【新見市】「JTの森 鯉が窪にいみ」2024年秋 森林保全活動 〜 大自然のなかでおこなう“草刈り”は未来へつなぐ大切な作業
岡山県内には三つの一級河川が流れています。そのうちの一つが「高梁川(たかはしがわ)」です。
花見山(標高1,188m:新見市)を源流としており、新見市では高梁川の豊かな水環境を支える森林の水源涵養(すいげんかんよう)や土砂流出防止の機能をさらに発揮させるための森林整備をおこなっています。
日本たばこ産業株式会社(以後、「JT」と記載)が新見市と協働で取り組んでいる「JTの森 鯉が窪にいみ」で森林保全活動が、2024年の秋にもおこなわれました。
倉敷とことこ編集部(一般社団法人はれとこ)は、2022年と2023年にこの活動に参加しました。
そして、今回も参加する機会をいただいたので、2024年9月21日(土)に開催された「JTの森 鯉が窪にいみ 2024年秋の森林保全活動」のようすを紹介します。
「JTの森 鯉が窪にいみ」とは
たばこ、医薬、加工食品事業を中心とした事業活動をおこなっているJTグループは、葉たばこや紙、野菜など植物を中心とした自然由来の原材料を事業で利用しています。
このため、自然環境保全の一環として、森林保全活動を「JTの森」と称して進めており、2024年現在は全国9か所で活動中です。
岡山県には「JTの森 鯉が窪にいみ」があり、鯉が窪湿原(こいがくぼしつげん)を中心とした森林保全活動をおこなっています。
鯉が窪湿原
オグラセンノウなど、300種類を超える植物が自生する地域で、「鯉が窪湿性植物群落」として1980年3月6日に日本の天然記念物に指定されている。
「JTの森 鯉が窪にいみ」は、岡山県が推進する「企業との協働の森づくり事業」を活用し、2016年11月から約6年間にわたり新見市と協働で森林保全活動をおこなっています。
2016年からの1期目と、対象森林区域を変更した2022年からの2期目に分かれており、2024年秋の森林保全活動は2期目の第3回活動として実施されました。
2024年秋の森林保全活動の内容
2024年秋の森林保全活動は、「少花粉スギモデル林の下刈り」をメインに以下の流れでおこなわれました。
・開会式(主催者挨拶/記念撮影)
・森林保全活動(少花粉スギモデル林の下刈り)
・昼食
・【アクティビティ】コースター、箸作り
・【森の課外教室】講演会・津山綜合木材市場見学
1番・2番が午前、4番・5番が午後の活動です。
岡山県・広島県・島根県を中心としたJTグループの従業員、取引先の従業員、およびその家族を中心に、関係者を含めて約100名が参加し、5班に分かれて活動をおこないました。
開会式
開会式ではまず、来賓のかたから以下の順番で挨拶がありました。
・新見副市長 根石憲司(ねいし けんじ)さん
・JT岡山支社長 大塩修一(おおしお しゅういち)さん
・JTの森鯉が窪にいみ森づくり実行委員会会長 :三上雄二(みかみ ゆうじ)さん
・JTの森鯉が窪にいみ森づくり実行委員会副会長:石倉洋祐(いしくら ようすけ)さん
その後、参加団体やスタッフの紹介があり、いよいよ森林保全活動がスタートです。
森林保全活動(少花粉スギモデル林の下刈り)
開会式の会場から、徒歩5分程度の作業現場に移動します。
作業現場は周りと比べ木が生えておらず、草原のような雰囲気です。別の意味でいうならば、草がぼうぼうに生えている野原。
ちなみに昨年(2023年)の森林保全活動は「少花粉スギの植栽」で、作業現場は以下のような状態でした。
森林保全活動として、ぼうぼうに生えている草(一年草)を鎌などで刈り取る「下刈り」が今回の活動です。
少花粉スギとは
花粉をほとんど出さないスギの品種です。
もともと生育しているスギのなかから、花粉の少ないものを選び、それらを研究して、国が定めた花粉量の基準をクリアした品種を少花粉スギとして登録されたものです。
今までの花粉発生量に比べ、花粉発生量は杉の場合1%以下のものです。
◆現地で配られたリーフレットより引用(2023年版より)
最初に下刈りの方法について説明がありました。
・小さな鎌と大きな鎌があるので、大人は大きな鎌を使いましょう
・それぞれの鎌で、草をひたすら刈る
・赤い目印の下にある杉は刈らないで!
工程としてはこれだけです。しかし、「赤い目印の下にある杉」がどれなのか、パッと見では判別できません。
よ~く見ると……
▼ちなみに植栽した当時は、こんな感じ。
なぜ下刈りをおこなう?
杉は数十年(40~50年)で大きくなり木材として使えるようになります。杉が小さな時代は、周りの草との間で水や太陽を奪い合うことに。その競争を助けてあげるのが、下刈りです。この下刈りは、5年くらいおこないます。
◆現地での説明より
赤い目印を頼りに、杉の苗木を切らないよう作業開始です。
▼このように、草の根本に鎌をあてザクザクと刈っていきます。簡単そうに思えますが、地面にはさまざまな根っこが絡み合い、刈りにくい…。けっこうな重労働でした。
作業当日は曇り空でやや涼しく活動しやすいかなぁ、と思っていたのですが、気づけば汗だくになりながら、みなさんがんばっていました。
昼食
終了後は「道の駅 鯉が窪」に移動し昼食タイムです。
新見市の食材をふんだんに使ったお弁当と、お味噌汁が用意されていました。森林保全活動でお腹はペコペコなので参加者は笑顔で食事をしていました。
【アクティビティ】コースター、箸作り
昼食後に休憩を挟み、同じ場所でコースター、箸作りに挑戦です。使用するのは新見の木材。それぞれ作りたいほうに移動し、スタートです!
【森の課外教室】講演会・津山綜合木材市場見学
アクティビティが終わったあとは、バスで15分ほどの距離にある株式会社津山綜合木材市場へ移動し、現場の見学です。
おわりに
今回の保全活動は、未就学児・小学生を含む家族5人で参加しました。これまで家族がそろって自然の真っただ中に行くことはなく、大変貴重な体験です。
「少花粉スギモデル林の下刈り」という、一見するとただの草刈りと思えるような作業でも、「未来の森を作っているんだ」と思うとなんだか感慨深い気がします。
しかし、そう思っているのは大人だけかもしれません。子どもたちは「楽しかった~」「また行きたい!」と言っているだけで、ただのイベント事だと感じているようです。
でもそれくらいの気持ちでいい気がします。いずれ、この体験がとても大切だったと気づくことでしょう。
次回も機会が巡ってくれば、参加したいと思った活動でした。