手描友禅を手掛けて半世紀の作家・伊藤知子さんに聞きました【市川市】
完成まで一人の作家が全工程を担う東京手描友禅。これを生業とする市川市の伊藤知子さんの作品は、千葉県伝統的工芸品に指定されています。
手描友禅の歴史と作品ができるまで
友禅染とは、江戸時代中期の扇絵師が小袖(江戸時代の一般的な着物)に小紋模様の図案を描いたのが発祥とされる生地への染色技術。
東京(江戸)友禅は京友禅、加賀友禅と並び日本三大友禅といわれています。
伊藤さんの生業である「東京手描友禅」は、全ての工程を一人の作家の一貫作業で行う点が大きな特徴。
完成までの手順は、
(1)生地に直接下絵を描く
(2)下絵の線に沿って防染用ののりを細く引く
(3)生地の裏側に色が入るまで一筆一筆丁寧に色を刷り込む
(4)専用ののりでふたをする
(5)乾燥後、はけで地色(生地全体)を染める
(6)蒸す
(7)洗う
(8)乾燥
(9)図柄を完成させるため筆などで補正する
(10)乾燥
これほどの工程を一人で行う気力と技術力に驚かされます。
伝統を継承しつつ新作図案に挑む
日本の伝統工芸品に共通の悩みは後継者不足。
手描友禅も例外ではありません。
「自分たちができるまで続けるしかありません。若い生徒さんが来てくれると、うれし
くなる」とのこと。
手描友禅を始めてから50年、作家として独立してから40年。
伊藤さんの元には手描友禅の技術を習うため、月に3回生徒が訪れています。
伝統的な柄の花鳥風月はもちろん、新たな図案を取り入れた作品も制作。
めいの成人式では、振袖の柄としては珍しい郷土玩具の図案を取り入れた作品を制作したそうです。
日本の伝統工芸品には素晴らしいものがたくさん。
高齢化や後継者不足で技術が失われることがないように願うばかりです。(取材・執筆/平田涼)
問い合わせ
電話番号/090-7013-8780 伊藤
友禅工房・吐夢HOUSE
ホームページ/http://tom-house.jp/