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100年前と変わらない避難所は、変わるのか!?

TBSラジオ

能登半島の地震から一年となるのを期に、発災直後から被災者の支援を続けている、NPO法人ジャパンハートが、この一年の支援を振り返るイベントを開催しました。

道路の寸断 個人宅の避難所 どの避難所も同じようにするのは難しい状況

能登半島地震の被災地では、避難所の設備や支援物資の到着、また復興なども、地域によって差が大きい、という報道もありますが、実際の様子はどうだったのか。

国内外で医療支援を手掛ける日本発祥のNPO法人ジャパンハートの災害支援・対策セクション部長で、災害現場に入りチームを率いている、髙橋茉莉子さんにお話を伺いました。

NPO法人ジャパンハート 髙橋茉莉子さん

「例えば、輪島であれば、いわゆる朝市通りとかがある輪島市の市街地に市役所があるわけですよね。ただ、輪島市の中にも色んな地区があるわけで、本庁から目の届く範囲とそうでないところっていうのは、どうしても、今回能登の場合は物理的に交通インフラも断絶して、というのもありましたので、(避難所の)整備の差があるというよりも、遅れが生じてしまったりというのはあるのかなという風に思います。

かつ、今回の場合は避難所もかなり数も多いと言いますか、道路等の断絶に伴って私設の避難所というのも数多く、ホントにご自宅、例えば高橋さんち、みたいな個人のご自宅がある種の避難所的なものになっていたりというのもありましたので、まず全体像を把握するのも難しかったと思いますし、それらすべてに、同じタイミングで同様の支援を届けていくっていうのは非常に困難だったんじゃないかな、と思います。」

個人宅の避難所も多いとなると、くまなく配るのが難しいのは分かります。道路の寸断もありましたからね。また、せっかく仮設トイレが届いても、仮設トイレは階段を3段くらい登らないといけないので、年配の方が多いと、使いにくいということもあったとか。髙橋さんは、地域に合った避難所、物資の支援というのを考える必要を実感した、と話していらっしゃいました。

ジャパンハートでは、現在は仮設住宅での孤立などの対策として、「おしゃべり喫茶」という医療者によるサロン活動を実施して、被災者だけでなく、地域の保健師さんたちのサポートも続けています。

避難所で温かい食事を提供!避難所環境が変わる!?

そんな中、「100年前と変わらない」とも言われている現在の避難所の環境を、抜本的に改善するために、政府が「避難所運営指針」を改定する方針が示されました。

海外の避難所事情にも詳しい、新潟大学医歯学総合研究所・特任教授の榛沢和彦先生によれば、結構、具体的な数字が書いてあったので、前よりはいいかなという印象、と。

例えば、避難所での居住スペースは、条件なしで一人当たり3.5㎡になりました。(改定前は、具体的な数字はなく、コロナ禍では4㎡、5類になってからは2㎡に減る、など流動的でした。)

そして、もう一つ大きな特徴が、避難所で温かい食事を提供するための設備や機材を配備運用するという点。これについて、榛沢先生に聞いてみました。

新潟大学医歯学総合研究所 特任教授 榛沢和彦さん

「政府が温かい食事、と書いてくれたのは初めてなんですよ。今までは、とにかく何でもいいって言ったら失礼ですけど、飢え死にしないような形で配布するっていうのが、今までのスタンスでしたから。そうじゃなくて、温かい食事を出すってことをちゃんと明言したってことは非常に進んだと思うんですよ。

ただ、やり方については書いてないので、何をどういう風に持っていけばいいかっていうのは、これからなんですよ。そこのところは考えなきゃいけないし、あともう一つ、時間がないんです、時間が。三日までにとか何時間以内にってそういう言葉が一切無いんですよ。二週間も三週間も経って来てもですね、遅いんですよね。

イタリアやアメリカだと、三日以内とか二日以内、まあアメリカなんかは避難所開ける時になくちゃいけないというのはあるんですけど、原則はね。ただ、この間のハワイ(マウイ島の山火事)を見てると、原則はやはり破られちゃうことはあるとは思うんですよ。ただ、原則的には決まっているので。実際に現実的には出来ないかもしれないから書かないというのは日本では多いと思うんですよね。だから、時間のファクターが全く触れられてないっていうのがちょっと残念ですね。」

温かい食事を提供する、と明記したことは非常に良いことで、もちろん進歩ですが、まだまだ小さな一歩。食事だけでなく、様々な支援物資について時間のファクターが書かれていないんです。ここが残念だ、と。

温かい食事もトイレも、お風呂も段ボールベッドも、どのくらいのスピードで届いて、避難所が整備されるのか、は非常に重要なことです。

欧米は、原則を明記してそれに向かって努力しているけど、日本は現実的にはできなそうだと書かないことが多いんですよね、と榛沢先生。

ええぇ!?災害時に道路が寸断する、とは考えられてない!?

今回、榛沢先生にお話を伺っていて、ちょっと耳を疑った話がありました。日本の災害対策のこんな問題点です。

新潟大学医歯学総合研究所 特任教授 榛沢和彦さん

「災害の時に道路が寸断するっていうことは、これが不思議なことなんですけど、考えられてないんです。

だから、結局、普通の平時の流通業態がちゃんと保たれているっていうことを条件にした対策しか考えられてないんですよ。地震があっても台風があっても、一応何かしらで持って行けるということだけ考えられてるんですよね。だからそれが、道路がダメになって持って行けないっていうことは、あんまり考えられてません。

そうなんですよね、そこが、だから矛盾してるっていうか。

結局、日本の場合は、備蓄は流通備蓄を使うということになっているので、流通してるモノを持って行くっていう考えになっているんですよね。それが災害の時でも使えるって考えるってことは、災害時でもインフラはちゃんとあるっていうことを前提にしちゃってるんで、そこがちょっと間違ってると思います。」

災害対策なのに!?インフラがちゃんとある、ということが前提になっているんですか!?と、聞き直してしまいました!にわかには信じられないです!

せっかくの温かい食事を作る設備なども、道路が使えないからたどり着けない、材料が届かないから調理出来ない、となってしまっては意味がなくなってしまいますよね。

榛沢先生は、やはり、地域の特徴に従って、それぞれの地区地域に備蓄をすることが必要で、しかも、国が指揮を執り、都道府県や市町村が、同じマニュアルで避難所設営や運営を出来るようにしておけば、隣近所の自治体がいつでも手を貸すことが出来る、とも話していました。

現在、政府は、防災庁の2026年度中の設置に向けて動いています。ぜひ、こういった課題を活かした、しっかりと現実の災害に対応できる災害対策を作ってもらいたいですね。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)

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