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垂水区の築古「文化住宅」を地域と交流しやすい「ひとり親支援住宅」に再生へ。空き家活用企業が国のモデル事業として実施

神戸ジャーナル

垂水区の築古「文化住宅」を地域と交流しやすい「ひとり親支援住宅」に再生へ。空き家活用企業が国のモデル事業として実施

国が進める「誰もが安心して暮らせる住宅環境整備モデル事業」の一事例として、空き家活用事業を手がける企業が、神戸市垂水区にある築50年超の「文化住宅」を地域にひらいたコミュニティー住宅に再生したそうです。神戸市垂水区旭が丘1-10-73

関西に数多くある「文化住宅」の新たな活用例に

画像:人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業 公式サイトより

国土交通省は、高齢者や子育て世帯など「誰もが安心して健康に暮らせる住環境の整備モデル事業」を推進しています。

この事業では、さまざまなライフステージに応じて変化していく「居住ニーズ」に対応したモデルになる取り組みを民間から募集。

空き家事業などを展開する東京都の企業「ジェクトワン」が今回、神戸市垂水区で空き家となっていた築54年の「文化住宅」を再生し、国交省のモデル事業の一つとして採択されました。

この物件は地域にひらいたコミュニティースペースを設けたひとり親支援型住宅「For nest 旭が丘」としてオープンし、今年2月から入居を開始するそうです。

内観 (左)ビフォー(右)アフター

再生された物件はもともと、1970年に建てられた5戸の文化住宅で、所有者は家族と一緒に住みつつ物件を管理していたそうです。

しかし、うち3戸は「約15年以上」使われていない状態が続いており、加えて所有者の健康状態の悪化といった環境変化もあって、管理することが難しい状況に。

そこで所有者の家族は、コストをかけずに物件を有効活用する方法を模索し、ジェクトワンに相談。ジェクトワンは関西圏を中心に今なお数多く残る「文化住宅」の新たな活用モデルケースの一つになると考えて、今回物件の再生に取り組んだそうです。

ジェクトワンではこれまでにも、所有者と地域の双方にメリットがある「空き家活用」を推進しています。例えば神奈川県では、築66年の一戸建てを産前産後ケア施設に再生した事例などがあります。

近隣地域との交流を重視した構造、子育ての不安を解決

外観 (左)ビフォー(右)アフター

物件は山陽 垂水駅から徒歩11分ほどの、ファミリー層が多い閑静な住宅街にあります。

棟割りのアパートという構造で、一般的なアパートやマンションとはまた違った「独特の一体感」があることから、居住者が互いに助け合いながら、地域との関わりを大切にする共同住宅として活用することになったんだそう。

次に物件のコンセプトを決めるため、地域について調べたところ、垂水区は母子家庭率が「15.8%」と神戸市内で最も高く、また父子家庭率も「15.5%」と市内で2番目に高いことが判明。そこで、ひとり親世帯にとって過ごしやすい「ひとり親支援型住宅」をコンセプトにしました。

居住スペースに工夫を加えるだけでなく、入居者や地域に住む子どもたちも気軽に利用できる「コミュニティースペース」も設けて、近隣地域との関わりを大切にすることで、ひとり親が抱える「子育ての不安」を解決する住宅になっているそうです。

コミュニティースペース

ひとり親支援型住宅『For nest 旭が丘』は、地域にひらかれた「コミュニティースペース」と、下町のような独特な一体感が魅力の「文化住宅」という特性を活かし、ひとり親世帯が孤独を感じないような住環境にしているんだそう。

5世帯それぞれのプライバシーを守る「居住スペース」には、あらかじめ棚柱を設置して、住む人のライフスタイルに合わせて棚や机を取り付けられるように変更。可変性のある空間にしています。

建材は強度が高い新しい素材を使いつつ、既存の柱をあえて見せるデザインにして、新旧の素材を活かしあう設計にしたみたい。

画像:For nest 旭が丘公式サイトより

震災を経験した神戸において住宅の「築年数」は重要なポイント。今回物件の再生にあたり、2025年1月に「耐震補強工事」と「全棟改修工事」を完了させているそうです。

1階に3戸、2階に2戸の全5戸で、1部屋あたりの広さは約31~37㎡ほど。家賃は48,000~50,000円で、別途管理費が毎月8,000円となっています。

物件概要
【名称】For nest 旭が丘
【活用用途】ひとり親世帯向け共同住宅
【物件形態】木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建
【築年数】築54年
【延べ床面積】189.98㎡(1F:97.06㎡ 2F:92.92㎡)
【オープン日】2025年2月1日(土)

法改正で進む「空き家の活用」

「空き家に関する特別措置法」の一部改正が2023年12月に施行され、「空き家の活用」は不動産業界でも大きなトピックの一つになっています。

法改正により、条文はこれまでよりも倍増したほか、建物の税評価が最大で「6倍」になることもあり、今後空き家の再生や流通が進んでいくとみられています。

今回の築古文化住宅の再生事例は、ただ物件を綺麗に生まれ変わらせただけでなく、入居者と地域住民が交流しやすいつくりにしているので、空き家活用のモデルケースとして活用されそうですね。

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