民生委員・児童委員 大正時代からのボランティア 生活支援の「つなぎ役」
師走の午後、紙袋に入った菓子を手に高齢者宅をまわる田中昭雄さん(71)は、海老名市の「民生委員・児童委員」(以下・民生委員)を務めている。
訪れた戸建て住宅のインターホンを鳴らし、訪問を告げると、90歳を目前にする元教師の女性が玄関口に出てきた。
「風邪ひいていないですか」と田中さんが言葉をかけると、女性は「また歩けるようになったの。お会いできて嬉しいわ」と気丈に答えた。認知症が進む夫と二人で暮らすが、介護サービスを利用しながら「なんとか生活している」という。
「どうぞお元気で、来年も頑張って」。田中さんが土産のお菓子を手渡すと、訪問を受けた女性は何度も感謝の気持ちを伝えた。
この家を含め、田中さんが定期的に訪問する高齢者世帯はおよそ50世帯。受け持ちはその4〜5倍ある。
地域と関わる
大手電機メーカーに勤務し海外勤務も経験した田中さんは、58歳で地域の防犯パトロールに初めて参加した。自治会長の勧めで64歳のときに民生委員になった。現在は「海老名市民生委員児童委員協議会」の会長も務め、行政と民生委員との調整役も担っている。
8年前に委嘱を受けた田中さんは、「行政や地域の支援には意外と手厚いものもある。知らないことで不自由をしている人が少なくない。そうした方々と支援先をつなぐのが私たち民生員の役割」だと、田中さんは考えている。
厚労相が委嘱
民生委員の歴史は古く、その起源は大正時代(1917年)に遡る。当初は貧困を救済する名誉職として全国に広まったが、戦後は戦災孤児の救済、経済発展に伴い身近な相談役へとその役割が変わっていった。
このボランティアは厚生労働大臣が委嘱する非常勤の地方公務員であることも大きな特徴だ。1期3年間の任期で、3年ごとに一斉改選されているが担い手不足の課題にも直面している。
こうしたなか海老名市の協議会では、6地区と事務局(市役所)に専用のタブレット端末を導入した。「移動時間の削減や悪天候でも会議が開ける環境を整えることで若い世代にも担ってもらいたい」との思惑もある。
田中さんは、「働きながら活動する40代もいる。今後も考えれば若い世代でも民生委員が担えるようにしていかなければ」とも話している。
活動に興味がある人は地域自治体の窓口へ。海老名市福祉政策課【電話】046・235・4820、綾瀬市福祉総務課【電話】0467・70・5613。座間市地域福祉課【電話】046・252・7127。