3歳から幼稚園、言葉が遅い次男には早すぎる?悩みがあふれた保健センターでの相談
監修:初川久美子
臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
当初は幼稚園の年少で入園のつもりで……
次男の妊娠が分かった時、長女が7歳、長男が5歳でした。わが家の場合、長女は年少から幼稚園に入園、長男は私が働き出したため2歳で保育園に通っていたのですが、次男は保育園に入れず幼稚園の年少で入園させようと思っていました。長男の登園渋りが始まった時期で、私自身も今後の働き方についてゆっくり考えたいという気持ちや、幼稚園まで次男とたくさんの時間を過ごしたいという思いがあり、夫とも話し合って妊娠を機に仕事を辞めることにしました。
満3歳児クラスが気になり始める
それからいろんな幼稚園の未就園児対象の子育て広場によく遊びに行きながら合う幼稚園を探しました。しばらくして良いなぁと思う幼稚園が絞られてきた頃、ある幼稚園に満3歳児クラス(3歳の誕生日を迎えた翌月から入園可能なクラスでした)があり、それが少し気になり始めました。
早めに満3歳児クラスで幼稚園に慣れて翌年の4月からそのまま年少クラスに上がれる点に魅力を感じたのと、3人目なので1人目よりも私も活発に行動しておらず、やはり私と毎日いるより園に通った方がいろんな刺激があって楽しいのではないかと思ったからでした。
しかし踏みとどまる自分がいました。年少までは一緒に過ごしたい気持ちがあったのも確かですが、1番の理由は、次男の言葉の成長がゆっくりだったこと。 当時の次男は、声はたくさん発するけれど「言葉」になっているものが少なく、2語文もほぼなかったので、親だから分かるけど……ほかの人だとやりとりは難しい状況でした。同じ年齢の子やきょうだいの同じ歳の頃と比べても、かなりゆっくりであると感じていました。
満3歳児クラスに入園して、早すぎないだろうか、周りの子や先生とちゃんとやりとりできるだろうか、本人が困ってしまわないだろうか……そんなことを考えてしばらく決めきれない自分がいました。
言葉の成長がゆっくりなのが気がかりで……
そんな中、次男の3歳児健診がやってきました。1歳半健診の時に言葉については相談しており、理解力の高さがあるため3歳まで様子を見ようということになっていました。しかし3歳児健診の時も1歳半からあまり言葉の成長に伸びがなく、療育も視野にいれてまずは保健センターの個別相談をすすめてもらい後日訪れました。
相談では主に心理士さんと、今後次男の言葉の成長についてどのようにしていこうか、していきたいかという話をしました。私としては3歳まで様子を見てやはりまだ気になるようならば療育へ相談に行きたいと決めてること、通わせたい幼稚園に満3歳児クラスがあり、気になっているけれど言葉のことが心配で迷っていると伝えました。
決断したきっかけ
心理士さんと話をしている時に、私は普段感じている不安があふれ出して泣いてしまいました。ちょうどこの時期、次男への心配に加えて、長男の学校へ行きたくない問題や長男自身が不安定で私と衝突することも多く、どうしても手がかかってしまっていたため、私は毎日気持ち的に疲れていたのです。
子どもたちに余裕を持って関われないなど、全てがうまくできていない気がして自己嫌悪の日々。もっとしてあげられることがあるはずなのにできていないのではないか、だから次男は言葉が伸びないのではないか……とだいぶネガティブになっていたため、心理士さんの前で涙が止まらなくなってしまいました。
心理士さんは一通り話を聞いてくださったあとに、「さっきの入園をいつにするか迷っている話だけど……私は満3歳児クラスで入園した方がいいんじゃないかなと今の話を聞いて思うよ。言葉のことが心配だと思うけど、ちょっと1人で頑張り過ぎだから、周りの力を頼りながらやっていく方がお母さん自身も余裕が持てるようになるだろうし、その方がみんなにとっても良いのではないかなぁ」とアドバイスしてくださいました。
私はなんだか肩の力がスッと抜けたような感じになり、満3歳児クラスへの入園に迷いはなくなりました。帰りに療育のパンフレットをもらい、保健センターから定期的に経過を尋ねる電話をしていくという話でこの日は終わりました。
入園後の様子と現在
こうして満3歳児クラスに入園した次男は最初は泣いてしまうこともあったけれど、持ち前の社交性を活かしてお友だちとも楽しく遊び、本当にいろんなことを吸収して知らない間にできるようになったこともたくさんありました。言葉で伝えられないことは体を使ってうまく伝えたりすることが上手になり、大きな問題もなく過ごしていていました。私の心配は本当に不要だったなぁと今は感じています。満3歳児クラスで入園して本当に良かったです。
しかし現在年少になり、満3歳児クラスでは問題なかったことも年少だと通用しないことも増え、少し戸惑う場面もあると担任の先生から聞くように。言葉はだいぶ増えてきたのですがまだ伝えられないことも多く、聞き取るのが困難な時もあります。療育での結果や言語聴覚士さんからのアドバイスを担任の先生とシェアしながら、共に次男に合った対応を考えていただき、大変心強く感じています。そして本当に毎日次男は頑張っています。たくさんの人と関わりながら次男の言葉が伸びていくことを願って毎日親子共々楽しく過ごしていきたいと思います。
執筆/ねこじま いもみ
(監修:初川先生より)
次男くんの幼稚園入園にまつわるエピソードをありがとうございます。次男くんの言葉の成長がゆっくりな面と、長男くんの登校渋りなどきょうだいの問題との兼ね合い。自分がうまく成長促進的なことができていないから次男くんの言葉の伸びがゆっくりなのではと感じるくらいに悩まれていたのですね。ちょうど3歳児健診があり、これまでの悩みと療育等への思いを話すきっかけがあってよかったと感じます。悩んでいることを棚卸しする場があり、一緒に考えてもらい、1つの方向性が出てきたのはよかったですね。大切なお子さんのために、またお子さんとの時間が大切で愛おしいものだということも相まって、保護者の方が自分で何とかする方向に考えること、よくあると思います。もちろんそれも1つの選択ですが、今回ご相談された心理士さんが提案されたように、園の先生や園という外部環境を活用することで発達促進的な関わりが望めたり、保護者にとってのレスパイト的な意味合いも持てたりすることも1つです。今回はちょうど健診があったことが相談のきっかけになったかなと感じますが、健診時以外でも、自治体の発達支援センターや子育て支援センターなどでぜひご相談いただければと思います。そして、次男くん、楽しく幼稚園に通っているようで何よりです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。