昭和の図鑑から学ぶ陸っぱりのエサ釣り さぐり釣りとサビキ釣りは普遍的な楽しみ方?
先日本棚を整理していると、子ども時分に読んでいた魚釣りの図鑑を見つけた。発行は1984年と昭和である。幼少の自分がよほど熱心に読んだのか、セロハンテープで破れたページを補修していたりもする。この当時の釣りがどのように語られていたか、筆者所有の図鑑を見ながらご紹介していきたい。
昭和の図鑑はまだ現役
何冊か魚に関する本は見られたが、中でも年季が入っているのがこの「海辺のずかん」である。
中身は、海辺にどんな生き物がいるかの解説や、捕まえ方などの方法がある。3つ子の魂百までと言うが、実際これを読んでいた幼少から36歳の今まで同じようなことに夢中になっているのだから、もはや誇れそうな話だ。
今でも図書館なんかにいくと、この時代の本が幅を利かせていたりするから面白い。恐竜が二本足で立っているような図鑑は、すでに科学的に「ありえない」と断言されている(しかし、誰にそんな時代のことが「ありえない」と言えるのだろう?)。現代ではもはや唯一神とまでいえる科学は、日進月歩で新しい定説を作っていくが、意外に根本的な部分は変わっていなかったりする。昭和の図鑑の本も、今の図鑑も、絵柄こそ違うが、言っていることはほとんど同じだ。
特にこんな海中の図は、なんとも言い難く、むしろ昭和の図鑑のほうがサマになっている。
岸では「さぐりづり」と「サビキづり」
海のオカッパリの釣りとして、図鑑の中で紹介されているのは、2つだ。
さぐりづり
ラインにオモリをつけて、先にハリをつけて、岸壁際に落とす。そして微妙に底を切って、仕掛けを上げ下げする。エサに根魚が飛びついてくる。いわゆる「キワの釣り」は、この頃は「さぐりづり」と言われていた。今でも、私の感覚としてはこの表現がぴたっとくる。根魚がよく釣れる。カサゴ、メバル。須磨の沖堤防に父に教えられてやったこの釣りを、私は生涯忘れることがないだろう。
よく見ると「ブラクリ」という仕掛け名まで出てくる。へえ。ブラクリって昭和の頃からあった仕掛けなんだ……。私としては2000年代みたいな気がしていたのだが。
サビキづり
サビキづり。「サビキ」と短く言う。アジやサバやカタクチイワシが対象魚と書かれている。要するに口の小さい回遊魚だ。そして今も昔も変わらず無限大量に釣れるから面白い。海の原則は変わらない。
個人的に今はルアーフィッシングばかりなので、エサのサビキはやらなくなっている。メタルジグを使ったジグサビキはやる。ちなみに、エサのサビキ師の潮下でサビキをゆらゆらさせていると、オマケでこっちのサビキにも食ってくることは、少年の自分も知っていた気がする……。
図鑑が語る釣りの注意点
上の絵図の中に、岸で釣り具の作業をするときに、「海に背中を向けてはあぶないよ!」という注意書きがある。そうか。私など、イトのノットのときや、釣った魚の撮影のときには必ず海に背中を向けるようにしているが、確かに突然波が迫ってきてもおかしくない。突風が来たら背中向けに倒れそうだ。
この頃から、岸に立つ父子は、ライフジャケットのごときを身に着けている。まだまだ安全基準にかかわる「桜マーク」も、船での着用義務もないはずだが、注意喚起はされていたらしい。今ちょっとネットで歴史を調べてみたが、1892年のイギリスの漫画にはもう救命胴衣が見られたそうだ。
今昔変わらぬ普遍のエサ釣り
このような図鑑を度重なる本の整理のたびに生き残らせ、珍重していることが物語る通り、私にとって海釣りの原点はこうした読書を含む幼少年時の体験にある。それが今でもまだ根本的には何ら変わりを見せていないことに、嬉しささえ感じる。
普遍のエサ釣り。実は先日、泉南の方でさぐりづりをしてカサゴを釣ってきたばかりだ。もう一度少年期のようにひたすら楽しく魚を見てみたい。
<井上海生/TSURINEWSライター>