自分の能力や資質のせいにするのではなく、「準備不足だった」「時間が足りなかった」などと、客観的 に原因を分析しましょう。
3 失敗を次につなげる対策をする
失敗の原因が見えてきたら、「次からはもっと準備期間を設ける」「計画性が足りなかったのでスケジュール設定の方法を見直す」などと、その原因に応じた対策を考えましょう。
4 失敗を引きずらない
失敗の原因究明と対策をしっかりしておけば、次はきっとうまくいきます。いつまでも過去の失敗を引きずるのではなく、次の成功のためにできることを考えましょう。
成功も失敗も、どちらも同じ「経験」です。経験をたくさん積めば、成功も失敗も増えます。失敗を過度に恐れず、「まずは経験を積む」ぐらいの気持ちで行動しましょう
親の影響が大きい「自己肯定感」の有無
前に触れた「自己愛性パーソナリティ障害」の原因には、幼少期における親の過保護あるいは無関心が関係しているといわれています。人間形成の重要な時期に、挑戦していないのに賞賛されること、挑戦したのに賞賛されないことが続くと、欠落したその「経験」を補うため、「空想」によって「特別な自分」をつくり上げることになってしまうのです。
よいところと悪いところ、成功と失敗、ほめられたことや叱られたことなどあらゆる経験すべてが集まって、自分という人間ができあがっていることに自信を持ちましょう。高い自己肯定感という鉄壁の守りに、不安が攻め込む余地はありません。
CHECK!
自己評価が低い人は、悪くいわれることで安心してしまう成功した体験の積み重ねが、自己評価を高めていく
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修