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とても弱い魚として語られることが多い<マンボウ> 都市伝説のような噂は本当?

サカナト

マンボウ(提供:PhotoAC)

「卵を3億個も産む」「体が弱くて死んでしまう」「寄生虫が多い」など都市伝説めいた噂が多いマンボウ

なぜあのような形なのか、噂はどのくらい真実なのか。まだ謎が多いマンボウとは、どんなサカナなんでしょうか。

【画像】マンボウの腸<コワタ>はまるで焼肉のホルモン

なぜ不思議な姿なのか? マンボウの魅力

マンボウは魚の頭に2つのヒレがついたような、不思議な体をした魚です。日本や世界の幅広い海で見ることができ、とぼけたような顔と独特のフォルムで愛されています。

では、なぜこのような形に進化を遂げたのでしょうか。

マンボウの分類は、フグ目フグ亜目マンボウ科。フグの仲間と言われればたしかに顔つきが似ているような気もします。

マンボウの先祖はフグ 発達した「舵びれ」

マンボウの先祖であるフグは、水を吸い込んで体を膨らませることで、体が大きな外敵から捕食されないように進化しました。マンボウは体を膨らませる進化をしなかったかわりに、自分の体を大きく成長させることで外敵から身を守ろうとしたのです。

その進化の過程で背びれとしりびれが大きく発達したと考えられています。しかし、魚の大きな特徴である尾びれはなくなっています。なぜ尾びれがなくなったのかは解明されていませんが、代わりに「舵(かじ)びれ」と呼ばれる尾ヒレのような部分が発達しました。

背びれとしりびれの延長でできたかじびれは、文字通り方向転換をしたいときの舵として使用。泳ぎが得意ではなさそうな見た目をしていますが、時速9キロものスピードが出せます。

水族館の中でも、ジャンプしたりエサを取りに泳ぐ姿が見られたり小回りがきく動きをみせてくれたりするので、意外と不器用ではないようです。

寄生虫が多い? すぐ死んでしまう? マンボウの謎

マンボウ(提供:PhotoAC)

マンボウは水槽内のガラス面がビニールで覆われています。

インターネット上では、「寄生虫が多い」「なにかにぶつかるとすぐ死んでしまう」など弱いイメージがついているようです。

この噂、実際はどうなのでしょうか。

マンボウは皮膚が弱い?

マンボウは鱗を持たないため、皮膚が強くありません

体の大きさも相まって寄生虫の宿主になりやすく、約50種類もの寄生虫が住んでいることもあるといいます。個体差もありますが、寄生虫が多いというのは事実といえそうです。

海面をジャンプするのは寄生虫を振り落とすためという説が一般的ですが、求愛行動や捕食者から逃げているなどの説もあり、正確な理由は不明。今後、研究が進むことを期待したいですね。

冷たい海域でも元気に過ごす?

すぐ死んでしまうとイメージされる死因の多くが誇張された特徴であり、誤りのことが多いです。代表的なものをひとつあげると「水温差に驚いて死んでしまう」というものがあります。

近年、マンボウはエサが豊富な水深200メートル以上の深海に生息していることが明らかになりました。時には水面と水深800メートルの間を往復し、活発に活動することもあるといいます。

よって、温かい海面と冷たい深海の温度差に驚いて死んでしまう、というのは尾ひれのついた噂話と言えます。彼らは皮膚の分厚さを生かして、冷たい海域でも元気に過ごすことができるんですね(マンボウ、そのイメージと実像-東京ズーネット)。

マンボウは泳ぎが下手?

他にも「泳ぐのが下手で岩に激突する」や「驚いたことによる死亡」など、様々な死因があります。ですが、前述したとおり、マンボウは泳ぎが下手ではありません。

水槽で飼育する場合はスペースに限りがあるので、ビニールなどで保護をしてあげる必要がありますが、自然界で泳ぎが下手だから死ぬというケースは少ないと思われます。

「3億個の卵のうち2匹しか生き残れない」は正しくない?

もうひとつ、マンボウの弱さを語る際には「マンボウは3億個の卵を産むが、そのうち2匹しか生き残れない」といった話もよく耳にします。

「卵を3億個生む」という噂は、筆者もつい数年前までは信じていました。かつて図鑑でみた情報にも書いてあった記憶があるのですが、実はこれは正確な数字ではありません

この話は1921年にイギリスの有名な科学誌に掲載された論文に、「マンボウの卵巣内に3億個以上の小さな未成熟の卵が含まれていることを発見した」と記述があったことを皮切りに噂が広がり始めたようです。

未成熟の卵は「これから生まれる卵」として数えないため、3億個の卵とは実際に産卵された卵の数ではないのです。

「2匹のマンボウが生き残る」も研究中

また、「2匹のマンボウが生き残る」というのも研究で明らかになった正確な数字ではありません。

どのぐらいの卵を生むのか、生き残るマンボウはどのくらいなのかに関して、正確な数字は未だ研究中です。

最近の研究によると、全長2.7メートルのメスのマンボウがおよそ8000万個の卵を持っていたという報告もあるそうなので、もしかすると「3億個」という数字も大きな間違いではないのかもしれません(海遊館マンボウのヒミツ)。

マンボウに出会える水族館

マンボウ(提供:PhotoAC)

マンボウは、飼育に広い水槽スペースが必要で、飼育についてまだわからないことが多い生き物のため、展示している水族館はそれほど多くありません。

関東で代表的なのは、アクアワールド茨城県大洗水族館(茨城県東茨城郡大洗町)と鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)。関西では、海遊館(大阪府大阪市)で会うことができます。

休館して寂しくなったマンボウ?

また、今年1月には市立しものせき水族館・海響館(山口県下関市)で、少し可愛らしいニュースがありました。海響館は2024年12月1日から休館中ですが、休館の間も生き物たちの様子をホームページで公開しています。

飼育中のマンボウは休館直後に体調を崩してしまったそう。

そこで「人が来なくなって寂しいのかな?」と、飼育員さんが水槽の前に制服を展示してカムフラージュをしてみたところ、たちまち元気になったといいます。

本当に寂しかったのかどうかは分かりませんが、急な環境の変化に驚いてしまったのかもしれません(休館中のマンボウの様子)。海響館は2025年夏ごろにリニューアルオープン予定です。

ぜひ各地のマンボウに会いに行って、その不思議な姿を観察してみてください。

(サカナトライター:秋津)

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