施設長になるには?必要な資格、仕事内容、年収、キャリアパスを徹底解説!
介護業界の施設長とは?
介護業界の施設長とは、介護施設の運営と管理をおこなう責任者のことです。呼び方は施設によって様々ですが、いずれの場合も施設の責任者であることは変わりません。
この記事では、施設長になるために必要な資格や具体的な仕事内容、平均年収、キャリアパスなど、施設長を目指す方や施設長について知りたい方に向けて詳しく解説します。
施設長の役割
施設長の役割は、施設全体の運営と管理を統括することです。
具体的には、介護職員の指導や育成、利用者さんやそのご家族とのコミュニケーション、施設の運営計画の立案・実行などをおこないます。また、施設内における法令遵守や収支管理も重要な役割の1つです。
施設長はリーダーシップやマネジメントスキルを活かしながら、施設全体を様々な角度から支え、利用者さんに質の高い介護サービスを提供する責任を担います。
施設長としての責任
施設長はさまざまな責任を背負っていますが、その中でも特に重要なのが施設の安全とサービスの質を維持することです。介護施設においては、利用者さんのサポートや安全が最優先事項です。これらを守るためには、働く従業員のモチベーション維持が必要です。
そのため、施設長は責任者として、職員が生き生きと働き続けられる施設の運営・マネジメントをしっかり行います。また、法令遵守・衛生管理・緊急時の対応などもしっかり行うことでサービスを絶やすことなく継続的に提供することができるでしょう。
施設長になるための必要な資格
施設長になるためには、資格要件を満たす必要があります。
サービス形態によって、施設長になるための要件は異なるので、1つずつ確認していきましょう。
特別養護老人ホームの施設長になるには
特別養護老人ホームの施設長になるための要件は以下の通りです。
1.社会福祉主事の要件を満たす者
2.社会福祉事業に2年以上従事した者
3.社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者
社会福祉施設長資格認定講習会は「社会福祉法人全国社会福祉協議会 中央福祉学院」が実施する講習で、福祉の基本的な知識と管理者に必要な知識の習得をおこないます。自宅学習とスクーリング(対面)のハイブリッド形式でスクーリングでは5日間の講義と演習を受けます。
また、管理者の場合は資格要件が定められていません。介護業界において施設長と管理者の明確な定義は定められていませんが、2つの役職が共に存在する場合は一般的に施設長が管理者の上司になるといわれています。
※出典:厚生労働省施設長の資格要件等
介護老人保健施設の施設長になるには
介護老人保健施設の施設長は、介護保険法第95条で以下のように定められています。
介護老人保健施設の開設者は、都道府県知事の承認を受けた医師に当該介護老人保健施設を管理させなければならない。
※都道府県知事の承認を受け、医師以外の者に管理させることができる。
つまり、原則は医師が施設長を務める必要がありますが、都道府県知事に承認を受けた場合は医師以外のものでも施設長になることができます。
※出典:介護保険法第95条
介護医療院の施設長になるには
介護医療院の施設長は、介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準第26条で、以下のように定められています。
介護医療院の管理者は、専ら当該介護医療院の職務に従事する常勤の者でなければならない。ただし、当該介護医療院の管理上支障のない場合は、他の事業所若しくは施設等又はサテライト型特定施設(指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)第百十条第四項に規定するサテライト型特定施設をいう。)若しくはサテライト型居住施設(同令第百三十一条第四項に規定するサテライト型居住施設をいう。)の職務に従事することができるものとする。
つまり、基本的にはその介護医療院に常勤の者が施設長(管理者)になるべきであるとされています。
※出典:介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準
グループホームの施設長になるには
グループホームの施設長になるには、以下2つの条件を満たす必要があります。
・常勤、専従であって、3年以上認知症の介護の従事経験がある者
・認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した者
上記のように認知症に関する専門性が施設長になるためには必要です。
※出典:厚生労働省認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)
その他の施設で施設長になるには
その他の有料老人ホームやデイサービスなどの施設では、明確な資格要件は定められていません。そのため、先述したような資格を持っている必要はありませんが、応募要件に施設ごとに条件を定めている場合もあります。
資格や経験、スキルがあるとより選考でも有利に進むでしょう。
施設長の仕事内容
施設長としての仕事内容は多岐にわたります。また、施設によっては以下で紹介する業務以外に、介護業務に従事する場合もあります。ここでは主に、施設長特有の業務について紹介していきます。
主な業務内容は以下の通りです。
・介護職員のマネジメント
・介護業務のマネジメント
・施設の収支・運営管理
介護職員のマネジメント
介護職員のマネジメントは、施設長の重要な役割の1つです。大きな法人の場合は採用担当・育成担当などがいますが、小さい施設の場合、採用や育成も施設長が行う場合があります。
採用活動に関しては、施設のニーズに合った方を採用できるよう必要な人材像を整理しておくことも重要になるでしょう。また教育プログラムや定着施策も重要です。
初期だけでなく継続的なモチベーションの維持も大切です。日々、職員の業務を効率的に分担し、個々のパフォーマンスを引き上げるために適切なキャリアラダーや研修の実施を計画していきます。
業務を通じてのみでなく、従業員の満足度アンケートや面談などを実施し、現状を把握したり、その結果から必要があれば人員配置の転換や、施策の実行などをおこなったりし、職員が働きやすい環境づくりを行います。
介護業務のマネジメント
介護業務のマネジメントも施設長の職務です。自施設の介護サービスが介護保険制度を守れているか、利用者さんに適切な介護が行えているかなどを確認します。
また、利用者さんやそのご家族とも定期的にコミュニケーションをとり、意見がある場合は解決策を検討していくなど、利用者やご家族の満足度を高める努力も必要です。
ほかには、新しい介護技術や機器を導入し、その使用方法を職員に指導することもあるでしょう。
昨今の報酬改定の動向や地域の特徴などにも目を向け、地域社会のニーズに即した介護サービスの提供が行えるよう情報収集とサービスの施行も重要な仕事になります。
施設の収支・運営管理
施設長は、施設の収支や運営管理も行います。施設の年間予算を作成し、収支のバランスを保つための計画を立てます。例えば、経費削減のための具体的な施策を検討することもあるでしょう。
そのなかで、従業員に適切な賃金が支払うことができるか、利用者さんの数は確保できているか、職員のコンプライアンスは徹底されているかなどを確認し、定期的に研修や勉強会も行います。
施設の課題を職員全体で認識し、改善に努めることでサービスの質は向上し続けるでしょう。
施設長の1日のスケジュール
介護施設の施設長としての1日を見てみましょう。施設長は職員や利用者さんの管理だけでなく、施設の運営にも携わるため非常に多くの業務があります。
以下はあくまで一例ですが、施設長がどのような1日を送っているのかイメージをもつきっかけとしてご活用ください。
施設長は管理職であるため、夜勤は少ないですが、緊急事態には対応が求められることがあります。この変則勤務の特性も理解しておきましょう。
施設長の年収と収入アップの方法
施設長になることを検討するにあたって、施設長の給与事情も気になりますよね。施設長の年収はサービス形態や、経験年数などさまざまな事情で異なっていますが、全体の平均年収は428万円です。※
ここからはサービス形態別に平均年収を確認したあと、施設長が給与アップを目指すためにできることについても紹介していきます。
※出典:厚生労働省令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果
【サービス形態別】施設長の平均年収
ここからは、サービス形態別に施設長の平均年収を見ていきましょう。参考までに管理職でない職員の平均年収もあわせて紹介します。
参考:厚生労働省令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果をもとに作成
上記グラフから施設長(管理職)とそれ以外の職員(非管理職)では約100万円前後年収に差があることがわかります。また、非管理職の平均年収は全産業平均の平均年収460万円※を超えていませんでしたが、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院の施設長(管理職)では全産業の平均年収も越えていることがわかります。
このことから、施設長へのキャリアアップは役職のアップだけでなく、収入アップにも繋がると言えるでしょう。
※出典:国税庁令和5年分 民間給与実態統計調査
施設長が年収を上げるためのポイント4選
施設長としてさらに年収を上げるためにはどのようなことができるのでしょうか。
ここからは、施設長の給与アップについてその方法を紹介します。
1.スキルアップを図る
2.業務の効率化をおこなう
3.転職を検討する
4.評価制度を理解する
●1.スキルアップを図る
新しい資格を取得したり、専門知識を深めるための研修やセミナーに参加することで、職務に対するスキルや知識を向上させることができます。スキルを身につけると、上司に評価をしてもらえたり、転職活動の際にも自身の価値を高めることができたりするでしょう。
●2.業務の効率化をおこなう
テキスト施設の業務改善を行うことは、コスト削減やサービスの質の向上に繋がります。これらが実現できることで経営陣からの評価があがり、給与アップを目指すことができるようになります。
●3.転職を検討する
同じ施設長でもサービス形態や運営主体が異なる施設に転職をするだけで、給与アップになる場合もあります。転職活動の際に、これまでの経験や習得したスキルを伝え、施設長として何ができるのか強みをアピールしていきましょう。
また、そのアピールも含めて給与交渉に繋げられる場合もあるので、なぜその希望年収なのかなども根拠を持っておけるとよいでしょう。
●4.評価制度を理解する
自分の職場の評価制度をしっかりと理解し、その基準に沿って活動することも重要です。適切な成果を上げることで、評価の向上とともに年収アップが期待できます。
年収アップを目指したい方は、今の環境から何に挑戦ができるのか何を変えることができるのか考えてみましょう。
施設長のキャリアパスとは?
施設長としての経験を積んだ後も、さまざまなキャリアパスがあります。
ここからは、現場で培った経験を活かして進むことができるキャリアパスを紹介していきます。
スーパーバイザー
介護業界におけるスーパーバイザーは、本社などに所属をし、各施設の運営が適切であるかであったり、新規施設の開所に伴うサポート業務であったりを行う職種です。
施設長が自施設の運営について検討し、管理していたのに対し、スーパーバイザーはさらに広い視点かつ、現場の経験や第三者視点も取り込んだうえで業務を遂行する必要があるため、より責任感の強さやマネジメント能力が求められます。
エリアマネージャー
エリアマネージャーは、複数の介護施設を統括し、各施設の運営を監督したり、施設長のサポートをおこなう役割を担います。各施設長と連携し、現場の問題解決や業績向上にむけて一緒に活動をしていきます。また、基本的には近い地域で1人のエリアマネージャーが配置されているため、その地域の特性を把握し、新しい施設の開設やサービスの企画立案にも関与していきます。
エリアマネージャーもスーパーバイザー同様に、さらに広い視野と責任感やマネジメント能力が求められる職種です。
本社で管理職につく
また、本社での管理職を視野に入れるのも1つの方法です。本社での管理職役は、複数の施設を統括し、全体の運営戦略を策定する重要なポジションです。
そのため、スーパーバイザーやエリアマネージャーなどと連携しながら、より自社サービスを広く普及させていくことができるか検討を行います。現場で培った実務経験に加え、高度なマネジメント能力や経営に関する知識も活かすことができるでしょう。
施設長への転職活動を成功させるポイント
ここまで、施設長とはどのような職種なのか解説をしてきました。
そのうえで、施設長になりたいという方にむけて施設長への転職活動を成功させるポイントを紹介します。
自己分析を行う
他の転職活動でも同様ですが、自己分析をおこなうことは大切です。今までの経験や自身の強み弱みを把握することで、施設長になるために何をアピールできるのか見つけることができます。
また、今回の転職活動における軸も定めやすいでしょう。
求められる資格取得や経験を積む
先述したように、施設長になるためにはサービス形態によって必要要件があります。
それらを確認し、必要な資格の取得に努めるほか、マネジメント経験やリーダー経験、実務経験年数が別途で要件となっている施設もあるため、施設長のキャリアを検討している場合は、現在勤めている施設でも早めに相談をし、いずれかの経験を積んでおけると、選考において有利になるでしょう。
面接対策をしっかり行う
施設長としての面接は、他の職種以上に人柄やコミュニケーション能力などを確認されます。施設長は基本的に各施設1名という少ない枠です。また、施設長の人間性などによってその施設の雰囲気も大きく変わります。
そのため、施設長として譲れない軸をしっかり持ちつつ、施設運営における熱意や強みをしっかりとアピールできるよう準備しておきましょう。
施設の情報を十分に収集する
転職を希望する施設の運営方針や職場環境などを事前に調べておくことも成功のポイントです。
施設の評判やスタッフの口コミを確認し、自分に合った職場かどうかを見極めましょう。
転職エージェントや求人サイトを活用する
転職エージェントや求人サイトを利用することで、自分に合った施設を見つけやすくなり、転職活動がスムーズに行いやすくなります。特に、エージェントは面接対策や応募書類のアドバイスも行ってくれるため、積極的に活用しましょう。
施設長に向いている人の特徴
ここまで解説してきた通り、施設長は幅広い業務に携わります。
施設長に向いている人はどのような人なのでしょうか。ここからは施設長に向いている人の特徴を紹介します。
・コミュニケーション能力が高い
・リーダーシップを発揮できる
・問題解決能力が高い
・ストレス耐性がある
・経営感覚がある
コミュニケーション能力が高い
施設長は職員や利用者さん、そのご家族と日々コミュニケーションをとります。そのため、相手の立場に立って物事を考え、円滑に意思疎通を図る能力が求められます。
リーダーシップを発揮できる
施設の運営には、多くの職員をまとめるリーダーシップが必要です。目的意識を共有し、チームとして働くための指導力を持つことが求められます。
問題解決能力が高い
施設運営では小さなものもあれば大きなものも含めて問題が発生する場合があります。それらの問題を施設長として迅速に把握し、的確に対応する能力も必要です。
また、事前に問題を予測して対策を講じる予防的なアプローチも必要です。
ストレス耐性がある
施設長は多岐にわたる業務を抱えており、ストレスを抱えやすい仕事です。特に、責任感が強い人ほど、施設長であるから自分は我慢しなくてはいけないと考えてしまいストレスを抱え込みがちです。
ストレスを受け流す力や、ストレスを感じた際の息抜きや発散方法を考えておけるとよいでしょう。
経営感覚がある
施設長は、施設の収支管理や運営管理も行うため、基本的な経営知識や感覚が必要です。
予算の立案や経費削減の提案など、経営視点での判断ができるとよいでしょう。
あくまで紹介したものは一例ですが、転職活動にむけた自己分析などをおこない、一致する部分や似ている部分がないか探してみてください。
まとめ:施設長について理解しキャリアプランを立てましょう!
介護職としてのキャリアパスを考えた際に、施設長というのは1つ頭に思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。とはいえ、曖昧に施設長になれたらいいなあと思っているだけでは、目標として十分ではありません。仕事内容や給与形態、施設長のその先のキャリアパスまで幅広く把握しておくことで、将来のキャリアプランだけでなく、ライフプランなどもあわせて立てることができるでしょう。
施設長になるためには、介護の知識やスキルはもちろんのこと、マネジメントスキルや運営管理能力なども求められます。 施設長になるために必要なものをしっかり理解したうえで、キャリアプランを考えていきましょう。
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