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【野球ごはん⑭】食が細いことについて≪令和版≫

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【野球ごはん⑭】食が細いことについて≪令和版≫

ジュニア選手について

 小中学、高校生選手の保護者から「子供の食が細くて心配です」「チームメートより食事量が少ないと感じます。食べさせた方がいいですか?」と、相談を受けることがあります。小中学・高校生は、図1のように成長の個人差が大きいです。

 図1の「身長発育速度曲線」は、年齢と骨の発育を比較した曲線です。この体の成長と同じように消化吸収する力の成長も個人差があります。体の成長に合わせて、食事量が増えますので、その時まで「待つ」ことも大切と考えます。
 私は、外国の栄養士へ「食が細いジュニア選手は、どのような食事のとり方の工夫がありますか?」と質問したことがあります。彼女は「子供たちは、必要な量を体の感覚でわかっている。子供たちは必要であれば、その分の食事量はとるはず。子供たちをよく観察することが大切である」と言われました。もしかすると、子供たちに実際に必要な食事量と、大人が思う食事量に差があるのかも知れません。子供たちの日々の活動量、体調、身長、体重などを観察し、私たちが「子供の食事量が少ない」と思い込み過ぎていないかを考えたいです。
 以前、ある競技の小学5年生選手が、指導者から「1食あたり米3合(めし約900g・ごはん茶碗6杯分)食べるように」と指示を受け、おかずを食べられず、深夜まで時間をかけて食べていることが、新聞に掲載されていました。最近は、体づくりに食事が大切であることが浸透した半面、このような誤った情報が広がってしまっていることがあります。
 小中学生の食事量の目安は、学校給食を参考にしてください。表1は、文部科学省が設定しています「学校給食実施基準」です。

地域によっては、学校から配布される給食だよりや各市町村のホームページにエネルギー量や食品使用量が掲載されていることがあります。まずは、学校給食と同じぐらいの量が食べられているか確認してください。もし、少ない場合は、学校給食と同じくらい食べられるように少しずつ増やしていきましょう。

食事・補食の工夫

 選手の体が成長し、「もっと食べたいけれど、食べられない」と悩む場合、以下の方法が考えられます。
①補食を利用する
 図2はトレーニング後の12時間の間に同じ量のタンパク質を6時間ごとに40gを計2回摂取 (Bolus)、3時間ごとに20gを計4回摂取 (Intermediate)、1.5時間ごとにタンパク質を10gを計8回摂取(Pulse)を比較したものです。

結果は4回に分けたグループ(Intermediate)の筋タンパク質の合成速度が速くなりました。つまり、3時間ごとに補食をとることがよいということです。食が細い選手は、「食べなきゃ」と1回の食事量を増やすことを意識しますが、1回の食事量を増やすのではなく、補食を組みあわせ、回数を増やしましょう。小中学生は、休み時間に補食をとることはできませんが、帰宅時や練習前に補食をとるようにしましょう。
 練習後は補食をとり、夕食をとりたいところですが、食が細い選手は、補食をとると、夕食が取りづらくなることがあります。この場合は、補食をとらずに早く帰宅しましょう。この方が、食事をしっかりとることができます。

②体を軽く動かす
 朝食が食べづらい場合は、散歩やラジオ体操など軽く体を動かしましょう。ニュースでプロ野球選手がキャンプ中の朝食前に散歩していることがありますね。食事前に体を軽く動かして体を起こし、食事をとりやすくする工夫です。

③料理の工夫
 以前、オリンピックに帯同した栄養士から、現地で具たくさんのシチューを作られたそうです。疲れている選手にスプーン1本で食べられるように工夫した話を聞きました。シチューや鍋料理は、食材をやわらかくすることができ、消化が早い。いろいろな食材を使用すれば、多くの栄養素も補給することができますので、おすすめです。シチューや鍋にショートパスタ、刻んだうどん、すいとん、お餅を加えるとエネルギー補給量を増やすことができます。
 また、1つの皿にメインのおかずや野菜のおかずなどをのせて提供する方法もあります。選手は、「お皿1枚分でいいんだ」と、食事に対するプレッシャーが減り、食事を取りやすくなったと話を聞きました。料理を小さい皿より、大きい皿に盛りつけた方が少ない量に見えますので食べやすくなるかも知れません。
  
 選手の年齢、成長によっては、私たちが思うほどの食事量が必要ではない場合もあります。選手の体調、体の成長をよく観察し、選手と話し合い、選手がとりやすい食事方法を見つけたいです。食事面では、補食を組み合わせたり、盛り付け方を工夫したりすることで、選手の食事へのプレッシャーを軽減することができると思います。

上村香久子(うえむら・かくこ)

管理栄養士、調理師。1974年、京都府生まれ。中学生の頃にプロ野球ファンになり、スポーツ現場で働く栄養士を目指す。現在、中学・高校・大学野球をはじめ、柔道、フットサル、カーリング、サッカー、バスケットボール、バレーボール、駅伝チームなど全国各地のスポーツ選手たちへ栄養指導、レシピ提供などを行っている。2009年5月~2025年3月まで全日本柔道連盟の強化指定選手の合宿、世界選手権大会、オリンピック(ロンドン、リオデジャネイロ、東京、パリ)に帯同し、サポートを行った。神奈川工科大学 客員教授。<!-- .c-authorbox__contents -->

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