「小豆ばっとう」は岩手県沿岸中部のお盆の行事食。夏バテ予防にもぴったり
みなさんの地域では、お盆に食べる“行事食”はありますか? 岩手県沿岸中部の山田町や宮古市では、8月7日(本来は旧暦7月7日)の七日日(なのかび)に「小豆ばっとう」を食べるという風習がありました。現在は七日日に食べる人は少なくなっているけれど、なぜか、食べたことはないのにその存在を知っている人は多いのです。イラストを拡大してみてください~。
「七日日(なのかび)」って?
8月7日(旧暦7月7日)は七日日といって、墓そうじなどをしてお盆の準備を始める日です。
※地域によっては“なぬかび”とも。
七回水浴びをして、七回小豆ばっとうを食べると無病息災⁉
—— と、おじいちゃんやおばあちゃんに聞いて育った人が多い。けど、現代の人は実際に七回も食べたことはないそう。
ただ、小豆は疲労回復を促すビタミンB1を含むので、時期的に夏バテ予防にもよいのは事実。
「ばっとう」は「ほうとう」?
ばっとう文化のあるエリアは旧南部藩であることが多く、その土地は今の山梨県南部町に住んでいた人々が切り拓いた土地。その際に、ほうとうの食文化がもたらされたそう(諸説あり)。
山梨県の赤飯と山田町や宮古市の赤飯にも、甘い金時豆入りなど、食文化の共通点あり!
形は違えど……味はおしるこ
うどんよりも、もちもちと弾力がある。形は作り手によってマチマチ。ほうとうに似て、平麺だったり四角だったり……。こしあんバージョンもあるらしい。
地元のみなさんの声をお届け!
「今も8月7日に家で食べますよ。いわれは明治生まれのじいちゃんに教わりました」(60代男性)
「うちは冷やして食べてたな~。温める派もいるけどね」(70代男性)
「おばあちゃんが作るのはカボチャも入ってました。おいしいですよ~」(30代女性)
「お祝い事や法事でも昔はよく出されてましたよ。もちろん麺も手作りです」(40代女性)
「今はスーパーにレトルトが売ってるから、食べたい時はそれを買うね~」(70代男性)
現在の小豆ばっとう事情
地元のスーパーでは、常時レトルト商品を発売中。3社くらいが作っているもよう。日もちがする缶詰も!
取材・文・イラスト・写真=松鳥むう
松鳥むう
イラストエッセイスト
離島・ゲストハウス・民俗行事・郷土ごはんを巡るコトがライフワーク。著書に『トカラ列島秘境さんぽ』『粕汁の本 はじめました』(ともに西日本出版社)、『むう風土記』(A&F)などがある。