粋な江戸の“蕎麦前”を神戸で!三宮『北野坂こばやし』で玉子焼と十割蕎麦の大人時間 神戸市
「蕎麦前」という言葉をご存知ですか。江戸時代からあるお蕎麦ですが、当時は注文が入ってから打たれるため、客は肴と一緒にお酒を飲みながら出来上がりを待っていたとか。それが粋な所作として残り、今では通好みの蕎麦文化となっています。
そんな蕎麦前を楽しめる十割そばの名店が、神戸三宮・北野坂沿いの象ビルディングにある『北野坂 こばやし』(神戸市中央区)です。
店主の小林一さんは、有馬にあったミシュラン星獲得店の「むら玄」で修業後、2015年に独立。看板にある屋号の文字や店内の絵画、メニューや箸袋などはすべてコシノヒロコさんのデザインによるものだそうです。
テーブル18席が用意された店内には至るところに生花が飾られ、和のしつらいにモダンなエッセンスが足された空間が広がります。
大人の愉悦を感じさせる場所で、まずは人気の玉子焼を注文。関東では砂糖たっぷりで焼き目のある玉子焼きが人気なのに対し、関西はお出汁たっぷりのだし巻きが主流。そこで小林さんはどちらの良さも味わえる逸品に仕上げたのだとか。
表面にはうっすら焼き目があり、ぎゅっと詰まった焼きながら食感はふんわり。じゅわっと染み出すだしの旨味にほんのり隠れた甘味が絶妙で、これはお酒がすすみそうです。
お店の一角には蕎麦打ち台もあり、その奥には石臼が見えます。小林さんは毎朝ここでそば粉を挽き、温度や湿度に気を配りながらそばを打つそうです。
その鮮度の高い本格的な味を楽しめるのが同店の魅力のひとつ。続いて、数あるメニューからシンプルな「ざるそば」をいただきます。
まず、ひと口めは塩で。風味豊かなそばの甘い香りに、十割の概念を超えるほどの麺のしなやかさに驚き。つなぎが入っていないことが信じられません。
薬味は本わさびに辛味大根、ねぎに海苔。せっかくのざるそば、海苔を手でちぎって上に散らし、そばつゆにちょっとつけてすすります。昆布を合わせたまろやかな味わいのつゆは、同店の上品で繊細な蕎麦を引き立てるのにぴったりです。
フロアを担当する奥様から、海苔に麺をのせて食べるのもおすすめだと教えてもらい挑戦。刻みやもみのりではなく板海苔で提供されているからこそ楽しめる仕掛けで、塩やわさびを付けていただくと美味!巻き寿司ならぬ“巻き蕎麦”で味変です。
「基本は江戸前蕎麦ではあるのですが、作る私自身は神戸出身。関西の食文化の良さも取り入れたい。玉子焼もしかり、かえしなども小豆島の醬油をブレンドするなど、両方のおいしいとこどりをしているんですよ」と話す小林さん。
蕎麦前を楽しめるよう全国から厳選した地酒も取り揃えているとか。次はゆっくりと江戸の粋な大人の嗜みに挑戦したいと思った筆者でした。
場所
北野坂 こばやし
(神戸市中央区中山手通1丁目22-10 象ビル1F)
営業時間
水曜~土曜日
11:30~15:00(L.O.14:30)、17:30~20:00(L.O.19:30)
日曜日、月曜日
11:30~15:00
定休日
火曜日