猫の『トイレの失敗』は健康トラブルのサインかも?疑うべき4つの病気
1.尿路結石症
猫の尿路結石症は、腎臓、膀胱、尿管、尿道に結石ができる病気です。膀胱や尿道を傷つけたり、詰まったりすることでさまざまなトラブルの原因となります。
尿路結石症では、トイレの失敗以外にも以下のような症状が見られます。
✔頻繁にトイレに行くが少量しか出ない
✔おしっこが出ない
✔排尿時に痛がって鳴く
✔血尿が出る
✔トイレでうずくまっている
✔元気がない
✔食欲不振や嘔吐
✔触られることを嫌がる
これらの症状で、もっとも注意が必要なのは「おしっこが出ない」ときです。結石が尿道に詰まっておしっこが出せなくなっている「尿道閉塞」を起こしている可能性があります。
尿道閉塞は、尿道が狭いオス猫によく見られる症状で、尿道が完全に詰まると排尿ができなくなり、毒素が体内に溜まるため、迅速な処置が必要です。
排尿できない状態がたった1日続いただけで重症化する可能性があり、命に関わることもありますので、早期発見と治療が重要です。
また、腎臓から膀胱までを繋ぐ尿管に結石が詰まった場合は、元気消失、食欲不振や嘔吐といった一見するとトイレと関係のない症状しか出ないこともあります。片方の腎臓が無事であれば排尿はできるので見逃しがちですが、こちらも急性腎不全リスクがあるので要注意です。
2.膀胱炎
膀胱炎は、猫の泌尿器系において一般的な疾患で、膀胱が炎症を起こしている状態を指します。
猫の膀胱炎には主に、細菌感染が原因となる細菌性膀胱炎、尿路結石や結晶が起因となる膀胱炎、明確な原因は解明できていませんがストレスや食事、環境要因が原因で発症リスクが上がるとされる特発性膀胱炎があります。
猫が膀胱炎になると、以下のような症状が見られます。
✔トイレに行く回数が増える
✔排尿時に痛みを感じる
✔長時間トイレでいきんでいる
✔血尿が出る
✔元気がない
✔食欲が減る
細菌性膀胱炎では抗菌薬の処方、尿結石や結晶がある場合は療法食への食事変更がなされるのが一般的ですが、特発性膀胱炎は根治的な治療法がないため、対症療法によって症状が落ち着くのを待つことになります。
明らかなストレス要因がわかっている場合はそれを取り除くことが、家庭でできる一番の治療法です。
ただし特発性膀胱炎は再発をくり返すことも多いため注意が必要です。膀胱炎用の療法食の中には、特発性膀胱炎用にストレス緩和を目的とした成分を含むものもあるので、くり返す場合は食事について主治医と相談するのも良いでしょう。
3.慢性腎臓病
猫の慢性腎臓病とは、腎臓がなんらかのダメージを受けて機能が低下する病気です。10歳以上の高齢猫の約30~40%に見られるとされています。
慢性腎臓病の主な症状は以下となります。
✔水をたくさん飲む
✔色の薄いおしっこを大量にする
✔体重が減る
✔食欲がなくなる
✔嘔吐が見られる
✔貧血になる
✔毛づやが悪くなる
腎臓病の初期には目立った症状が見られないのが一般的です。そのため飼い主さんが症状に気づいたときには、かなり進行しているケースも少なくありません。
飼い主さんが最初に気づく症状としては、たくさんおしっこが出てしまうため、その分たくさんの水を飲んで補おうとする「多飲多尿」が多いと言われています。高齢の猫が、水をたくさん飲むようになったら早めに獣医師に相談することをおすすめします。
また体重減少も、自宅で測定することで気づくことができる症状ですので、定期的に体重を測定するよう心がけましょう。
4.糖尿病
糖尿病はすい臓から分泌されるインスリンの不足や、インスリンが体内で効きづらい病態が原因で、ブドウ糖によるエネルギーの産生が不十分な状態となります。
糖尿病の主な症状には以下があります。
✔水をたくさん飲む
✔おしっこを大量にする
✔体重が減る
✔毛づやが悪くなる
糖尿病の特徴的な症状は多飲多尿と体重減少で、飼い主が気付きやすいのはおしっこの量の増加やそれに伴うトイレの失敗、飲水量の増加です。
病状が進むと、食欲不振や元気消失、さらに進行すると体にケトンが蓄積してしまったり血液の浸透圧が上がりすぎたりすることによる、全身臓器の異常、神経症状、意識の混濁など、命に関わる病態になることもあります。
糖尿病は、動物病院で適切な治療を受け、体重管理をしながら血糖値のコントロールをおこなう必要があります。気になる症状がある場合は早めに獣医師に相談しましょう。
まとめ
猫のトイレの失敗は、ストレスやトイレが気に入らないといった原因もありますが、なんらかの病気が原因となっている場合も多いです。
そのなかでも、とくに注意したいのが、今回紹介した4つの病気です。
✔尿路結石症
✔膀胱炎
✔腎臓病
✔糖尿病
これらの病気は、いずれも早期発見が重要とされています。トイレの様子に異変が見られた場合は、早めに動物病院で診察を受け、適切な治療につなげましょう。
(獣医師監修:唐野智美)