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【連載】『魁!! 男塾』の宮下あきら先生のロングインタビュー第3弾「男塾連載スタート」編

ロケットニュース24

あなたが初めて集めた漫画は何だろう? その漫画にはやはり思い入れがあると思うが、私(サンジュン)が初めて集めた漫画は、少年ジャンプに掲載されていた『魁!! 男塾』であった。

あれから30年以上の時を経て、まさか作者の宮下あきら先生にインタビューさせていただける日が来ようとは。というわけで、宮下あきら先生のロングインタビュー第3弾「男塾連載スタート」編をご覧いただきたい。

・予期せぬ事態

1980年代~90年代にかけての「ジャンプ黄金期」の最中、6年にわたり連載されていた『魁!! 男塾』。「北斗の拳」や「ドラゴンボール」があった当時の少年ジャンプで、6年の連載を続けたという事実はそれだけで偉業だ。

さて、前回はアシスタント生活を経て、ついに「私立極道高校(しりつきわめみちこうこう)」で少年ジャンプデビューを果たすところまでをご覧いただいた。

巨匠・本宮ひろ志先生の口添えがあったとはいえ、デビューから3話連続巻頭カラーは集英社の期待の大きさが伺える。ジャンプデビュー、そして連載デビューを迎えた宮下先生はというと……。

宮下先生「集英社は新人の扱いがすごく上手だった。当時の俺は連載の経験もなかったのに、読み切りで様子を見たりせずそのまま連載させちゃう思い切りの良さというか、目利きの良さがあったんだろうね。

でも若さもあってか自信はあったんだ。自分の漫画が1番おもしろいと思ってた。当時のジャンプは子供向けというか、本宮ひろ志先生の作品を除けば漫画漫画して見えたんだよな。

俺はハコバンの時代もそうだし、他の漫画家がしてない経験をたくさんしてるって自負があった。キャバレーの時代なんて、やくざ者を見ない日は無かったんだから(笑)。そういう経験が自信というかエネルギーになったんだろうね」

その期待通り「私立極道高校」は上々のスタートを切る。少年ジャンプにゴールデンルーキーの誕生かと思われたが、結果的にそうは問屋が卸さなかったようだ。

宮下先生「私立極道高校は手応えがあった。ただ1年経たないうちに突然、打ち切りになったんだ。集英社から連絡がある前に、朝刊でそのことを知ってね。手応えがあっただけに、無念と言えばその通りだった。

ただ俺もチェックが甘かった。原稿が完全に上がり切ってないのに酒を飲みに行ったりしてね。それに俺が調子に乗っていたのは絶対にある。連載が決まると同時に見たことが無い大金をもらってさ。

簡単にいえば当時はテングだったよ。その鼻を打ち切りで叩き折られた。それでも漫画としてやっていけるんじゃないかって手応えを掴めたことは大きかったね」

私立極道高校の打ち切り …… アシスタントが無断で実名の高校や生徒の名前を掲載。教育委員会等からの抗議が相次ぎ、宮下先生は監督不行届を問われる形で連載が打ち切りとなる。

・人間関係

手応えを掴んだ矢先の連載打ち切り。ただ先生は何度も「俺が悪かった」と口にされていた。また謹慎後に連載を開始した「嗚呼!! 毘沙門高校」と「ボギー THE GREAT」もおよそ1年で打ち切りになっている。

宮下先生「その頃、俺は編集に嫌われてたんだ(笑)。俺もテングになってた時期だし、編集部内にも “あいつには描かせるな”って空気があったらしいよ。

だから毘沙門もボギーも3~4巻で終わってるんじゃないかな。まあ、それは俺の勘繰りすぎか(笑)。

ただそれも俺が悪いんだ。当時の俺は編集の人間と上手くやろうって気が全く無かったし、編集者よりも漫画のことは俺の方が絶対にわかってるってプライドもあってね。

打ち合わせも適当にだったし、言うことも聞かなかった。だから相当生意気だったと思うよ。あの頃は突っ張ってたけど、いま思えば俺が悪かったよ(笑)」

華々しく少年ジャンプ連載デビューを果たしたものの、その後の作品は残念ながら長期連載とはならなかった。だがしかし、1985年──。ジャンプ22号にてついに『魁!! 男塾』がスタートする。

宮下先生「男塾が続いた理由は、やっぱり面白かったんじゃない? いま読んでもエネルギーが相当あるよね。特にスタートしてから終盤に行く前までは、戦闘力というか、気力に満ち溢れてる気がするな。もちろん男塾も自信はあった。

当時のジャンプは『北斗の拳』や『ドラゴンボール』も連載してたから、いい刺激を受けていたのはあるんだと思う。特に原哲夫先生の画はずいぶん参考にさせてもらった。画に関しては天才だと思うよ。

ストーリー的に参考にさせてもらったのは、やっぱり本宮ひろ志先生だよね。本宮先生に関しては、ただただすごいと言うしかない。先生の男らしさが作品にもにじみ出てるよ。

あの頃、少年ジャンプは600万部近く刷ってたし、もう黄金時代になってたんじゃないかな。改めて聞くと本当にすごい先生たちが連載してるし、作品もすごいよね。そんな中で出来たことはラッキーだったと思うよ」

男塾と同じ1985年には『シティーハンター』、翌86年には『聖闘士星矢』、さらに87年には『ジョジョの奇妙な冒険』がスタートするなど、まさに黄金期を迎えつつあった少年ジャンプ。その中でも男塾は着実に人気を博していく。

──というわけで、今日はここまで。次回は男塾連載中の話を交えつつ、非常に興味深い「他の先生たちとの交流」についてお届けしたい。

参考リンク:宮下あきら公式X
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24. Ⓒ宮下あきら. Ⓒ集英社.

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