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高中正義ロサンゼルス公演も大成功!世界で再評価の機運高まるジャパニーズ・フュージョン

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1979年12月01日 高中正義のアルバム「JOLLY JIVE」発売日

サディスティック・ミカ・バンドで脚光を浴びる


今、高中正義が再評価され、レコードショップでも彼のアナログLPが人気だという。もしかしたら、これもシティポップ・ブームの余波なのかもしれない。けれど、どちらにしても過去のものとして忘れられていた昭和の名盤たちが再び脚光を浴びるのはけっして悪いことではないだろう。

高中正義は1953年に東京で生まれた。1960年代のベンチャーズを中心としたエレキブームやロックムーブメントの影響を受け、ギター少年として成長していった彼は、高校生の頃にはステージで演奏するようになる。1971年には柳田ヒロのグループに参加後、成毛滋とつのだ☆ひろのバンド、ストロベリー・パスに参加する。しかしこの時は成毛滋がギターを弾いていたために高中はベースを担当することになる。

ストロベリー・パスは間もなくフライド・エッグと名を変え、高中正義はベーシストとして正式メンバーになった。しかし、フライド・エッグはほどなく解散してしまい、当時から高中に注目していた加藤和彦に誘われてサディスティック・ミカ・バンドに参加する。この時のエピソードとして加藤和彦が、“高中もギタリストだからつまんないでしょ、やらない?” と言って引っこ抜いたんだと加藤本人から聞いたことがある。

そう、高中正義が最初に脚光を浴びたのはサディスティック・ミカ・バンドのギタリストとしてだった。ブリティッシュ・グラムロックの匂いが強かったミカ・バンドのサウンドの中で、高中の奔放で華のあるギタープレイは異彩を放っていたし、その分目立ってもいた。

1975年、サディスティック・ミカ・バンドはロキシー・ミュージックのオープニングアクトとしてイギリスツアーを行い、主役を上回る高い評価を受けたが、ツアー直後に解散。バンドメンバーだった高中正義、高橋幸宏(ドラムス)、後藤次利(ベース)、今井裕(キーボード)はサディスティックスを結成して活動するが1978年に活動休止と短命に終わる。

メンバーたちはサディスティックスと併行してソロやセッション活動を展開していった。高中正義も1976年にファースト・ソロアルバム『SEYCHELLES』、1977年には『TAKANAKA』を発表し、フュージョンテイストをもったギターサウンドを追求していく。

「BLUE LAGOON」のヒットで再注目


ソロのギタリストとして高中正義が再び注目を浴びたのが1979年に発表された5枚目のソロアルバム『JOLLY JIVE』と、翌1980年にこのアルバムからシングルカットされ、オーディオのCM曲にもなった「BLUE LAGOON」のヒットだった。

アルバム『JOLLY JIVE』のオープニングナンバーとなっていた「BLUE LAGOON」は、バリー・ホワイトが、ラブ・アンリミテッド・オーケストラ名義でリリースした「愛のテーマ」(1973年)にも通じる軽快な疾走感あふれるリズムに乗って、高中正義のギターが心地よいメロディーを縦横に描いていくナンバー。

今聴いても十分に魅力的だけれど、この曲が発表された1979年には、部屋のステレオの前でじっとしていなくても、どこでも好きな場所で音楽が楽しめる携帯音楽プレーヤー『ウォークマン』が発売されている。さらにこの年、乗用車の所有台数が2,000万台を突破。暮らしの中でドライブを楽しむ習慣も定着し、カーオーディオの普及も進んでいった。

こうした社会背景の中、高中正義の「BLUE LAGOON」、そして『JOLLY JIVE』は、歌詞がほとんど無いインストゥルメンタル・ナンバーであることで、その曲に託されている意味を気にすることなく、ドライブやアウトドア・ライフを快適に彩ってくれる新しい音楽として重宝されていった側面も見逃せない。

ボーカリストのような豊かな表情を感じさせる高中正義のギター


もちろんこれは、この時代にフュージョンサウンドがクローズアップされていったことや、洗練された心地よいサウンドを打ち出したいわゆるシティポップの曲たちについても言えることだ。しかし、そうした “ドライブミュージック” の中でも高中正義の音楽はとくにキャッチーでカラフルな魅力を感じさせるものだった。彼のギターは、まるでボーカリストのような豊かな表情を感じさせる。それは、彼の演奏が単に目新しいサウンドをなぞるのではなく、ひとつひとつのギターの音色に、彼がこれまで経験してきたさまざまな音楽のエッセンスが隠し味として生きているからだ。

例えば、『JOLLY JIVE』に続く『T-WAVE』(1980年)も全体としてはアウトドア・リゾート感覚あふれるポップなフュージョンのアルバムといえるが、ボーカルが入った5曲目の「My Secret Beach」には加藤和彦のソロアルバムに通じる雰囲気を感じるなど、随所に幅広いポップセンスがちりばめられているのだ。

レコードと絵本、ライブを連動させた「虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS」


さらに高中正義は続くアルバム『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』でインストゥルメンタルサウンドの新たな可能性にチャレンジする。
『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』はイタリアの画家ウル・デ・リコの絵本の世界を音楽で表現した作品で、アナログ盤2枚組の大作。アルバムと連動する形で絵本(日本語版)も発売され、どちらもベストセラーを記録する。さらに、アルバムの発売日である3月10日とその翌日の2日間に渡り、リリースコンサート『Rainbow Goblins Story Concert』を日本武道館で行い大評判となった。

絵本の『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』はかなり凝ったアート色の強い作品で、そのまま出版しても大きな話題にはなりにくそうな印象だった。そして高中正義のアルバムも、それまでのリゾート感覚のポップなフュージョンとは違うファンタジックなプログレッシブ・サウンドで、世界観が構築されたコンセプチュアルな作品だった。

しかし、レコードと絵本、さらにはライブを連動させることで『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』という作品に対するリスナーの関心がより強いものになり、その後盛んに行われるようになるクロスメディアの先駆けとなった。そして高中正義も『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』によって、ポップなフュージョンギタリストというイメージを払拭し、独自の音楽性をギターで表現するアーティストとしてのポジションを確立していく。

高中正義のターニングポイントとなった『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』は高中正義の代表作として、今も高く評価されている。
1997年には続編として『虹伝説Ⅱ THE WHITE GOBLIN』が発表され、2021年には『虹伝説』の『Ⅰ』『Ⅱ』とライブ音源や映像を収めたボックスセット『虹伝説BOX -40th Anniversary Deluxe Edition-』も発売されている。

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