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「インクルーシブ教育」とは?【後編】障がいや人種、性別の違いを超えて学び合う教育の海外事例と特別支援教育の課題を解説

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「インクルーシブ教育」とは?【後編】障がいや人種、性別の違いを超えて学び合う教育の海外事例と特別支援教育の課題を解説

インクルーシブ教育とは、障がいや病気の有無、国籍、人種、宗教、性別などの違いを超えて、全ての子どもたちが同じ環境で学ぶ教育のことです。日本の教育現場では、インクルーシブ教育の浸透が遅れていると言われています。

この記事では、「共生社会」の実現に欠かせない「インクルーシブ教育」について以下の4点を解説します。

前編 インクルーシブ教育とは? インクルーシブ教育・特別支援教育の現状と課題 後編 インクルーシブ保育の海外事例 教育の現場で障がいと向き合う人

インクルーシブ保育の海外事例

インクルーシブ保育とは、障がいの有無に関わらず、すべての子どもが一緒に保育を受け、その環境や関わりにおいて、子どもを分け隔てなく包み込む状態での保育です。端的にいえば、インクルーシブ教育システムの理念を保育に取り入れたものを指します。

例えば、ニュージーランドでは学校だけでなく、保育施設もその認可基準として、障がいを理由に入園を断ることは認められていません。また、イタリアでも障がいがある子どものみを対象とした学校はすでに廃止されており、幼稚園から大学まで障がいの有無にかかわらず、通常の学校に就学することになっています。

インクルーシブの理念を子どもがごく幼い時の保育の時点から浸透させるメリットは、インクルーシブな環境を小さい頃から自然に体験できる点です。子どもたちは「世の中にはいろんな人たちがいて、ともに違いを認め合い、助け合わなければならない」ことを肌感覚で学び取ることができるのです。(※7、8、9)

日本のインクルーシブ教育の現状と懸念点

しかし、日本社会においてインクルーシブが浸透するにはまだまだ多くの課題があります。

まず、通常の保育施設に障がい者を受け入れる義務はありません。また、海外の保育施設のように通院する障がい者の子どもに対する手厚いサポートは望めないため、親の負担が増えています。

また、保育士側には高い専門知識が求められますし、医師や看護師など専門職との連携も欠かせません。保育サービスを提供する施設側において人手不足が深刻化する中、発生しうる危険やトラブルへの対応にも不安が残ります。結果的に、サービスの受益者として保護者を安心させるにはいまだ条件が整っていないと言わざるを得ません。

さらに、人手不足の現場では職員も余裕がないため、障がいのある子どもに対するサポートが不十分になり、目の届かないところでいじめられたり、特別扱いされることでの疎外感を感じたりする可能性もあります。(※10)

出典:
※7 インクルーシブ保育の実践における保育者の専門性の向上に関する研究
※8 ニュージーランドのインクルーシブ教育とわが国への示唆|日本総研
※9 諸外国におけるインクルーシブ教育システムの構築状況|文部科学省
※10 違いを認め合う「インクルーシブ保育」のメリット 普及への課題とサポートの現状とは

教育の現場で障がいと向き合う人

インクルーシブ教育システムや共生社会の実現を阻む障がいの一つに、誰もが持っている「人に迷惑をかけてはいけない」という価値観があります。言い換えると、共生社会の実現には障がい者が誰かに「迷惑をかける」としてもすぐに助けを求められるような環境構築が不可欠です。

教師の真壁詩織さんは、大学1年生の時にAPD(聴覚情報処理障がい)の診断を受けました。APDとは、聴力には問題がないのに、聞えてきた音声を言葉として聞き取ることが困難で、特に複数人で会話したり、相手の話すスピードが速かったり、電話越しやマスク越しだと聞こえづらくなります。

真壁さんは現在職場でも自身の障がいを公表し、周囲にサポートをお願いしたり、自分なりにやり方を工夫したりしています。真壁さんは「APDの障がいで困ることは確かにあります。でも、助けてくれる人が周りにいれば、自分がAPDだということはさほど気にならなくなるんです。だからこそ、『適切に助けを求める』ことはとても大切なのだと思います」と語ります。

まとめ

インクルーシブ教育がシステムとして機能するためには、子どもを持つ親や教育者だけでなく、社会を構成する私たちが互いの違いや背景を認めて、尊重し合える関係が重要です。そのためには、インクルーシブ教育が持つ真の意義について深く考え、議論していくことが必要になるでしょう。

執筆:河合 良成

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