中西アルノ(乃木坂46)、進化した歌声を響かせる! 音楽番組『Spicy Sessions』最新収録レポート
株式会社TBSテレビが運営するCS放送『TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画』にて毎月放送中の音楽番組『Spicy Sessions』(スパイシーセッションズ)。
先月行なわれた2月、3月放送回の収録を、ゴスペラーズをデビュー当時からよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライター・伊藤亜希が取材。
収録後のMCインタビューと合わせて番組の魅力を伝える第6弾をお届けする。
音楽が生き物であることを観客の目の前で体現していく。それが『Spicy Sessions』(スパイシーセッションズ)という、これまでにないスタイルの音楽番組である。MCは黒沢薫(ゴスペラーズ)と中西アルノ(乃木坂46)。CS放送 TBSチャンネル1で放送中だ。昨年末、放送開始から1年を迎えた際、黒沢は“この番組が1年続いたことが本当に嬉しい”と話していた。生粋の音楽マニアである黒沢と同番組のプロデューサーが“本気で音楽を「魅せる」番組を作りたい”と、カレーを食べながら盛り上がったのが『Spicy Sessions』のスタートラインだそうだ。この話が現実味を帯び始めた頃、前述した2人が再びカレーを食しながら打ち合わせをしていた場所に、途中から居合わせたのが筆者である。黒沢とプロデューサーの2人は、好きな音楽ジャンル、最近鑑賞したライヴ、お互いのルーツなどを楽し気に延々と話していた。そんな中で印象に残ったのが、次の言葉である。
“バンドも音楽を一緒に作るメンバーになるように”
“収録現場で出音にこだわるのは当然。テレビで放送された時の音にもこだわりたい”
“セッションなら失敗も見せた方がリアル”
“この番組の裏テーマは中西アルノの成長ドキュメントだ”
この想いを貫き、1年が経った。収録を重ねるたびに、想いが具現化していった。アーティストの間でもこの番組の認知度が広まり、観覧の応募数もどんどん増えていった。そして迎えた2025年最初の収録は、いつものスタジオを飛び出し、J:COM浦安音楽ホールで行なわれた。
2月放送の収録。最初の挨拶で“今回(のホール)がウマくいったら、次はもっと大きい会場でできるかもしれません。みなさんにかかっております”と黒沢。中西アルノはいつものスタジオよりも広く、2階席まである客席を前に“歌をもっと遠くに届けたい”と語った。この回のゲストは佐藤竹善(SING LIKE TALKING)。佐藤がキーボードの前に座り、SING LIKE TALKINGの「Spirit Of Love」を披露。黒沢と中西はクワイア(聖歌隊)を彷彿とさせるコーラスで曲のダイナミズムを後押しする。学生時代から、SING LIKE TALKINGの大ファンだったという黒沢。グループのフロントマンである佐藤のラジオ番組を聴くのが楽しみだったと想い出話を展開。途中で中西の方に顔を向けた黒沢が“ラジオはアプリじゃなくて聴いてたんだよ”と説明すると、“え、そうなんですか!”と驚く中西。その回答に軽くのけぞるリアクションで観客を笑わせた黒沢。佐藤もその様子を見て笑っている。こんなジェネレーションギャップをネタにできるようになったのも、黒沢と中西の距離感が近づいた証拠だろう。佐藤竹善のルーツを深掘るトークの後、佐藤が毎朝歌ってから登校していたというEaglesの「Hotel California」を3人で歌唱することに。黒沢がバンドと演奏の相談をする間、隣に立ち、同様に佐藤もアドバイスをしていく。ブロックごとに分解され、バンドが軽く音を出していく時に、気がついたことがある。「Hotel California」という曲には、自分が思っていた以上に多彩なジャンルが詰め込まれていたことだ。漠然とフォークロックやカントリーロックという印象だった同曲が、じつはブルース、ソフトロック、ハードロックにも影響を受けていることがわかる。これは音楽を作り上げていく過程を目の当たりにしなければ、気がつかなかったことだと思う。曲を分解してルーツをしっかり見せる。『Spicy Sessions』の新たな姿を発見した瞬間だった。音楽に対して、観ている側、聴いている側も新しい発見がある。だから『Spicy Sessions』は“刺激的な音楽番組”なのだ。佐藤と黒沢がセッションした小田和正の「Oh! Yeah!」では、百戦錬磨のヴォーカリスト同士のアドリブ合戦にも注目いただきたい。黒沢が佐藤と一緒に歌いたい曲としてセレクトしたのは、SING LIKE TALKINGの代表曲の1つ「Rise」。ファンキーなリズムに観客も最初からクラップで楽曲を彩っていく。客席を嬉しそうに見ながら歌う佐藤。黒沢はそんな佐藤を見ながらも、歌を随所でコントロールする。最後に感想を聞かれ“久しぶりにこんなに褒めてもらって嬉しいです”と言った佐藤竹善。この言葉に、ステージ上も客席も大きな拍手で応えた。この日、中西アルノが自身の歌唱曲に選んだのは、さユりの「フラレガイガール」。歌詞に感情を込める表現に対して、これまでにないアプローチでスキルの幅を見せた。表現者・中西アルノの進化は、ぜひ、放送で確認してほしい。
3月放送のゲストで登場したのは家入レオ。『Spicy Sessions』は、当日の収録直前にサウンドチェックなどをメインとした簡単なリハーサルを行なう。スタッフやバンドメンバーに丁寧に挨拶した家入は、リハーサル中、バンドメンバーやPAスタッフに次々とリクエストを伝えていく。その様子は、そのまま家入レオというアーティストが重ねてきたライヴの歴史を思わせた。本番。毎回、ゲストを黒沢がスパイスに例えて紹介する『Spicy Sessions』。家入を例えたスパイスに、中西が“おぉ〜、わかります!”とリアクション。拍手に迎えられて登場した家入は、さっそくスパイスを交えて挨拶し、『Spicy Sessions』という空間に一瞬で溶け込む。その反射神経に、これから始まる家入レオとの“セッション”への期待が膨らむ。セッションに必要なのは、その瞬間の対応力、つまり反射神経も重要なファクターだ。先月リリースされた「雨風空虹」を披露した家入レオ。ブライトで開放感のあるメロディーを歌でパワフルに響かせるアップチューンに、観客席からはクラップが起こる。ライヴさながらの家入のアクションに、客席のボルテージも上がっていく。“生バンドがすごく楽しかった”と笑顔を見せた。家入レオの大ファンで、過去に同番組で家入の「Silly」をソロ歌唱した中西アルノ。MCでは、乃木坂46のメンバー内でも家入レオ人気が高いと触れ、その中でも自分が1番好きであるというトークを展開。前のめりでどんどん家入に質問していく、レアな中西が全開のトークもしっかりチェックしていただきたい。家入、黒沢、中西の3人で「飾りじゃないのよ涙は」を歌うことに。井上陽水が中森明菜に書き下ろした、昭和を代表するヒット曲だ。ステージに楽曲の資料が運び込まれる。家入が“ちょっと(キーを)上げてもいいですか?”と言うと“最初(の歌い出し)、ちょっと押したい(=強めに出したい)んだよね。ちょっとキーを上げようか”と家入の意をくんだ言葉を返す黒沢。ヴォーカリスト同士でなければ出てこない会話だ。歌割りを終え、サビだけハーモニーを合わせてみることに。ここで黒沢は最初、上のオクターブでハモるという果敢な挑戦を見せる。しっかり声は出ていたのだが“やっぱり上はないな”と、下オクターブでハモり、軽く歌い出す。“なんか(歌が)陽水さんっぽくなってきた”と黒沢。この後、そこにいる全員を大爆笑させる“技”を見せた。いざ、本番へ。“めっちゃ緊張します”という中西に、家入が緊張を解くために“ハグする?”と両手を広げる。中西と家入がハグ。大きな拍手が起こった。共鳴するように伸びやかな声を響かせた家入と中西。本番ではアドリブでハモりを増やした黒沢にも注目していただきたい。家入が“黒沢さんがこの曲を歌っている姿を見てみたい”と、自身と黒沢が歌う楽曲としてリクエストしたのは斉藤和義の「歌うたいのバラッド」。楽曲へのリスペクトを込め、演奏はギターのみで披露することに。2人のキーが異なるため、途中で転調をする、ギター1本でできるのかなど、音楽的な専門用語がバンバン飛び出す様子を観客は興味津々に見つめている。次の音楽が生まれる瞬間を待っているのだ。転調に次ぐ転調は、曲の途中でギターのカポをスライドさせるといけると話すギタリストの三沢崇篤。実際にカポをスライドさせた演奏に家入が興奮し、黒沢が“カッコいい!”と称賛。会場からもどよめきと大きな拍手が起こった。中西アルノが大ファンである家入レオと歌いたいと選んだ曲は、秦基博「鱗(うろこ)」。同じく中西が黒沢薫に歌ってほしい曲として選んだ曲とは。番組史上初となる黒沢薫1人でのカバーも、この日の収録の見どころである。中西が“後半の畳みかけるような……”と絶賛した、黒沢のボーカルアプローチと感情表現を楽しみに放送をお待ちいただきたい。
MCインタビュ—
収録を終えた黒沢薫と中西アルノに感想を訊いた。
——初のホールでの収録。それぞれ感想を聞かせてください。
中西:
最初にリハーサルで歌った時は、慣れないからか、自分の音程が取りづらく、探るような感じでした。不安が大きかったのですが、お客さんが入ったら全然違って。その違いを含めて、ホールに少し対応できるようになれた気がします。
黒沢:
クラシック向けのホールなので、バンドの音がちゃんと鳴るように音響のスタッフさんに調整をお願いしました。お客さんが入るといい感じでクリアになっていて、よかったですね。
——観客の反応もスタジオ収録とは違いましたか?
黒沢:
普段の収録では比較的おとなしく観覧いただいくことが多いのですが、今回は拍手や歓声も多くて。収録中、お客さんに助けられることはたくさんあるんですけど、今日はいつも以上にお客さんの歓声に乗せられて、気持ちよく歌っていたように思います。
——今回の2回の収録では、それぞれが、音楽リスナーとしてのルーツとなるアーティストがゲストで登場しました。
黒沢:
結果的に、自分たちのルーツミュージックを共有する収録になりましたね。
中西:
自分がもともと好きで、ずっと聴いているミュージシャンの方がゲストでいらっしゃるのは緊張しますね。でも、それよりも今回は楽しむことができて、自分の成長を感じることができました。
黒沢:
今回はアルノさんがより主体的に動く場面が多かったなと。
中西:
え、そうでしたか?
黒沢:
はい、とっても(笑)。
——家入さんにどんどん質問していく感じとか?
黒沢:
そこもありますが、歌でも主体的に動く瞬間があって。そういうアルノさんの主体性が『Spicy Sessions』らしさをさらに引き出したんじゃないかなと思います。放送をご覧になる方は、そこもぜひチェックしてほしいですね。
——放送2年目を迎えた『Spicy Sessions』ですが、今後、お互いに“やらせたいこと”はありますか?
中西:
“やらせたい”というとおこがましいですが、黒沢さんに、例えばMrs. GREEN APPLEや藤井風さんなど、今大活躍しているアーティストの曲を歌ってほしいです。黒沢さんの熟成された歌声とどのような化学反応が起こるのか、すごく楽しみです。
黒沢:
僕はアルノさんに、今よりもっと主体的に曲に取り組んでほしいなと思っています。今、どんどんそうなってきているので、もっとどんどん来てっていう感じというか(笑)。例えば、アレンジやハーモニーの指示ができるようになると、チーム感が増して、番組としてできることが一気に広がると思うんです。そうすると、違うステージに上がった『Spicy Sessions』をみなさんにお見せできるんじゃないかと。
中西:
アレンジやハーモニーを考えられるように……、なれるかどうかはわからないですけど、でも、『Spicy Sessions』のおかげで、自分の中でも表現の幅は広がってきていると感じるので、この番組と一緒に自分ももっと成長していけるって思っています。
『Spicy Sessions with 佐藤竹善(SING LIKE TALKING)』
放送日時:2025年2月22日(土)23:30~深夜0:30
『Spicy Sessions with 家入レオ』
放送日時:2025年3月29日(土)23:30~深夜0:30
放送チャンネル:CS放送TBSチャンネル1
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