適度な距離感で暮らす二世帯住宅のヒミツとは?
親世帯と子・孫世帯の二世帯で暮らす二世帯住宅。共働き世帯の増加や待機児童問題などを背景に二世帯住宅での暮らしが推奨されていますが、親世帯との同居に対して不安を覚える方も多いでしょう。しかし同居には、子育てを義父母に手伝ってもらえるため共働きがしやすくなったり、住宅費や光熱費が節約できるなど、メリットもたくさんあります。 元は別々に暮らしていた家族であるため、生活習慣やルールが違うのは当たり前。どちらかが無理に合わせるのではなく、距離感を保ちながら徐々に“家族”になっていくことが大切なのです。 この動画では、そんな二世帯同居を前提に作られた平屋型の二世帯住宅に密着。二家族で快適に過ごすにはどんな間取りや動線にすればよいのか、適切な距離感とは何かなどを詳しく紹介します。 今回紹介する動画はコチラ
1.引き戸で車椅子でも安心
二世帯同居で不安なことといえば、義父母の介護。「今は元気だけど、今後どうなるか分からない」、「現時点でどのくらいバリアフリー設計にすればよいか分からない」など、老後を見据えた設計は家づくりにおいてのお悩みポイントです。 ここでは、車椅子になっても安心なドアをご紹介。家づくりのひと工夫で、義父母の老後も安心な二世帯住宅に仕上がります。
引き戸にすることで車椅子でもラクラク
この家の玄関ドアには、義父母が車椅子を使う際も対応できるよう、引き戸を採用。開き戸だと開け閉めする際に扉の幅の分だけ移動しなければならないため、車椅子に乗りながらの開閉作業は負担になります。 ちなみに、玄関前の階段をスロープにしたり手すりを取り付けたりすることは、家が建った後でも比較的簡単にできます。しかし、ドアを開き戸から引き戸にするのは難しいので二世帯住宅を建てる時点で引き戸にしておくのがベストです。 玄関ドアだけでなく、脱衣所や浴室へ入るドアも引き戸を使用。将来を見据えた設計で、長く安心して暮らせる二世帯住宅に仕上がっています。
2.シューズクロークでのニッチの使い方
シューズクロークは、靴だけでなく上着やベビーカー、キャンプ用品やゴルフなどのスポーツ用品なども収納できる小部屋のようなもの。通常の玄関に置かれるシューズボックスより多く物を収納できるため、玄関をすっきりさせることができます。 そんな便利なシューズクロークですが、カギや小物などを置けないという点がデメリットとして挙げられます。 たとえばちょっとカギを棚に置いて靴や上着を脱いだりしたい時、シューズボックスがあればその上にポンと置けるのですが、シューズクロークの場合は棚がありませんよね。そこで役立つのが、ニッチなのです。
効果的なニッチ
ニッチとは住宅の壁面にくぼみを作ることでできる、小物などを置く空間のこと。これを玄関の壁に作ることにより、スペースを取らずにカギや小物などを置くことができます。 この家では洗濯機の横などにも作られています。棚を置くスペースがない時は、ぜひニッチを活用してみてください。
3.洗濯の下洗い用シンクを設置
義父母の介護をはじめ、子どもが食べたものを吐いたり遊んで泥だらけになったりした時など、洗濯する前に下洗いが必須な場合も。そんな時に役立つのが、下洗い用のシンク。では、通常の洗面台とどのような違いがあるのでしょうか。
底が深く大きなスロップシンク
下洗い用のシンクはスロップシンクといい、通常の洗面台よりも底が深く、大きく作られています。シンクが広いため服や靴が洗いやすいだけでなく、泥や吐しゃ物など洗面台で洗うことに抵抗のある服や靴などを簡単に洗うことができ、衛生面でも安心です。 スロップシンクを洗濯機の横に設置することで下洗いしてすぐに洗濯機へ、という動線ができ、家事の負担が軽減されます。
4.動線を工夫して適度な距離を確保
同居において、夫婦と義父母がお互いにストレスなく過ごせるか、不安に感じる方も多いでしょう。一緒に暮らすからこそ、適切な距離を保つことが三世代同居の肝。 どのような間取りにすれば双方にストレスがかからないのでしょうか。ここでは、間取りと動線の作り方のポイントを紹介します。
脱衣所に共有収納を設置
浴室や脱衣所は一人ひとりのプライバシーが確保されなければならないため、特に気を遣う場所。この脱衣所の隣に同じ広さの共有収納スペースを設けることで、家族みんなの下着や衣類を置けるように。着替えを脱衣所に持ってくるのをうっかり忘れた!なんてことも防ぐことができます。 脱衣所と共有収納の間に引き戸を設けてカギを付けている点もポイント。脱衣所から共有収納スペースのドアにカギをかけて脱衣所に入れないようにするなど、プライバシー保護が徹底されたつくりになっています。
脱衣所に2か所から入れるように
先ほど紹介した共有収納スペースにより、脱衣所用ドアと共有収納用ドアの2か所から脱衣所に入れるようになります。こうすることで家族の誰かが入っていることに気づかずに脱衣所で鉢合わせになるのを防ぐことができ、安心してお風呂に入ることができます。
トイレやお風呂を廊下で区切る
またこの家では、玄関からの動線を2か所作っている点も特徴です。一つ目は玄関から正面のドアに入るとリビングに行ける動線。買い物から帰った際にそのまま買ったものをリビングに運べるだけでなく、来客動線としても機能しています。 そしてもう一つが、玄関から右の廊下へ行くと浴室やトイレ、義父母の部屋へと続いている動線です。トイレや浴室をリビングから離れさせて廊下で区切ることにより、生活音を遮断することができます。トイレや浴室は、家族であっても音を聞かれたくなかったり、一歩距離を置いて使用したい場所。廊下を活用し、過度に気にせず生活できるよう配慮しています。
玄関から直接、義父母の部屋に
先ほど紹介した通り玄関からそのまま義父母の部屋に行ける点もポイントです。義父母が夫婦・子の生活空間を通らずに部屋に入れることで、お互いに遠慮しすぎず、干渉もしない間取りになっています。双方が気を遣う同居ですが、家ではできるだけリラックスして過ごしたいもの。間取りを工夫して物理的に一定の距離を保つことで、心理的負担を軽減できます。
5.夫婦の部屋のプライバシーを保護
夫婦の寝室は完全にプライベートな、自分がいちばん落ち着ける空間にしたいと思う方も多いはず。ここではそんなニーズに応えた間取りを紹介します。
夫婦の部屋を廊下やリビングから独立
「平屋だとプライベートな空間を作りにくいのでは?」と不安な方もいるのではないでしょうか。しかしこの家では、義父母の部屋の対角線上、いちばん遠い位置に主寝室を設けて夫婦のプライバシーを確保。また廊下や子ども部屋からも離れたところに置くことで、平屋でも夫婦の部屋を独立させた形になっています。
6.まとめ
今回は、二世帯住宅の平屋をご紹介しました。家族の数だけ暮らし方やルールがあるため、同居を不安に思うのは当然のこと。しかし、子どもの急な熱やどうしても仕事を休めない時などに子育てを手伝ってもらったり、仕事で遅くなった時に子供を見てもらえる、また光熱費などの節約など、良い点もたくさんあります。 間取りや動線などを工夫して適度な距離感を保ち、快適に同居できるような家づくりをしていきましょう!