イライラ・不安には「肝と心」が関わっている?精神の安定を助ける漢方とは?【生薬と漢方薬の事典】
イライラ・ 不安感
イライラしたり、不安感がつのったりするような精神症状には、肝と心がかかわっていると考えられます。肝はイライラ、心は不安感を起こすと大きく分けられますが、肝心は密接に関係しているため、どちらか片方のトラブルをきっかけにして両方の症状を起こすケースも多く、そうした場合は両方の処方を用います。うつ症状のある場合、精神科医の診断が必要です。
その他 肝うつによるイライラ
肝がたかぶり怒りがわきあがる
処方:四逆散/抑肝散
肝にたまった怒りを抑える
ストレスをうまく処理したり、感情を安定させる働きをしている肝の気の流れが滞ってしまうと、おもに怒りの感情が肝にため込まれていき、神経が過敏になりイライラします。
肝の気の巡りをよくし、精神的ストレスからくる胃痛などにも使われる四逆散、また、肝の熱をさまして怒りの感情をおさえる抑肝散などが用いられます。抑肝散は、高齢者や子どもにもよく使用される処方です。
その他 心神不安
責任感の強い人に起こりやすい不安感
処方:帰脾湯/加味帰脾湯/柴胡加竜骨牡蛎湯/桂枝加竜骨牡蛎湯
心の働きを安定させる
五臓の中で神経活動を主っているとされる心の働きが不安定になると、不安感をはじめ、だるい、食欲不振といった症状が起こります。さまざまな責任を一人で背負い込んでしまう、責任感、正義感の強い人にみられる状態です。
気や血を補って心神を安定させる帰脾湯が用いられます。また、帰脾湯に山梔子と柴胡を加えた加味帰脾湯や、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯を用いれば、肝心どちらにも作用して、イライラ、不安感などの精神症状を鎮めます。
養生・セルフケア
過ごし方
肝心どちらの症状の場合も、まずはよく休むことが大切です。その上で、肝うつならば、遊びに出かけたり、体を動かしたり、誰かに気持ちを話したりして、ため込んだ怒りの感情を発散させること。また、肝を消耗させる目の使いすぎには注意しましょう。
心神不安の場合には、理解者や自分を助けてくれる人を見つけて、頼ることを増やし、抱える責任を少なくするように努めましょう。喜の感情は心を強めるので、楽しい時間をつくることもよいことです。
食べ物
苦みのあるものは、熱をとり、たかぶった気持ちをおさえ、心の機能も高めます。肝の機能を高める働きをするのは酸味のあるものです。
精神を安定させる働きのある食材には、金針菜やナツメ、貝のカキなどがあげられます。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎